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インタビューの“準備8割”は「これ」を探すためにある

先日、ある女性経営者のインタビューを担当させていただいた。若くして事業を立ち上げ、今も現役で活躍される方。お話を聞かせてもらうこと自体、なんとも光栄な機会。だからこそ、取材前の私はそれはそれはもうとてつもなく緊張してしまっていた。

キャリアも生き方そのものも、自分自身とは違いが大きく、

な、なにを聞けばいいのだろう。

そう思ってしまったのだった。

テーマとターゲットは決まっている。ならば問いもそれに沿って考えればいい。ただ、著名な方だからこそ、ある程度の質問はかつて別のインタビューで誰かがすでに聞いていることが多かった。

どうしよ、私ここから、何をどう聞けばいいだろう。

情けないかな、途方にくれそうになってしまったのだった。

インタビュー準備8割

昨年、Marbleスクール2期生として「書く+α」のスキルを学んだ私。講義では取材のいろはを学ぶ時間が多くあり、そこで「インタビューは準備8割」と学んだ。

インタビューの前の事前準備がそのインタビューの成否を決める。だからこそ、インタビュアーは取材日を迎える前に、とにかく取材対象者さんのことを調べまくる。時間がある限り。これはライターの諸先輩方いずれも、口をそろえて仰ることだ。だから私自身まずは、使える限りの時間を使って、対象者の方の過去をさかのぼった。

YouTubeやnoteは過去数年分、見た(読んだ)し書籍は何度か通読した。加えてXの通知はオンにして、その人が投稿するたびにチェックができるようにした。本筋とは外れるけれど、その人の趣味に関する知識も拾ってみたし、業界の関連書籍も読んで。

不安が大きかった、と思う。加えて、失敗したくないと考えていた。失敗がいったい何を意味するのかも、実はよく見えていなかったのだけれど。

これまでも何度かインタビューをしたことはあるけれど、まだまだ駆け出しでとにかく自分が自分に自信を持てないでいた。

「今まで聞かれていないことを聞き出さなきゃ」
「インタビュイーの方にも、実りある時間だったと思ってもらいたい」

そんなことを考えれば考えるほどインタビューの構成がぐちゃぐちゃとなっていった。

インタビューは誰のため

このとき、きっと私は視点を自分に向けてしまっていたのだろうな。インタビューは三方よし。これもMarbleで学んだこと。三方良し、とは、すなわち

掲載媒体 読者 インタビュイー

三者にとって有意義なものを目指すという考え方だ。そこに「失敗したくない 」とかいう、インタビュアー側の見栄はおそらく含まれてはいない。

にも関わらず、取材に対して意気込みが過ぎるあまり、なんだか余計なことを考えすぎていて、インタビューの軸がぶれにブレていた。

あぁほんとうに、どこまで自己愛が強いんだか。

もういちど、もういちど気持ちをたてなおし、取材対象者の方の発言や過去のインタビューもろもろを見直してみた。

すると、自分からは遠い存在と思っていた人の言葉の中に「あぁそれ、わかる」と思える箇所がいくつか見つかった。そしてそれを発見した瞬間「私、インタビューできるかも」と思えたのだった。

あなたと私の重なりを起点にする

その人と私との「重なり」をみつけるのが、もしかしたらインタビューの事前準備の意味なのかもしれない。といま、感じている。

ここでふと私が思いだしたのは、古賀史健氏の『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』の中で取材について書かれた一説だった。古賀さんも取材前には取材対象となる方について入念に下調べをする、と書かれてあった。重ねてこうも述べられている。

「この一点に関しては、尊敬できる。」あるいは「この考えに関しては、心底共感できる。」そういう一点は、ぜったいにある。もしも見つけられないとすれば、それは探す側―つまりは取材者側―の怠慢だ。
そしてひとつでもいいから「いいところ」を見つけたら、その「いいところ」を自分のなかで思いっきり膨らませ、「好き」を育てていく。対面する前からもう、大好きになっておく。そうすれば自然と「聴く」態勢がつくられていくはずだ。

そうか、そういうことなのかもしれないな。私が今回、取材対象者さんとの間に見出すことができた「重なり」も、古賀さんがいうところの「好きだと思える部分」と共通するのかもしれない。

知識として知っていたことが、実践を通して少しずつ腹落ちしていった。

重なりを起点とし、そこから想像力も駆使しつつ、私が素直に感じたこと、例えば「これってどういうことだったのだろう」「この事業を通してこの方は何を達成したいのだろう」そういった問いを、当日聞く予定の質問表に組み込んでいった。

インタビュイーは、自分とその人との重なりを出発点として、聞くべきことを選んでいけばいいのかもしれない。

そして「重なり」というものは、きっと聞き手によってそれぞれで違うし、その違いが「切り口の違い」となってインタビューに現れるのかもしれないと思う。

だから、あんまり難しく考えず、「聞きたい」と思うことを、素直に聞けばいいのかもな、なんて簡単に考えているところです。

さて、迎えたインタビュー当日。課題はいくつもありながら、それでも予定していた質問はきちんと聞けて(同席くださった編集者さんのおかげ)ひとまずは無事に終えられた。

もはや別世界に生きる人ではなく、インタビュイーの方に自分との重なりを感じていた私は、目の前に座るその人と「会話」が出来ていたような気がする。「やっぱそうですよねー!!!」と全力で共感することもできたし、逆に「アレ?」と思うことは聞き直すこともできた。

そう、嬉しかったことは、私自身がそのインタビューを楽しいと思えたこと。そして何より、最後にインタビュイーの方からいただいたこの言葉。

「いろいろ、事前に調べてくださっていてありがとう。」

あなたの言葉を聞きたいですと思いながらお話をうかがえたことも、「インタビューするうえで大切なこと」を、大切にできたという実感につながった。

さぁあとは、原稿にまとめるのみ。聞かせていただいてありがとうの思いを込めながら、文字に落とし込んでいきましょう。

インタビューすんごい難しい!
けれど、とっても楽しい!!!


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