2人の王子様と、ただ一人の親友
わたしには世界で一番、これ以上なくて、この先もないような王子様がいた。端的に言うならば、いわゆる白馬の王子様のような存在で、彼の全てに心が惹かれていた。もはや神様のような人だった。
そして今は、これ以上もこの先も、もしかしたら同じような人がいるかもしれないけれど、きっとこの人以外を心底愛すことはないだろうという確信を与えてくれる至極平凡な王子様がいる。
神様のような王子は、何を取っても、人より優れていた。
初めて出会ったのが12歳の時。
この気持ちが恋だと自覚したのは14歳の時で、奇跡のような出来事を経て、通じあったのが15歳、幸せを育めた期間が約2年。
別れるとか、別れないとか。
好きだとか、好きじゃないとか。
会いたいとか、会いたくないとか。
そんな逡巡を繰り返した期間が約4年。そしてもう会えなくなってしまってから、さらに倍くらいの年月が過ぎた。
わたしと王子、そしてその周りには多くの出来事があって、わたしはすっかり歪んでしまったことを自覚した。
歪んだ生活を続け、たくさんの壁を乗り越えて、今普通の女子になるまでにかかった年月は、きっとわたしの「女の子」が許される貴重な時間を犠牲にしたと思う。
けれどこの犠牲こそが、世で青春と言われいるものなのかもしれないと、自分で納得できるようになった。
「普通」に戻れたのは、平凡な王子に出会うことができたからに他ならない。
平凡な王子は、何を取っても平凡で、人より特別何かに秀でていることはない。
けれど、わたしに与えてくれる愛と安らぎが、世界中で誰よりも深いものであることをわたしは知っている。
そして、愛情と愛情の螺旋に苛まれていたわたしに、何よりもかけがえのない、大切な気持ちを教えてくれた。
与えることと与えられることの熱量が「同じであることの幸せ」を。
だからこそわたしは今、こうして生きている。
生きることへの気力を失ったことが、三回ある。
わたしは自分のことを、その三回分、殺したと思うことにした。
「死んだら全て忘れて楽になれる」ならば、「死んだと思って全部忘れてしまおう」と思ったからだ。
全てなかったことにしてしまえば、ああ酷い悪夢だったと、そう思い込んでしまえばいいと思っていた。けれど人間はそうもうまく行くわけがないので、結局忘れることのできない思い出とともに、自分は死んだんだと言い聞かせながら、どんどん感情を歪ませていってしまったのだと思う。
本当に死ぬ勇気などなかった。今思い返せば、ただひたすらに耐えていただけだ。
自分のことを、何かにアウトプットしたくて、今noteを利用している。
このアウトプットは誰か一人でも多くの人に読んでもらいたい!という強い熱は帯びていない。
趣旨としては、自分の心の整理の方が、どちらかというと強いだろうと思う。
心の整理というよりも、冷静に懐古できるようになった今こそ、自分のこれまでのことを全部きちんと思い出してあげたいと思うようになった。
そう思うようになったのには理由がある。
ただ一人の大親友が、大きな絶望から立ち直ったからだ。
彼は、一人目の王子の友人だった。彼らの関係は、友人という言葉よりも家族という言葉の方がしっくりくるようなものだった。
わたしが大きな感情の波に左右され、喜びや悲しみを感じて来た長い年月の間、彼はずっと絶望していた。
感情の波は、無に等しかった。
彼には、絶望から希望を見つけることができるまで、誰の前からもいなくなると決意をした夜があった。そしてその夜、わたしは彼に抱かれた。
「明日になったら、いなくなる」ということを告げられなくても、きっとそういうことなのだろうとぼんやりと思っていた。
その行為はひどく乱暴で、時折痛みで包まれても、泣きながらわたしを抱く彼に何も言えることなどない。
それが、わたしと彼が過ごした最初で最後の夜だった。
わたしは三回死にたくなったことがあると言った。でも、彼がもし絶望から戻ることなく人生を諦めてしまうようなことがあったら、その時がわたしの「四回目に死にたくなる時」だと思っていた。
そして、その時は必ず死のうと決めていた。
特に理由はない。わたしのせいで、とか、わたしに出会わなければ、と言った繊細な気持ちからくるものではない。
彼には、一人では行って欲しくなかった。今度こそ、わたしを連れて行って欲しかった。ただそれだけの気持ちだった。
結果としてわたしも彼も死ぬことはなかったし、今こうして気持ちを残すことができている。
人生は何が起こるかわからない、それに尽きるなと実感した。
わたしはこのnoteに、彼らと過ごした儚くても幸せだった日々のことを書いて行く。
割合としてはきっと不幸の方が多い。でもこれを全部書き切った時、本当に幸せだったと思えるように。
そして全て、今度こそ本当に、忘れてしまえるように。
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