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最近ハンパない政党学生部について〜若い世代のための「政治家」の活躍〜

最近、政党学生部の活躍が目覚ましい。これまでやっていた「若者と政治を身近にする」活動に加え、政党から独立した独自の政策立案や運営方針の見直し活動を新たに行っている。前例があまりない画期的な取り組みだ。

僕は政党学生部が「若者の政治離れ」を克服し得る重要なエージェントの1つだと確信している。今回の投稿ではこれまで日本社会で共有されてこなかった政治参加を促進するファクターとして「リクルートメント」を指摘し、諸外国内で大きな影響力を持ち、最近活躍が目覚ましい「政党学生部」に注目する。

個人が政治に参加する動機とは

ここ20年間ずっと「若者の政治離れ」が叫ばれている。1990年代以降、日本人の投票率はとくに若年層を中心に低下傾向にある。また、政治家の選挙活動の手伝い、個人後援会や集会への参加、署名活動、政治家や行政職員に対する陳情、デモやストライキなどの抗議活動への参加といった、投票以外の形態の政治参加についても参加水準は概して低く、さらに年々低下する傾向にある。

政治をより良い方向に変えていく上で最も重要なことは「ある政治現象が起こる原因は何か」を正しく理解することだ。まず政治参加を規定する要因を見てみようと思う。政治参加を取り上げた先行研究では様々な要因が提示されておりそのすべてを説明することは叶わないが、今回はジェーリー・ストーカーの「CLEARモデル」を取り上げる。

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これはある個人が政治参加を行うか行わないかを決定する主な5つ要因をまとめたものだ。それぞれ「可能性」は参加するために必要なお金や情報、知識があるか、「志向」は日本社会や地域社会において居場所やつながりを感じることができるか、「力付け」は政策決定者に向けた道筋をつけるような傘団体やネットワーク、市民的基盤があるか、「手応え」は自分が関わることで良い成果が得られるか、を指している。

特に注目したいのが「勧誘(Asked to)」だ。人は誰かから参加するよう勧誘されると、より頻繁により習慣的に参加するようになる。それも家族や友人・知人、あるいは地縁や職場での関係者から誘われる機会が多くあるほど、人はより政治参加するようになる。仮に政治関心はなかったとしても、政治参加することがありうる。今の日本社会を振り返ると、「国民総中流」と呼ばれた時代から月日は流れ、経済は停滞し社会階層間の移動も鈍化した。血縁・地縁・社縁のネットワークは弱体化の一途をたどり、政治参加を勧誘される機会がどんどん失われた。

特に若年層は、1969年に児童生徒の政治的活動の全面的な禁止されて以降、そのような機会はほぼ消失したといって過言ではない。2015年の18歳選挙権実現により児童生徒の政治的活動が限定的に認められているが、一度消えた灯を再点火することは容易ではない。

海外での"勧誘"はどうなっているのか

投票率が高くデモや署名活動なども盛ん、20代30代の政治家も多く輩出している北欧諸国は学ぶべきところが多い。

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スウェーデン穏健党の政党青年部では13歳から誰でも党員になることが可能だ。活動内容は多岐にわたっており、党大会に向けて青年部の政策をまとめたり、党員の勧誘をしたり、若者が政治について気軽に話せる対話の場を設けることなどをしている。主義は本部の党と近いが、具体的政策においては本部とは異なる若者世代を重視した政策を議論しており、選挙前には政策提言も行っている。

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ノルウェー労働党の青年部では選挙前に下記のような活動を行なっているようだ。

・「学校選挙」という模擬選挙のために中学校や高校を訪問
・学校選挙での得票率を挙げる
・校内にも選挙スタンド広場を立てて、全国各地の学校を巡回(常に他の与野党の青年部と協力しながら)
・大学キャンパスで学生と政治の会話
・学生寮で戸別訪問
・若者を対象に電話での投票の呼びかけ
・母党の党員と一緒に全国各地の選挙小屋に立つ

日本と大きく異なっている点として以下の2点挙げられるだろう。
まず政党青年部に在籍できる年齢だ。北欧諸国では中学校入学相当の13歳から入ることができるのに対し、日本では党員になることができる年齢は18歳からだ。
次に活動の幅だ。北欧諸国では政党青年部や若い党員は「若い世代のための政治家」であるという共通認識が存在している。中学校や高校を訪問し政党の代表として模擬選挙に登壇したり独自政策を本部党へ提言を行っている。実際に青年部発で実現した政策もあるそうだ。スウェーデン・ハラン市の青年部の若者が、生徒の学校選択権を主張し学校選択制の導入を党大会で提案した。これはその後、穏健党の政策となり穏健党政権下において1991年に国策レベルで採択され、法律化されている。

日本への期待

冒頭で紹介したように、日本維新の会学生部や立憲ユース、自由民主党大阪府連学生部が独自政策をそれぞれの本部党へ提言をする活動など、日本でも消えかかった灯が再点火しようとしている。政党青年部や若い党員・メンバーが同世代の若者を政治に誘い、声を集約し当局に届ける「政治家」として活躍することで暗い現状が上向くかもしれない。

日本維新の会の音喜多議員は本部党の政策案に盛り込むことを検討する旨の発言をしている。ぜひ党内および国策レベルで採択され、法律化・施策化されていって欲しい。あらゆるチャネルから若者の声が政治・政策に反映される仕組みが整っていくことは成熟な民主主義の発展にも、若者の政治参加促進にとっても望ましい。

筆者が理事を務める日本若者協議会でもこうした取り組みを陰で後押ししようと下記のようなイベントを開催しようと考えています。

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各党からご紹介いただき、国政政党7党より政党学生部・青年部で活動されている若者を招き、迫りくる衆議院選挙について、また政治や政党に有効際感覚や効力感、やりがいを感じている同世代の若者の声を聞き、若者の政治参加の機運を高めていく糸口を見つけていきたいと考えています。

ぜひご視聴ください。

【プログラム詳細】
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開会挨拶・主旨説明 佐々木悠翔(日本若者協議会)
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プログラム01 20:15〜20:55
衆議院選挙を見据え、党や組織で活動する若者の視点から「なぜその政党を応援しているのか」「投票をする上で重要となる衆議院選挙の争点はどこになるか」等について議論していただきます。
登壇者 調整中
モデレーター 佐々木悠翔(日本若者協議会)
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プログラム02 20:55〜21:15
低調な若者の政治参加の現状を踏まえ、党や組織で活動する若者の視点から「活動のやりがいや手応え、課題はどこにあるか」「同世代と接してきて「若者の政治離れ」の1番のボトルネックはどこにあると感じているか」「政党学生部や政治・政党に深く関わる若者の役割」等について議論していただきます。
登壇者 調整中
モデレーター 佐々木悠翔(日本若者協議会)
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質疑応答 21:15〜21:25
YouTube Liveを視聴されている皆さまから頂いた質問をもとに議論していただきます。
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閉会

【登壇者:敬称略】
自由民主党  奥野蓮 (自由民主党大阪府支部連合会青年局学生部長)
立憲民主党  小林鷹義(立憲ユース 事務局次長)
公 明 党  千葉正男(公明党学生局)
日本共産党  黒田朝陽 (日本共産党新宿地区 青年・学生オーガナイザー)
日本維新の会 神谷勇太(日本維新の会学生部広報課長・広域支部長)
国民民主党  鈴木拓理 (国民民主党 学生部 代表)
れ い わ  かもめん (れいわ新選組若者勝手連 代表)
※2021年10月12日現在、登壇者名・所属は変更する可能性があります。

【参考文献】
・ジェリー・ストーカー『政治をあきらめない理由』山口二郎訳, 岩波書店, 2013. 
・坂本治也,『コロナ危機は政治参加をどう変えるか』PHP総研, 2020-9-18, Accessed 2021.10.11, https://thinktank.php.co.jp/voice/6451/
・両角達平, 『スウェーデンの政党青年部に学ぶ「若い政治」の作り方』 ,Tatsumaru times, 2019-08-01,Accessed 2021.10.11, https://tatsumarutimes.com/archives/21762
・鐙麻樹, 『「政治ってセクシー!」10代のノルウェー選挙運動と青年部』, Yahoo!個人ニュース, 2021-8-22, Accessed 2021.10.11, 
 https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20210822-00254392

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