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不意

 不意に訪れる、不意な出来事。
 
 そこに意味などない。
 不意に立ち止まるのも、不意に振り返るのも、
 
 不意に訪れた、不意な不幸。
 
 重い足取り。
 影には引きずる黒い影。
 
 公園の前を通る。
 
 不意に過ったいつもの黒猫。
 それすら運が悪い気がしてげんなりとした。
 
 黒猫が不意に立ち止まった。
 不意に僕を振り返った。
 
 そして、歩き始めたと思ったら、また止まって振り返る。
 
 ついてこいと言っているように思えて、
 馬鹿らしくも僕はそれに従う。
 
 階段を、登って登って、息が切れる。
 
 黒猫が止まった。
 僕は呆然とする。
 
 そこには見事な星空が広がっていた。
 
 黒猫がにゃあと鳴いて僕に寄り添った。
 強張ったままだった口元が緩む。
 
 不意に振り返ると、足元の黒い影はもう見当たらなかった。

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