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家族でアイルランド生活3年。やったこと、やれなかったこと。

はじめまして/こんにちは。

縁もゆかりもないアイルランドへ、純ジャパ夫婦+子供の3人で引越してから3年経ちました。夫婦共に40歳代半ばでの、初めての海外生活。
最初の1年でどのようにして生活を立ち上げたか、思い出しながら綴ってみようと思います。

最初にお断りしますが、これから書くのは、「海外で新規挑戦!」というようなキラキラした話ではありません。現地生活の立ち上げや地域への溶け込み方、というありふれた話です。
日本企業の駐在員でもなく、国際結婚でもなく、どこにでもいる普通の日本人家族が、ゆかりのない海外で新生活を始めるにあたっての試行錯誤を綴ります。

この記事が、家族で海外に移住することを検討している方への、何かのご参考になれば幸いです。

また、日本で過ごされている方にも、日本で暮らす外国人の状況を鑑みていただくきっかけになればいいな、とも思います。知らない土地で生活を立ち上げるというのは、思った以上に時間も気力もかかるので。(遠い目)

1.行先国の決定

もしかすると初っ端から、期待とは違う出だしかもしれません。
実は、私達家族の行先国の選定に、深い理由はありませんでした。夫の新しい職場が、たまたまそうだったという消極的理由です。行先を「ダブリン」と聞いても、「アイルランド」の首都だとは知らなかった私。ヨーロッパのどこかだよね?程度の認識でした。

そうです。私達家族は、海外志向が強かったわけではないのです。ただ、夫婦ともにIT業界で働いていたことから、海外でも仕事は何とかなるだろう、という楽観的な気持ちで海外移動することを決めました。
一点付け加えるとすると、夫の新しい職場(国際企業)には日本人がすでに何名かいらっしゃったため、気持ち的に少し余裕を持って渡愛の決意を固めることができたとは思います。

なお、海外生活を決意した大きなポイントは、子供に英語が使える人間になってほしい、という思いです。恥を承知で言いますが、私は日常生活で通用するレベルの英語が出来ません。日本にいた頃は、仕事に関する読み物はそれなり、書くのはメール程度、聞くは学会やドキュメンタリーならなんとか、話すはボロボロ。心には、「日常会話、めちゃ怖い」という恐怖感覚が染みついています(流石に今はだいぶ解消しましたが)。中学生の頃から、英語は一番嫌いな教科でした。だからこそ、子供には私のようになってほしくない。教育のことを考えると、小学校に上がるこのタイミングでの国外脱出がベターな選択に思えました。
行先に関して私からは、アメリカ以外で英語が通じる国ならばどこでもいい、という希望のみ(アメリカは、出張で数日滞在したことがあるだけですが、苦手意識があるのです。強烈なパッションやエネルギーに、私が付いていけないだけの話なのですけれど…)。

で、結果的にアイルランドに行くことに。

2.引越

出国2週間前に、荷出し。車も同梱(アイルランドは日本と同じ右ハンドルの国で、現地で買うより安い)。荷物と車を一つのコンテナにして船便で。
そもそも、この引越の二か月半前に夫がまず単身で渡愛済みでした。私と子供は後から追いかける形で移動です。
渡愛を時間差にした理由は、子供の卒園までは日本に留まりたかったからです。もう一つの理由としては、夫の事務手続きが想像以上にスピーディだったため。移籍を考えて始めてから、3~4か月後には就労ビザを受け取っていました。そのスピード感に、私の方が追い付かなかった(仕事を休職するという調整や引継ぎ等)。

3.住居契約

先に夫が単身で移動したことは上記で述べましたが、彼はまず単身者向けのシェアハウスに住み、本格的に住居探しを始めました。10か所以上は、内覧に行っていたようです。
予定では、夫の1か月後に私も一週間だけ観光滞在し、その時に一緒に家を決めるはずでした。しかし、私が訪れる前に良い物件が見つかったため、即、契約。
結果的に、私の観光滞在前に家が決まっていて良かったです。一週間の訪問中に、家の中の最低限の備品を整えることができましたので。これ即ち、引越の船便が届くまでの生活基盤を準備できたことになります。園児を連れて、生活用品を探し回るという事態は避けられました。
こちらの借家は、家具付なので、ベッドやテーブルなど大きなものを購入する必要はないのですが、最低限の調理用具などは自分達で準備する必要がありました。
購入は IKEA にて。地元の店をまだ知らない身としては、IKEA の存在は本当に有難かったです。そこだけで買い物が完結しますから。(アイルランドでは小売り店が圧倒的で、物を買うには目的に応じて複数のお店を回らなければならないのです。ということに気づいたのも、住み始めてから結構時間が経ってからでしたが。)
名前を聞くだけで商品の内容と質が頭に浮かぶ、世界ブランドって、こういうことか、と、腑に落ちました。

4.通信網の契約

携帯SIMの契約とケーブルTVの契約。
現代に生きる人にとって、携帯は生命線ですよね。
SIMは空港や町中で手軽に購入できるので、空港に到着後にすぐに差し替えればOK。
こちらのSIMは、プリペイド式が主流です。事業会社としては、Vodafoneと3(スリー)が二大事業者。外出中に動画を見ない私の場合、約€20/月。一回のチャージでヨーロッパ圏内で11GBまで使えます。
ケーブルTVは、何社か選択肢があります。我が家はVirgin mediaで契約。地上波+αの50局程度のTVチャネルとブロードバンドで、約€90/月。
ただ残念ながら、アイルランドは一般家庭のブロードバンド網が弱い(たま~に切れたり、回線速度が遅くなったり。田舎ではネット環境が整っていない。)ので、もう少し改善してくれることを願っています。

5.IRP・PPSナンバー 公的手続き

住民登録(IRP:Irish Residence Permit)
大人はIRPカードを、入国後90日以内に取得する必要があります。私の場合、一か月の間隔をおいて2回立て続けに入国していたので、一回目の入国時から起算して90日以内に手続きをするように、と、二回目の入国審査時に言われました。結構、細かくコントロールされている印象。
で、初回登録に行ったのですが、一つ大きなミスを犯しました。それは、自分の登録でも、夫(=ワークパーミット取得者)の同席が必須だということです。私は、この国で無職(=ワークパーミット取得者の単なる付帯者)です。この国に住むには、ワークパーミットを持っている人に連なる必要があります。一人でノコノコと手続きに行った私は、あっさりとリジェクトされました。この点、帯同者で手続きに向かう人は、お忘れなく。
IRPカードは、最初の数年間は毎年更新する必要があります。更新時にも、ワークパーミット保有者の同席が必須ですので、重ねてお忘れなく。

Personal Public Service (PPS) Number
次に必要なのは、PPSNカードです。大人も子供も必要です。実生活では、このナンバーを問われる機会が一番多いかも。GP登録や学校申請、児童手当、地域行政主催の学習コースを受講する際にも、記入を求められます。

6.子供の学校探し

日本にいる頃から、ネットで行政の情報は調べまくっていました。家が決まってからは、日本から、家の周辺の学校へメールを打ちまくり。しかしどこも満杯だったりしてなかなか決まらず、少々焦っていました。
転機となったのは、家の大家さんや不動産業者に、その周辺でのお勧めの学校を聞いたことです。私が行政リストで調べきれていなかった学校を教えてもらえました。結果的に、地元の方に聞いた学校が、最も良かったです。アイルランドはコネ社会だと揶揄されることもある反面、こういうオンラインの情報からは読み取れない付加価値を得られる利点もあります。

学校選定に当たっては、家から学校まで散歩し、学校の外観のみならず、周辺環境も確認しました。家から同じような距離にある学校でも、周辺環境が全く違います。周囲の家の庭や路上の散らかり具合が違ったり、壁に落書きが多かったり、、、と。実際に見に行って得られた情報は多かったです。
子供の学校の選定に関して、私が強くお勧めしたいのは、「実際に学校の周辺を見てから決める」ということです。学校の荒廃度や学業レベルなどは、周辺環境にも表れると思うからです。

7.引越荷物が到着

人間に遅れること2か月。日本からの船便が届きました。

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この写真にあるように、コンテナ丸ごと一個が、アパートメントの敷地に到着。扉の内側に車の後部が少し見えていますね。家財道具はコンテナの前半部に格納され、一家の全財産が入ったコンテナです。
「私のインプレッサがコンテナに入って、まるでWRCのラリーカーのよう!」と、ちょっとテンションが上がったのはここだけの話。
税関での抜き取り検査もなく、思ったよりも早く受け取れてラッキーでした。食器類ふくめて何一つ壊れることなく届く、梱包技術の凄さに感服しました。

8.車の登録

手続きはすべて自分達で行ったのですが、これは思った以上に難問でした。実際に公道を走れるようになるまで、6か月かかりました。
車が使えるようになるまでは、私は毎日歩いて数キロのスーパーへ買い出し。毎日一万歩は余裕で超える健康生活でした。しかし最初から車があったならば、周辺を歩かず、地域のことを知ることが出来なかったので、結果的には車が使えない期間が長くなって良かったと思います。
また、日本語補習校へも週一で、バス+徒歩で一時間以上かけて通いました。大変でしたが、バス生活で得られた地域情報(バス待ちの際に見知らぬ人と立ち話して)も多かったので、車なし生活の良い点として挙げられると思います。
車が使えるようになるまでの話は、悲喜こもごも。
長くなるので別記事で書きますね。

9.英会話教室通い

アイルランドでは、1.5~2時間の移民向けフリー英会話教室が、様々な時間帯にコミュニティ毎に開かれています。
私は、3か所の教室へそれぞれ週1で通いました。
うち2か所は、数か月~1年でやめてしまいましたが、1か所は続けています。そこでは、アイルランドの歴史や文化、時事やゴシップや教育など、幅広いテーマで楽しく英会話をすることができます。参加者は似たような境遇と似たような英語レベルなので、教室外でも遊んだり相談したり、と、友達の輪を広げることが出来ました。
今はコロナ制限下なので、教室もオンラインになり、以前と同じように行かない部分もありますが、人との繋がりがあると自覚できることは、とても心強く感じています。
英会話も大事ですが、知己を得る、ということは、新たな土地で過ごす場合には非常に重要なポイントとなると思います。

10.児童手当の申請

申請が通れば、児童手当を受給できます。アイルランドの法人に勤め、アイルランドに税金を納めている家庭ならば、受け取れると思います(が、審査基準は分かりません。日本企業の駐在家族で、申請に落ちたという噂を聞いたことがあります)。
申請書に関して、日本と違って面白いと感じたのは、申請者は母親だということ。日本だと、公的な書類はすべて父親名義で書きますよね。日本にいた頃、保育園の書類を書きながら、常々、不思議に思っていたのです。書いているのは、私(=子供の面倒を最も見ている人=母親)で、夫はこの書類の内容を一字も読んですらいない。なのに、何故に父親の名前で書類を書いているのだろう?と。
母親名で申請するアイルランド方式の方が、フェアな気がします。当然、振込口座も母親名義です。
さらに面白いのは、母親の旧姓を記入する欄がある点。カトリックの国ならでは?それとも、女性の権利確立前の名残なのでしょうか?
重ねて面白かったのは、移民で無職の場合、アイルランドに来てから何らかの社会活動や学業をしているか、という設問があることです。これは、移民として国に入っても、移民内コミュニティでしか活動していない人が増えていることに対する対策なのかな、と思いました。

11.社会活動

英会話教室の繋がりから、切り絵教室を開催することが出来ました。半年で計7~8回やったでしょうか。残念ながらコロナのため途中で打ち切りになりましたが。
その他、箱をペイントして理想の都市を表現しよう、という芸術家主導のカルチャーコースのチューターを務める機会もいただきました。
また、地域の清掃活動にも参加…したいと思いつつ、時間が折り合わず。しょうがないので、子供の学校の送り迎えの片道10分程度の道すがら、たまに自主的にゴミ拾いをしています。子供と一緒だとやり易い。通りすがりの人にも声をかけてもらえたりします。
こうやって書き出してみたものの、どれも半端。
いろいろやって感じることは、もっと英語力が欲しいということ。うん、頑張ろう。

12.習い事

日本よりも、カルチャー系集いに、参加しやすく辞めやすい、というのは利点だと思います。入会費やお稽古道具に大金が飛ぶことがありません。

子供の習い事として、こちらでトライしたのは、下記6種類。
ピアノ、アイリッシュダンス、サッカー、テニス、ジムナスティック、Kumon(国際ブランドになっているのですね)
このうち、今も継続しているのは2個。コロナの影響で、なかなかオンラインではモチベーションが保てず辞めたものもあります。
アイルランドでは、日本のように部活動もないし、子供一人で登下校も許されていません。親が対応できない場合は、シッターさんが活躍することになります。

私の習い事としては、Zumbaとビーズアクセサリ作り。
どちらもオンラインでは継続が厳しく、今はやっていません。
その代わり、コロナ下でアイルランド語のオンライン授業を受け始めました。Certificateを貰える課金コースにアップグレードしようか悩み中。

13.できなかったこと

・英語をもっと上達させること
・ITスキルの保持

英語は、まだまだ日常レベルで使える段階まで到達していません。アウトプットを増やしていきたいと思っています。
ITスキルについては、こちらに来てから子供中心の生活に激変したことに伴い、すっぱりとあきらめることにしました。今後の人生で必要になったら、その時に部分的にキャッチアップする程度にしよう、と。

海外からアイルランドに来た、周りのご家庭を見ても思いますが、子供の年齢によってキャリア形成に大きな差が出ます。ワークパーミットを持っていない方の親が、社会活動や自分の学業に時間を割けるようになるには、ある程度、子供の年齢が大きくなってからです。もしくは、子供の自立が早い場合、かと。一方で、少数ですが、お子さんが小さいにもかかわらず、バリバリに自分のキャリアを伸ばしている方もいらっしゃいます。本当に凄い。

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以上、ここに来てからの3年を振り返ってみました。3年目はコロナ縛りがあったので、実質2年間の振り返りとなります。
今後やりたいことも少しずつ固まってきたので、次の1~2年でブラッシュアップしていきたいです。

何か質問がございましたら、お気軽にコメントをお寄せくださいね。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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