その4 峠を走り込むとどうなるのか?

走り屋が集まる秘密の場所(コース)で、よなよな公道レースを繰り返していた自分。

コースは何万回も繰り返し走り込み、もう「目を閉じたままでも走れる」というくらい反復していた。だから、このコースを速く走るには、クルマをどうコントロールしたらいいかという事を突き詰めていき、クルマの限界を引き出さざるを得なかった。

高回転を維持する、ギリギリまでブレーキを我慢したい、速くアクセルを開けたい、速度を落とさずにコーナーを抜けたい、そんな教科書に書かれているような事が、実践で必要だと感じ、自然と身についていった。

高回転を維持すると、パワーが出るのはもちろん、レスポンスが良くなるのでエンジンブレーキも活かせる。アクセルを踏み直す際に回転が落ちていると加速が鈍いので離される…ということに気づき、とにかく高回転を維持しようと頑張るようになった。これはパワーが小さいクルマに乗っていたからこそ、低回転域が使い物にならなくて、パワーの大切さ、高回転域の有り難みが身に染みたというのもあるだろう。もし低回転からパワーもりもりのターボ車に乗っていたら、こんなこと気にしなかったのかも。

反復し続ける中で自然に身に付いてきた事なので、テクニックと言うと小っ恥ずかしい感じだけれど、このようにして徐々にブレーキのタイミングや、安全に曲がれる速度を覚え。次に、その覚えたタイミングでブレーキが踏めるようになり、(分かっていても出来ないものなんだこれが)覚えた速度に調節できるようになる。これをバトルに生かしていくわけだ。

実際に追いかけっこをしていると、後続の場合、先行車がブレーキを踏んでいる領域で追いつける可能性が出てくる。相手よりブレーキを我慢すれば車間を詰めることが出来る。当たり前なのだけれど、曲がりきれなかったり追突してしまったら全てパー。でもギリギリまで我慢したい…というジレンマ。少しでも追いつきたいという気持ちからブレーキのタイミングや踏み方にもシビアになっていった。

もちろんコーナー出口での加速も、相手よりコンマ1秒でも早くアクセルを開けられれば距離が縮まる。早く踏み過ぎると膨らんで曲がりきれなくなり、もう一度アクセルを抜くことになる。最悪は縁石にヒット&DEATH。この辺りで気づいたのは、アクセルを開けるのが早すぎてハンドルを切り増ししながら脱出してると、こりゃ遅いな…ということ。こういう、こうしたら少し早い遅いというのは、同じ相手と何度も対戦してると分かってくる。このコーナーの出口でいつも離されていたけど、走りを変えたら離されなくなったぞ…みたいな変化があるから。これが、一人で淡々と走っていたり、サーキットで1周ごとのタイムしか出なかったら、アレが良かったのか、コレが良かったのか?判明するまで何倍もの時間がかかっていただろう。

こうして、加速、ブレーキング、ターンイン、そして加速…と繰り返すうちにクルマの限界かな…という天井にぶち当たる。もうこれ以上、詰めるところがない。なのにアイツに追いつけない…。

なぜだ…それはクルマが遅いからだという事実に気づき始める。

そこで、人間のテクニック向上ではなく、クルマ自体を速くするという方向へと舵が切られるのだ。

つづく



かつて自分の血を沸騰させたスポーツカーと界隈の人間。その思い出を共有していただきたい、知らない方に伝えたいと、頑張って書いております。ご支援いただければ幸いです。