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短読14 老犬の骨の温度を確かめる生霊だらけの夜は明るい

はじめに

14首目は、中型犬さんの歌です。ご投稿ありがとうございました。直感で感じたことから歌を掘り下げました。どうぞよろしくお願いします。

老犬の骨の温度を確かめる生霊だらけの夜は明るい

中型犬

まず読んで思ったこと

 この歌を読んだときに、この犬、老犬は生きてるんだろうか?死んでるんだろうか?と思いました。これは私の勘なんですけど、直感からしゃべっていくんですけど、多分この老犬は今もうどんどん弱ってきていて、もう余命いくばくもない、もうすぐ亡くなってしまう、けど生きてる、死にかけている犬なのかなーって思いました。その骨の温度を確かめる事によって、まだ生きてはいるなーみたいな感じがあるんだけど、一方犬から目をそらしてみると周りに生霊みたいなのがいて、夜が明るく感じられている。この生霊に生命を吸い取られてる感じみたいなものを思い浮かべました。この漢字、この熟語は読み方がいくつかあるみたいで、一応2パターンで読んでみたんですけど、でもより生々しい感じ(がするの)は「いきりょう」って読んだ方がいいのかなって思いました。生霊っていうのは「生きている人間の魂が体の外に出た物」っていう風に辞書とかにはあったんですけど、体から出てなお自由に動ける魂って、かなり生命力が強い感じがするなーっても思いました。
 何でこの生霊だらけだと夜が明るいのかなってちょっと考えてたんですけど、もしかしたらこの生霊っていうのはそれ自体光ってるものなのかな。鬼火みたいに、こう光が、自分から発光するようなものなのかなって思いました。そういう風に考えると、この犬は徐々に弱っていって、生命力が低下してるんだけど、その生命力を吸い取った生霊の方が輝いてる感じ、より強さを増していく感じみたいなのが、ちょっと読み取れていくなって思っています。

さらに読む

 一応「骨の温度を確かめる」ことが死亡診断の方法なのか調べてみたのですが、該当する例は見つかりませんでした。そもそも骨って温度があるのかなと思うのですが、おそらく老犬は痩せ細っているのではないか。それゆえ身(筋肉や脂肪)よりも骨が触りやすいのではないでしょうか。だから生死の状態を連想するのだと思います。ただし触っているタイミングなどが下の句以降でもはっきり示されているわけではないので、犬の生死自体は不明だなと感じました。「生霊」という熟語の読み方もそうなんですが、この、犬がまだ生きているのか、死んでしまったのかによって、下の句の〈夜は明るい〉の明るさのニュアンスの解釈に若干の影響がありそうな気がします。余命いくばくもない老犬を目の前に、飼い主であれば気持ちの揺れ動きなんかも見えそうですが、この歌ではそういうことは明らかには書かれない。もし読み取りたければ、全体をみて推し量る必要があります。そうなると、老犬の命と生霊の明るさが対比される作りが一番の手がかりなんじゃないかなあ。
逆を言えば、歌の中に出てくる言葉や表現のニュアンスを決めてしまうのは、それ以外の表現なんだなということを思いました。(作者の意図とはまた別に)読む人にそのニュアンスの解釈を決めさせることができるのも、詩の表現の面白さだと思います。個人的には視点をずらしてハッとする感じ、気がつけば周りには生霊だらけだったという気づきを歌の人が受け取ったことに重点があるのかなと思います。
 あと、生霊ばかりだとなぜ明るいのかについて、最初は月や街灯の光が透過することで光が膨張して明るく見えている(水を入れたペットボトルの底にスマホのライトを押し当てて光を広げる感じです)、おばけが半透明に見える仕組みってもしかしたらそういうことなのか、とか考えたのですが、霊魂ってそれ自体光ってもいそうだなあと思って音声の読みにたどり着きました。

参考サイト
生霊:Wikipedia「生霊」

企画趣旨はこちらから

https://note.com/harecono/n/n744d4c605855


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