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カルスト大地にて

おいでませ。玻璃です。

私の母校、明倫小学校の5年生のビッグイベントといえば、秋吉台での合宿だ。
秋吉台は日本最大級のカルスト台地。
広大な緑の中のところどころに美しい白さを放つ石灰石は、およそ3億5千万年前に南方の海でサンゴ礁として誕生し、それから長い年月を経て現在のようなカルスト台地を形成したという。

広大なカルスト大地

秋吉台の地下には日本屈指の3つの鍾乳洞がある。
秋芳洞、景清洞、大正洞だ。
鍾乳洞とは、石灰岩台地に降った雨が割れ目や隙間から岩を溶かして流れこみ、地下で岩を溶かして流れていくにつれ空洞化していき、その空洞がどんどん大きくなったもの。

秋吉洞入り口


中は不思議な異空間


この秋吉台で私たちの合宿は始まった。
合宿施設で一泊二日だったか二泊三日だったか…記憶は曖昧だ。
部屋には二段ベッドがたくさんあり、それぞれ割り当てられる。
私たちはたくさんの二段ベッドにテンションが上がった。
二つの二段ベッドで仲良しグループが集まり、片方が客席、片方が舞台に見立て向かい合ってモノマネ大会をやった。
芸能人のモノマネでも身の回りの先生や友達のモノマネでもOK。
短いネタを順番にやる。ひとネタやるごとに

「なぁ~んちゃってモンチッチ!11歳!!」

とみんなで声を揃えて言ってから次の人に交代する。
この掛け声は私たちが作った掛け声だ。
特に意味はない。

私は金八先生の武田鉄矢や郷ひろみ、学校の先生のモノマネをした。
他にも森進一やトシちゃんなどいろんな人のモノマネが飛び出した。

だがそんな楽しい時間ばかりではない。
この合宿では過酷極まりないハイキング、オリエンテーリング、鍾乳洞探検などの身体をたくさん使う野外活動が待っていた。
鍾乳洞まで何キロあったのだろうか。皆で歩いて向かう。
その道のりは、雄大なカルスト台地を歩き、途中からはほぼ垂直の崖のようなところを登りまた歩く…厳しいものだった。

野外炊飯でカレーを作り終わった頃にはヘロヘロだった。
入浴が終わり、それぞれのベッドに横になった頃、みんな疲れていたはずなのに、合宿に来る前から聞いていたある噂のために眠れず、息を殺して起きていた。

それは、夜中に足音がするとか赤ちゃんの泣き声が聞こえるというもの。

ギギッ

確かに奇妙な音がする。

「これってあの時計の音やない?」

友人の一人が大きな古い時計を指さした。
確かに針が動くときに時々変な音がする。
私たちはホット胸を撫でおろした。

部屋の中はだんだんと静かになって、寝息もあちこちから聞こえてきた。

私とその他何人かは、暗闇の中眠れずにいた。
その時…

「おんぎゃーーーー!おんぎゃーーーー!」

遠くから聞こえるのは赤ちゃんの泣き声!?

「きゃぁーーー!!」

起きていた何人かが大きな悲鳴をあげた。
廊下を走る音がして、先生が慌てて部屋に入って来た。

「どうしたん?なんかあったん!?」

「せんせい~、赤ちゃんが!赤ちゃんが泣いとる!!」

「・・・あ~あれ?あれはヤマネコの声よぉ。」

「ヤマネコ?な~んだ~」

私たちはホッとした。確かにネコの鳴き声といえばそう聞こえる。

そして私たちは安心して眠った。

今冷静に考えると、ヤマネコってそんなにいるものだろうか?
40年前ならいたのかもしれない。
いや、いたことにしよう。

ではまたお会いしましょう。







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