【ネタバレなし】映画って本当にいいものですね⑥:リトル・ダンサー(2000年)

急激に社会変革が進む今だからこそ見てほしい映画NO.1


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技術革新による社会変革、人々の生活の強制的な変化・歪み、そして家族への愛

テクノロジーにより社会が激変する際に必ず生じる「変わらなければならない人たち」。多くの場合、それは「これまでの仕事を辞める、生活を変える」ことであり、失業を伴う抵抗運動を産んだり、先に受容したものとの間の社会的な分断を産む。

塩野七生曰く、「失業とはその人から生活の手段を奪うに留まらず、自尊心を保持する手段までも奪うこと」である。

1970〜80年代、石油というエネルギー革命により世界中の炭鉱か閉鎖に向かった。それとともに炭鉱労働者たちは失職し、彼らが住む街も、そこで営まれていた生活も強制的に幕を閉じることになった・・・

イギリス北部の炭鉱町、炭鉱労働者の父と子の物語

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舞台は1984年のイギリス北部の炭鉱町。主人公は11歳の少年ビリー。彼は炭鉱労働者で昔ながらの無口で厳格な父と、父とともに炭鉱で働く兄、そして祖母とともに暮らしていた(母は幼いころに死別)。
当時のイギリスは様々な場所にある炭鉱が閉鎖されていく時期にあった。それはビリーの住む炭鉱町も例外ではなく、父と兄は激しい炭鉱ストライキにリーダーとして参加している。

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父の好きなボクシングを習わされていたビリーは優しい性格から中々それに馴染むことができない。そんな折、ボクシングジムの隅で開催されていたバレエ教室を目にするビリー。ビリーは、バレエに魅せられ、そしてコーチから才能を見出される。

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だが、ある日ついにそれが父と兄の知るところになってしまう。激怒する父と兄。バレエへの情熱を諦めきれないビリー。ストライキにより困窮していく家庭。そしてストライキへ参加をめぐり分断されている炭鉱町。ビリーのバレエへの情熱は、果たして家族を、街を、どのような結末に導くのだろうか・・・

※当時、少なくとも昔ながらのイギリスの田舎ではバレエは「女性がやるもの」と思われていたようで、その意味で今で言うジェンダー的な視点も。あるのかもしれません。

裏の主人公は父親

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同様の時代背景を描いた映画には『遠い空の向こうに』(アメリカの話)がありますが、いずれも裏の主人公は父親です。変わりゆく社会に、時代に抗う父変わらなければならないと理性では分かっていながらも、感情的に変わることができない。変わることへの恐怖。そして、家族への愛。『フルモンティ(鉄鋼業の話ですが)』では父親が主人公が描かれています。

今まさに見て欲しい映画NO.1(繰り返し言います!)

今まさに訪れている急激な社会変革期。様々な業種で興亡が起きており、そこには強制的に生活の変化を余儀なくされる無数の人々がいます。そんな中でも変わることのない家族への愛。こんな時代だからこそ観てほしい、まさにそんな映画です。




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