見出し画像

政党学生部と政治参加〜各党の若者から見た政党の魅力〜

2021年10月16日に「若者が語る衆院選と政治参加〜from Youth to Youth〜」(主催:日本若者協議会)が開催されました。自民党・公明党・立憲民主党・国民民主党・日本共産党・日本維新の会・れいわ新選組の7党から、それぞれ各政党で活動する25歳以下の若者が登壇し、衆議院選挙やこれからの政党学生部について語りました。

アーカイブも残っています。ぜひご視聴ください。

今回登壇された若者は政党と連携し活躍されています。ただ政党の意見全てを代表しているわけではありません。政党に関係する1人の若者の視点として視聴していただけると幸いです。

今回は本イベント内の議論をもとに、①若者は政党・衆議院選挙をどう見ているのか政党学生部は今後どのようになっていくのか、の2点についてまとめていく。

今回参加された団体は政党学生部の他に、政党組織、学生部に準ずる組織など定義が多岐にわたる。本稿では便宜上、「政党学生部」に統一することをご容赦願いたい。

なぜ政党学生部なのか

なぜ国会議員ではなく、政党学生部等に所属する若者が語るのか疑問に思った方も多いかもしれない。1番の理由は同年代の若者にとって親近感の湧きやすい「政治家」だからである。

政治参加をする動機として政治関心や政治的有効性感覚はよく知られているが、他にも「他の人から誘われること」「自分が社会の一員であると感じること」といったものがある。それぞれ勧誘や帰属意識と呼ばれている。昔は町内会や会社、自治会などあらゆるコミュニティが健在で、周囲から投票に行くことを勧められる機会が多かった。過激さは批判されましたが安保闘争や学校闘争には多くの若者が周りから誘われ、ノリと勢いで政治参加をしていた。しかし、1969年の「高校生の政治活動の禁止」や経済・雇用不安、旧来のコミュニティの崩壊により誘われる機会も減少、政治参加も停滞していった。2015年「18歳選挙権」成立後、政治参加の門戸を開く改善が行われたが一時のブームにとどまり、低投票率・低政治参画の現状は改善されていない。

そこでこの現状を変えるべく、私は通説化されている政治知識・手段を学ぶこと、政治的有効性感覚を高めることの他にも前述した「勧誘」などにも着目するべきではないかと考えた。海外では若い政治家や党員(青年部)により学校模擬選挙や若者との対話が行われている。(下図)年齢の近い存在が政治を語る姿は見ている若者にとって親近感を与え、若い世代の声がどのように母党や国会に影響力を与えているのかを知ることができる。

スクリーンショット 2021-10-20 23.06.36

拙著にもまとめているため、こちらもご参照いただきたい。

各党の若者から見た重点政策

これから出席された若者同士の議論をかいつまんで紹介していきたい。まず各党で活躍する若者から見た衆議院選挙に向けた重点政策や政党の良い点を聞いた。

自民党:奥野さん
「個人的には経済安全保障は旬のテーマだと思う。車を購入しようと考えていたが、半導体不足の影響で納車が遅れると言われたことがある。サプライチェーンの強化は重要なテーマ。」
立憲民主党:小林さん
「国公立大学の学費の一律半額化。私も当事者として学費高騰化を問題視している。」
れいわ新選組:かもめんさん
「学費は免除。奨学金は徳政令でチャラ。自分や周囲の友達は奨学金を借りている。若者の貧困もクローズアップされている。」
日本維新の会:岩井さん
「将来世代のための持続成長型社会にするため「税・社会保障・雇用」の三位一体改革。これから生きていく我々世代が不利益を被ることのないよう、抜本的に改革を進めていく必要があると思う。」
公明党:千葉さん
「新マイナポイント制度。デジタル化の推進や消費喚起のためにもぜひ実現して欲しいと思っている。」
国民民主党:鈴木さん
「党内で最も憲法を議論している政党。専門家の招致・フルオープン・パブリックコメントの実施などしっかりとした議論をしてきている。人権や統治機構」
日本共産党:黒田さん
「ジェンダー平等の日本を作る。男女間での実質賃金の違い、就活セクハラ、性暴力・痴漢など様々な課題が山積している。」

その後、若者の当事者性の高い政策に関する議論が行われた。たとえば高等教育、奨学金に関するものだ。

日本共産党:黒田さん
「受益者負担論、行ける人が行けばいいという考え方のもと学費が上げられてきた。予算配分や理念は政治を変えるしかない。」
立憲民主党:小林さん
「世帯年収によらず学費そのものを短期的には半額下げる、中長期的には無償化することが必要になる。多様なキャリアプランを保障することにも繋がり、雇用も含めた"改革"にもなる。」
れいわ新選組:かもめんさん
「財源は新規国債の発行。年間4兆円あれば学費は無償化できる。9兆円あれば奨学金はチャラにできる。」
日本維新の会:岩井さん
「前提として機会平等社会を実現したい。教育無償化は大阪維新が大阪で初めて実現している。職業訓練や高専の充実も含めて、無償化+教育改革を進めていくことが必要。」
自由民主党:奥野さん
「無償化する、半額にすることは難しいと思う。国公立大学は簡単にできると思うが、私立大学等との兼ね合いもある。余裕を持って返せる人からは返してもらい、困難な人は補填してもらえる出世払い方式が現実的なのではないか。」

他にも選挙制度、被選挙権年齢、ジェンダー平等などについても喧々諤々な議論が行われている。ぜひ試聴していただきたい。

政党学生部の活躍と今後

また後半では、政党学生部の今と未来について聞いた。

自民党:奥野さん
大阪府連の学生部として7月に①衆議院選挙に向けた政策提言(4項目)を下村政調会長・二階幹事長に提出②全国規模の学生部創設に向けて牧島青年局長に提言を行った。各都道府県連の中でこういった活動をしたのは初めて。与党でもあり実現可能性を追求する上での試行錯誤に難しさを感じた
日本維新の会:岩井さん
若者維新八作を政党に提言した。主権者教育・保険・環境など様々なテーマについて1年間議論して作り上げた。物凄い反響があり、音喜多駿参議院も党の政策に反映していくと呟いていた。作る際には、党の政策・理念に沿いながらも若者世代ならでは視点を盛り込むことに注力した。
れいわ新選組:かもめんさん
若者勝手連から小中学校に無償給食、幼保の縦割り打破、ヤングケアラー対策、ブラック校則の是正などを提言に盛り込むよう働きかけた。勝手連のLINEグループで身近な話題から膨らませたこと、街頭活動で偶発的に起こる意見交換の中で見つけたことが政策の出発点だった。
国民民主党:鈴木さん
学生部として「高卒就職における政治的課題」についてSNSや専門家との意見交換を行い、意見集約を行っている。12月頃に論点整理ができれば良いと思います。

今回の衆議院選挙に向けて、自由民主党・立憲民主党・日本維新の会の学生部はそれぞれの党に対して提言を行っている。また公明党や日本共産党、れいわ新選組も日常的なコミュニケーションを皮切りに組織内の政策協議に携わっている。特に「党の政策・理念に沿いながらも若者世代ならでは視点を盛り込むこと」「実現可能性を追求すること」など、若者世代の声を代弁し政策実現に向けて精力的に動いていることが垣間見える。学生部などは「動員部隊」などと揶揄され党の手足になって動くイメージが強かったが、近年新たな動きも生まれ始めている。

スウェーデンでは実際に青年部発で実現した政策も存在している。ハラン市穏健党青年部の若者が、生徒の学校選択権を主張し学校選択制の導入を党大会で提案した。これはその後、穏健党の政策となり穏健党政権下において1991年に国策レベルで採択され、法律化されている。党大会など実質的な政策決定の場に学生部が若者代表として参画し、政策実現に向けて影響力を発揮していける環境づくりも党側に求められるだろう。

今後も学生部の動きに目が離せない。
筆者が理事を務める日本若者協議会においても、学生部と一緒に若者の政治参画を盛り上げていけるよう今後も定期的にイベントを開催していく。ぜひ暖かく見守っていただきたい。

【参考文献】
・Tatsumaru times「スウェーデンの政党青年部に学ぶ「若い政治」の作り方|JCEF連載「ヨーロッパの動きから考える」Vol.4」, 2019.08.01.https://tatsumarutimes.com/archives/21762
・鐙麻樹「社会の授業に政治家が来るのは当たり前、ノルウェー高校の模擬選挙「学校討論」」, 2021.09.06.https://news.yahoo.co.jp/byline/abumiasaki/20210906-00255328

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?