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意識の置き場所

 曲を作っている時も演奏をしている時もその瞬間にいろいろなことが起こる。自分の内側でも外側でも。

 そのいろいろに振り回されて、本質から大きくズレた結果になるという経験を私はたくさん積んできた。

 「今を生きる」という考え方を大切に、と思いながらも過去や未来、他人の心の中について思いを巡らし「過去を生き」「未来を生き」てしまう自分をとても残念に思い、でもそこから脱出することがなかなか出来ない自分がいた。

 音楽は、作り演奏する人に対して聴く人がいる、ということで「他人の気持ち」に思いが行きやすい。しかし「自分の今を生きる」ことが出来ない限り、オリジナルの、自分自身の音楽は永久に生み出すことはできないのだと思う。

 私は作曲や作詞、アルバム制作においてはこの10年間で「今の自分の」作品作りに集中しそれを実践してきたと思える。
 しかし演奏に関してはもう一歩というのが正直なところだ。
 演奏中に、意識が様々な要因で飛んで行ってしまうことがまだあるのだ。自分の調子やバンドでの音楽の展開、他のミュージシャンの様子や聴き手の反応など、気を散らす事柄が溢れる中で「今の自分」に集中するにはどの様な「心持ち」になったらいいのか、長年の私の課題だった。トランペットという楽器の性質、バンドでの立ち位置もその原因なのかもしれない。

 最近はそんなことを考えながら日々を過ごしていたのだか、2024年になったある朝、練習中にふと「今日は調子がすこぶる良いが、意識が自然と振動の中心である上唇のその部分に居る」ということに気が付いたのだ。
 意識の中心のポイント(唇の中心あたり)で「音」を作っていて、楽器を吹くための様々なこと(呼吸や姿勢に関係することなど)がそれに追随するといったイメージである。
 意識と振動の中心である唇を真ん中にして楽器演奏全体をイメージするのである。

 そして私はこの考え方が演奏にも通じるということに気が付いた。それは「自分の生み出すメロディー」を中心として、ハーモニーの流れやバンドで作る音楽全体を感じながら、その瞬間の音楽を構築していくということだ。自分の意識は常に今の自分の音楽の中心にあり、全体を俯瞰しながら大きく捉えながらもその意識の置き場所はブレずに進行していくといったイメージだ。

 そういった姿勢のミュージシャンたちのインタープレイの中にこそ新鮮で面白い瞬間が多く生まれるのかもしれない、と思いながら次のライブのイメージが膨らんでいく。

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