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スウェーデンの王道ジャズ<Glenn Miller Cafe>スウェーデンでジャズを浴びる14

「デンマークとスウェーデンで北欧ジャズを全身で浴びる旅」をピアニストの視点からレポートする、第14回はスウェーデンの首都、ストックホルムのジャズクラブ&フレンチ Glenn Miller Cafe です。


だんだんと帰国日が近づいてきた。あと二晩だけだ。そろそろゆっくりしたいが、感傷に浸っている場合ではない。ジャズを浴びに来たのだ、出かけよう。

ホテルから徒歩圏に Glenn Miller Cafe というライブスポットを見つけた。古き良きビッグバンドサウンドをイメージしてしまう店名だが、行ってみないと分からない。フレンチレストランを兼ねている。レストランも初めてのパターンだ。

ドアを開けたらいつもの光景が広がる、デンマークとスウェーデンの満席(それ以上)伝説は今日も続くよ。席空いてるかと聞くと、バーカウンターに補助席おいて場所を作ってくれた。あまりの窮屈さにビールを頼む気にもならない。しばらくこのままでいよう。

各ステージが始まる前に、店員がワイングラスをカンカンと叩きながら前に出て、注意事項を語る。このパターンは初めてだ。静かに聞いてくれということ、各ステージ最低 50 SEK(約 650円)入れてくれということ、そしてバンドの紹介。静かにと言われても、どうしても喋ってしまうしまうのはスウェーデンの国民性か。スマホで写真をとるのも、動画をとるのも、立ち上がってバーにドリンクを買いに行くのも、普通に自由だ。

演奏の方はジャズスタンダードを中心とした、トラディショナルなアプローチ。Blues Walk、Bolivia、チュニジアの夜、などなど。

Klas Toresson sax,
Fredrik Olsson g,
Daniel Tilling p,
Lars Ekman b,
Jojo Djeridi dr

サックスは粒立ちのいい音で、小気味よくアウトしてかっこいい。ピアノも勘所を押さえて、聞かせるコツを知っている、熱いタイプ。ギターが少しタイムが甘めで、周りからのサインを外し気味。最初の1フレーズであれれ、と思ったことが最後まで当たっていた。

料理はとても美味しそうだ。ムール貝のアレンジレシピ、鶏の骨付き肉のポトフ、ステーキのトマトソース風、その他諸々が運ばれていく。全部食べてみたい!!Melleruds というスウェーデンのピルスナーは美味い。

壁のジャズ・ジャイアンツの写真が、ここが単なるフレンチレストランでないことを教える

ここまで2週間以上、ほぼ毎日ジャズを聴いてきた。耳が肥えたのか、今夜は心があまり動くことは、正直なところ、なかった。それよりも、次々とやってくるお客さん、とても楽しそうに歓声をあげて拍手を惜しまない、喋って飲んで近くの人ともすぐに仲良くなる、ライブ鑑賞がナイトライフに組み込まれているスウェーデンの人々に、ジャズが育つ土壌を再確認した。

ステージごとの投げ銭、スウェーデンの現金は持っていないので、デンマークの通貨で払っていいかときいたら全然いいと。面白い。となりの男性がビールをひっくり返して、おれのロングコートにかかったが、不思議と気にならない。

北欧のジャズ旅も終盤だ。デンマークでは感謝を込めてユニセフに募金をした、スウェーデンでは感謝を込めて路上生活者にお礼をした。凍った路面で転ばないように、ゆっくり歩いて帰ろう。




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