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医学生が小学生にしてくれた授業が素晴らしかったです

少し前、息子のクラスでメディカルスクールの学生たちが話をしてくれるという特別授業がありました。
これが素晴らしかったです。
ちょっとだけ覗こうと思っていたのに、ついつい全部一緒に参加してしまいました。

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プレゼン能力

授業はZoomを通して行われました。
医学生たちも子供たちも、それぞれ自宅(と思われるところ)からつなぎます。
学生は2人くらいのチームになり、子供たちは5人くらいのグループに分かれて、ブレイクアウトルームが次々変わっていく形で進んでいきます。
数分でテーマが変わるというのも飽きさせないし、それぞれのプレゼンがまた素晴らしく、学生たちの能力の高さにとても感心しました。

例えば、胃が食べ物を消化する仕組みについての説明では、あらかじめ子供たちに配られていたジップロックの袋にクラッカーを入れ、炭酸水を流し込んで揉んでみます。
あっという間にクラッカーがふにゃふにゃになるのを目の当たりにして、胃酸の働きを知るのです。

ウイルスやバイ菌の説明もさすがでした。
写真にあるカラフルなボールは糸を撚り合わせてできていて、とても軽いのです。これを両掌に乗せて「くしゃみするみたいに息を吹きかけてみて」と。バシャーっとあちこち飛び散って、「こうやって体の中のウイルスが撒き散らされるのだよ。だから肘の中に咳やくしゃみをすること、マスクをすることはとても大切なことなんだ」と。
また、手に薄く油をつけて、グリッターというキラキラした粉を塗ってそれをバイ菌に見立てます。「まずお水で手を洗ってきて」と言われて洗っても、キラキラはくっついたまま流れません。「じゃあ石鹸で洗ってきて」と言われたら、今度は落ちました。「だから石鹸で手を洗うのはとても大切なことなんだ」と。
とてもわかりやすい!

他にも、普段飲んでいる飲み物にどれだけ糖分が含まれているかとか、聴診器を胸や手首に当てて脈の音を聞き血液の役割を説明するとか、具体的なアクティビティを交えての説明は、スライドのわかりやすさも加わって、子供たちにもとても理解しやすく楽しくて印象的だっただろうと思います。
興味津々で次々飛んでくる子供たちからの質問にも、彼らは的確に答えていました。

やたらと専門用語を使って説明したがる人ってたくさんいます。でもそれって独りよがりに過ぎず、素人にはちんぷんかんぷんなだけでちっとも伝わっていませんよね。
相手のレベルに合わせて、相手にわかる言葉、普段から親しんでいるものを例にあげて説明するなど、相手の立場に立ったアプローチはとても大切です。
でも、それって実はそんなに簡単なことではないと思うのです。きちんと理解していることは大前提で、その上頭の中がきれいに整理されている必要があります。そして相手に対する理解力も必要なのです。

ただでさえ、小学生相手に未知のことを教えるのはなかなか大変なことだと思います。 それをZoom越しにやってくれての大成功です。
小学生相手のZoom授業は難しい。本物の先生でも、子供たちが明らかに飽きてしまって集中できていないという場面をいくつも見てきました。

彼らがどんな学生で、どんな風に、どれだけの準備を重ねてくれたのかはわかりません。
人に伝わるプレゼンを準備すること、明確なスライドを作ること、堂々と楽しそうに話すこと、などなど。日頃からどんな訓練をしているのだろうととても興味を持ちました。

息子はこの半年くらい、自分で決めたテーマに沿ってリサーチしたものをレポートにまとめ、それを基にスライドを作るという授業に取り組んできました。コロナ渦でなければ、みんなの前でプレゼンするという機会も加わっていたはずです。
小学生のうちからこうしたことを重ねていくうちに、(しっかりがんばれば)あの学生さんたちのような力が身に着くのでしょうか。
息子もがんばれるかなと、がんばってほしいなと願うのでした。

自由な授業

こうした特別授業は、機会があれば学校単位で行われるものもあるし、学年単位で行われるものもあります。そして今回のようにクラス単位で行われるものもあります。
今回は、息子のクラスに教育実習に来ていた先生の奥様がこの大学の関係者だということで実現したそうです。教育実習に協力してくれた子供たちへのお礼の意味があったのですね。ありがたいことでした。

クラスメイトの親に弁護士がいて、政府や法律について話してくれたこともありました。自分でお店を経営している親が、商売の話をしてくれたこともありました。他にも、元先生だったおばあちゃんが本を読んでくれたり、料理が得意なクラスメイトがパンケーキをふるまってくれたこともありました。例えばアイルランドやイタリアや中国や、自分達のルーツの国の文化について教えてくれるという機会もありました。

こういうことをやりたいというクラスメイトやその親がいて、もしくは先生からの依頼を受ける形もありますが、兼ね合いさえよければ、自由な授業が実現するのです。
例年と違ってしまうから、他のクラスと違ってしまうからとか、そういう話にはなりません。
先生がどこまで裁量権を持っているのかはよくわからないところなのですけれども。

こうした特別授業はFacebookなどで紹介されたりして、だいたい公(おおやけ)のものになります。
それでも、「あのクラスだけずるい」といった文句が出るという話は聞いたことがありません。黙殺されているだけかもしれませんが。

こうしたフレキシブルさ、寛容さ、素晴らしいと思っています。

人生のフレキシビリティ

フレキシブルといえば、息子のクラスに教育自習に来ていた先生は、なんと息子とは違う学年に子供を2人通わせているお父さんでした。
サラリーマンとして働いていたそうですが、ずっと小学校の先生になりたいという夢を持ち続けていて、とうとう挑戦することになったのだそうです。

すごいことだと思いました。
子育てをしながらキャリアチェンジをする。しかも勉強して実習を受けて資格を取るというプロセスを経る必要があるのです。
共働きで奥様に安定した収入があってこそなのかもしれませんが、ご自身のチャレンジも、家族の理解も、素晴らしいことだと思いました。
私ももっと稼げれば、夫に自由に挑戦してもらえるのに...と思ったりしますが、残念ながらそんなに簡単なことではないのです...。

夢をあきらめない。それに挑戦できる環境がある。
こうしたフレキシブルさ、寛容さも、素晴らしいと思っています。

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