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名簿

 名簿順に名前を呼ぶ。
 
 出席者は皆元気。
 快活な返事が返ってくる。
 
 名簿の最後の行を読み終えた。
 一人が手を上げる。
 
 ――呼ばれていません。
 
 そう言った彼の名前を問う。
 彼は答えた。
 
 なのに、聞き取れない。
 何を言っているか分からない。
 
 焦りが生まれ、頭が真っ白になる。
 
 名簿に目を移す。
 僕は悲鳴を上げた。
 
 名簿の文字が溶けだし、一つの黒い塊となって僕の足元に落ちる。
 ぼとり、と落ちたそれは名の分からない彼の方へ。
 
 彼はそれを掌で掬うと、恍惚とした表情で啜った。
 
 ――ごちそうさまでした。
 
 彼が去っていく。
 参加者は皆消えてしまった。
 
 僕が消えなかった理由はただ一つ。
 
 名簿に名前がなかったからだ。
 
 僕はその場に膝をつき、安堵の涙を流した。

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