張りぼて
張りぼての街があった。
虚栄心に溢れた住民は、
見掛け倒しの素晴らしい街を作った。
それは観光客を喜ばせ、
外部の人間から称賛を浴びる。
金が集まった。
張りぼてはやがて、本物の素晴らしい街になる。
誰もがその街が張りぼてだったことを忘れた頃、
大きな、大きな、嵐が来た。
街の旧市街地はきれいさっぱり消えてしまった。
そこはまだ張りぼてだったからだ。
更地になった土地を見て、住民たちは唖然とする。
そして、声を上げた。
――まだ、こんなに素晴らしい土地が残っていたのか!
そこに建築するのは張りぼての城。
張りぼて師の僕は誠意を込めて、その城を作り出す。
もう、この街に金はない。
それを認めず、表だけ繕う住人共。
やはり、この街には張りぼてがお似合いなのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?