陥没
二十年前、ある地域一帯が陥没した。
あまりに深く落ちたので、
誰も探しにいけなかった。
地域住民は誰も帰ってこない。
僕らは毎年、黙祷を続けている。
研究のために僕はその地域に向かう。
一歩足を踏み入れた。
地面が陥没した。
僕は暗闇へ真っ逆さま。
目が覚める。
――いらっしゃい。
そう言ってたくさんの人に歓迎された。
陥没したその地域は、
今もそのままの姿で地底に残っていたのだ。
地上に登る術のない僕はそこに暮らすことになる。
あまりにも快適なその生活。
実る果実に清い川。
もしかすると僕は死んだのかもしれない。
そう思った。
ここは地底というより、あまりに天国に似た世界だった。
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