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【患者さまの声】薬は私の「安定剤」認めたくない自分に向き合うこととは

今回お話をうかがったのは、「統合失調症」「ADHD」とともに生きる中田あかね(仮)さん。
埼玉県に住む、20代の女性です。

学生時代から症状がみられはじめ、一時期は入院していたこともあるといいます。

症状を自覚しながらも疾患を受け入れることは難しいというあかねさん。
診断されてからの治療や心の葛藤、現在のお仕事や生きがいなど、ご自身の過去や現在までを「同じ境遇の方の勇気につながれば」という想いを言葉にのせ、丁寧にお話しくださいました。


◆「本当に自分のことなのか」診断を受け入れられなかった

―――現在の疾患について聞かせていただけますか?

統合失調症と初めて診断されたのは、高校3年生の時でした。
きっかけは高校生活と生活環境によるものだったと思います。

もともと中学生の頃まで埼玉県に住んでいましたが、高校時代は岩手県にいました。
高校入学と同時に岩手県に引っ越して、最初は新しい環境に希望も感じていたんです。しかし、岩手県には中学の頃の友人も知り合いもおらず、住む場所も学校も何もかも変化して、その変化に気持ちが追いつかなかった。
自然がたくさんあって環境としてはとても良いところだと思う一方で、私には埼玉県の方が合っているのかもしれない、と思うようになりました。自分で考えていた以上に環境の変化が影響していたのだと思います。

原因ははっきりとわかりませんが、いろいろ重なったタイミングで統合失調症と診断されました。
3ヶ月に1回の通院をしていましたが、あまりにも症状が酷い時は入院していたこともあります。

―――どのような症状があったのですか?

統合失調症による幻覚や幻聴ですね。
マンションの上の階から足音や何かの音が聞こえてきたりするんです。実際は音などしていないのに私には聞こえていて。聞こえないはずのものが聞こえている、無いはずのものが見えている、というのは結構つらいですよ。それが酷くなって入院したこともありますし、夏の暑さに体が対応できなくて入院したこともあります。

あと、22歳の時にADHDという診断もされました。
集中力や落ち着きがなく不注意、という症状だといわれましたが、自分としてはあまり納得できませんでした。自分の中でADHDという疾患に対する概念が偏っていたのかも知れませんが「本当に私がADHD?」という感覚しかなかったです。受け入れられなかったというか、信じたくなかったというほうが近いかも知れません。

4年ほど岩手県にいましたが、結局、元々馴染みのある埼玉県に戻ってくることになりました。


◆精神疾患と仕事。働く中で見つけた「楽しみ」と「やりがい」

―――精神疾患を指摘されてから現在までの生活について教えてください

埼玉県に戻ってきてからも、症状は続いていました。
ただ、どんな症状があっても、どんな状況でも「生活しなければならない」とは思っていました。それでも仕事につけるかどうかは正直不安でしたね。

そんな中、ありがたいことに周囲の人に恵まれて農園で働くことができました。
今でもその仕事は続いています。現在は野菜を栽培しているんですが、ゆったりとした職場で、仕事内容も自分に合っていると思います。仕事そのものも楽しいですし、野菜の成長や収穫、一緒に働いている人とのコミュニケーションなどにも喜びを感じられます。

今の生きがいは、仕事ができていることや仕事をしながら毎日過ごせること、その状況に自分自身が満足できていることです。チームの一人としてだれかと一緒に仕事ができることも生きがいにも繋がっていますね。

◆自覚と受容。病気と向き合うということ

過去には疾患について認めたくない時期もありましたが、今は「病気と向き合うのはとても大事なことだ」と思っています。ただ「自分は疾患をもっているんだ」と自覚することや認めることはエネルギーの要ることです。

自分の気持ちでは「疾患を認めなければいけない」と思っていますし、頭では理解しているんですよ。まだ自分の中でで受け入れられているかはわかりませんが、少しずつ「疾患を持つ自分」を否定しなくなっているのは感じますね。

◆生活を保つための「薬」好きじゃないけど必要

―――お薬について教えてください

今は精神科の処方薬を4種類飲んでいます。
薬の管理は、90日分処方される薬を一週間ずつセットできるピルケースに毎週移し替えています。

移し替える手間はありますが、この方法にしてから飲み忘れはほとんどありません。

薬に対する認識は「身近にあるものでいちばん大事なもの」です。

私を含めてお薬そのものを好きだという人はいないと思うんです。
なぜ飲まないといけないんだろう、薬を飲んでいるところを人に見られたくない、というくらいネガティブなものではないでしょうか。しかし、薬があることで症状が落ち着いたり、日常生活が普段通り行えるのだから、「飲まない」という選択肢はないんです。

私にとって薬は、心だけじゃなく体も健康に保つために必要な安定剤の役割もあるので、できるだけ服用することがストレスにならないように工夫しています。人目に触れない寝る前の時間帯に飲む、などですね。

また、ちゃんと薬を飲み続ける、ということも疾患と向き合うことの一つだと思います。
疾患と共に生きる人生を「自分のものにする」ための一部ですよね。
ちゃんと薬を飲むことで完璧ではないにしろ、疾患がある、障がいがある、ということを少しずつ理解できるようにはなっていますし、周りの人にも認めてもらえる自分になろう、とも思っています。

―――お薬手帳は使っていますか

薬局でもらうお薬手帳は使ったことがありません。
紙のファイルを使って自作していますが、薬の量が多いので結構かさばるんですよね。

薬を管理できるアプリがあることは、「harmoおくすり手帳」の存在で初めて知りました。
スマホという自分の身近にあるものでコンパクトに管理ができると、万が一、出先で具合が悪くなってしまった時にも持ち歩いているので、とても良いと思います。私が作っている薬ファイルは、大きいし重くなってきているので、持ち歩くことはできません。私のように薬の量が多い人には、スマホで管理することは大事ですね。

◆健康でいることが「生きること」の基本

―――あかねさんにとっての「生きること」とは

私にとって「生きること」の基本は、健康でいることです。
健康でさえいれば仕事もできるし、仕事ができればお金もいただけて、自分の好きなこともできる。自分のやりたいことができるための基本が「健康でいること」で、それが「生きる」「生きていく」ということに繋がっていきます。

今の生活からは薬も病気も切り離すことはできませんが、好きな音楽を聴いたり仕事で役に立てることも健康があってこそ。それを守るためには今後も薬とも疾患ともちゃんと向き合うことは大事なことだと思っています。


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