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お醤油をなめたら、AIと人間の違いがわかったよ

「私、書いたなぁ。」と感じていた。原稿を書き終えたあと、ホッとする気持ちとともに、机に残っていたのはPC、メモ書き、参考書籍。そして、お醤油の瓶だった。

2023年の末、ひとつの原稿に向き合っていた私。テーマは「お醤油」。関東にある、とある醤油蔵元さんを紹介する記事。創業100年を超える老舗だ。私自身そちらの商品を愛用していて、記事テーマをいただいた時には「ぜひに!ぜひに書かせてください!」と心躍った。

思い入れもあったので、真剣に取り組んだ。取材はできなかったけれど、周辺知識に関する文献にあたれるだけあたり、その蔵元さんの商品のうち、試したことのないものを購入して使ってみたりもした。

「この素敵な商品、企業さんの魅力を余すことなく伝えるぞ」

そう思って。

ただ、構成を考え、記事を執筆を進めるにつれてモヤモヤとした思いも湧き上がってきた。モヤモヤを言語化するなら、これだ。
「私だからこそ書ける原稿って何だろう?」


私が書く意味

「私だからこそ」?「私の」?自意識が過ぎるかな…とも思う。
Webライティングの実績を数えても、両手にあまるほどしかない私が。しのごの言わずまずは目の前の仕事に集中し、求められる水準のものを提示する。

それ以外のことはもっともっと実力を付けてから考えればいいのに…。文献にあたれるだけあたり…と書いた。これだってもちろん「私が」したことなのかもしれない。

けれど、きっとこれって別に、私ではなくてもできる方はもっといる。きっと、もっと上手にされる方はいる。たくさん。

「今、目の前にある原稿に、私だからこそ書き得るものがあるのだろうか。」なんてことを、考えてしまっていた。

思考のぐるぐるに陥りそうになったお醤油の記事。ただ、先述の問いに対するヒントを与えてくれたのものまた、お醤油だった。

「私が書けること」に対するヒントを得たのは、原稿をおおよそ書き上げ、記事に載せる写真を家で撮っていたとき。

お醤油の味が教えてくれたもの

その時の私は、あぁでもない、こうでもないと構図を考えて、時に日陰で、時にベランダに出て醤油と瓶の置き方を考えあぐねていた。悩みながらもその時、日に照らされたお醤油の色がとても美しくて、思わずべろりと指に乗せてなめたのだった。

昼食前ということもあり空腹の私にはそれがもうおいしくて。口いっぱいに広がる塩味と旨味。「あぁやっぱりここのお醤油は違うなぁ。」改めてそんなことを思いながら気づく。

あぁそうか、そうだよ!この「おいしいなぁ。」っていう想いを乗せて、書けばいいんやん。この時の醤油の味、舌の感覚、色合い。口にした時に一番最初に思い浮かんだ言葉を、そのまま原稿に書けばいい。それがきっと「私が書く意味」なんではないかと。

私の身体を通った言葉

体験に根付く言葉。つまり私が探していた「私だからこそ書ける原稿」とか「私が書く意味」はこういうことなのではないか、と今思っている。借り物の言葉ではなく、私の身体や感覚を使って経験したことがらをもって、言葉を紡ぐ。

「この文章は、他でもない私自身が、本当に心からそのように感じて書いたんです。」と言えるものを書く。

「私だからこそ書ける記事」には、言葉に対する”責任”のようなものを持てたときに巡り合えるのかもしれない。

その気づきから、初稿完成までは早かった!写真を撮りながらなめた醤油の味を忘れないうちに、少し納得感のなかった部分の表現を見直し書き上げることができた。そして

「私、書けたなぁ。」なんてことを思えたのだった。

醤油をなめてわかった人間の私ができること

AIが台頭している(突然)。むろん、私もとってもお世話になっている。構成案のたたき台を出してもらい、長い文章を短めにリライトしてもらったり。

AIさんはほんとうにすごくて、美しく整った文章をお任せしたら(こちらが適切なリコメンドを入れさえすれば)ものの数秒で書き上げてくれる。

そう、美文名文はもうAIさんに任せるしかない。でもきっと、彼ら(人じゃないけど)にはぜったいできなくて、私たち人間にしかできないことがあって、それがさきほどの醤油を味わったうえで、原稿を書けるということなんじゃないかと思うのだ。

自らの実感を伴って、言葉を選べるのはきっと人間の作業。もしかしたらこの分野ですらも、AIが学習できる日がくるのかもしれなけれど、少なくとも今は「体験」「経験」できる生身の私たちの担当領域な気がしている。

だからね、私はこれからも、たくさん聴いて、見て、笑って、感じて、そうして自分の全身を通して文章を書いていこうと思っている。

感じたものを、うまく言葉に乗せることができたなら、それがきっと「私にしか書けないもの」になると思うから。

さて、自分としては「書けたぞ!」と思えた記事・自己評価は置いておいて、実際のところどの程度のものに仕上がったか…クライアントさんの評価がまだなので実はわかりません。初稿戻り次第、追記しますww


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