見出し画像

22歳、中学生から夢見た東京に住みIT系StartUpの創業メンバーになった話。vol.2

(あー見た目なんか厳ついし怖いな、あの人、近づかないでおこ)

彼に初めて会った時そう思った。初対面は昨年5月頃だったと思うが、ひと目でなんなんとなく苦手そうだと思いずっと関わりを避けていた。

ピアニスト、所山との出会い。

初対面の印象は最悪だったが、昨年12月、何を思ったかここでも持ち前の好奇心を発揮し、食事に行くこととなった。

元々、自分の先生と共通の面識があり、かなりぶっ飛んだ経歴を持っていることは知っていたが、「世界を変えたいんだ!」と言い出すので驚いた。正直、初めてまともに話す女の子相手にする話題ではないと思うが(笑)
中でも「だって僕ら若いじゃん!」という言葉が印象強かった。

若いということが強みになると。

私はそれまで、「若いから」未熟で経験が浅く、何か行動を起こしても無意味だと思っていた。知識や経験はどうしたって先輩音楽家には敵わないので、若いうちは音楽活動をする傍ら他で死ぬほど働き、食べる為、音楽をする為にお金を稼ぐ。甘くないこの世界を生きる事はそういうものだと思っていた。

でも所山は、そんな問題が生まれてしまう根底に疑問を投げかけ、変えていきたいと語った。若いからこそ、エネルギッシュに挑戦できるし失敗も怖くないのだと。

見た目からはまるで想像のつかない、未来を熱く真剣に語る姿を見て、私も同じ世界に生きる者として自分なりにできる事を、精一杯していこうと思ったのをよく覚えている。

家に帰り所山のことを家族に話した。音大に通う間幾度となく、音楽で食べていくのがこんなに難しいなんて理不尽だ、とよく家族に愚痴をこぼしていたから。同じように不満を抱え、行動に移そうとしている人間がすごく身近にいたことが心強く、嬉しかった。

技術職である父には何度も、「音楽でも近い未来、AIが人間を超す時がくる」と言われ、そんな事は絶対にないとその都度反論していた。まさか自分が数ヶ月後、ITの力に頼ろうとすることになるなんて知る由もなく、、

あとから知ったのだが、偶然にも話を聞いたこの日は、「株式会社TOKYO CREATION」の誕生日であった。彼、所山武司が創設した会社である。

また面白い人に出会えたなと、この日は嬉しく思った。

職業音楽家になるということ。

その後私は音楽大学を卒業し、現在新たに音大生となった妹と2人、都内で暮らしている。学生の頃から続けていたピアノ講師、伴奏、ブライダル関係のアルバイト。音楽活動をすることを第一に、時間に融通を効かせるためフリーランスになる道を選んだ。

前回の記事で、東京で出会った素敵な人たちについて書いたが、その中には音楽を仕事にしているフリーランスの先輩方が何人もいた。ピアノという楽器はオーケストラや劇団、合唱団のように所属できる団体楽器ではない為、また多岐にわたっての活動が可能な楽器な為に、演奏を仕事にする音楽家はほとんどがフリーランスだ。

幸い私は、理解ある家族にも友人にも恵まれていて、そういった意味ですぐに決断ができた。問題は世の中の仕組み的に、決して恵まれた環境とはいえないこと。

お金を稼ぐことと音楽活動をすることが「=」で繋がらない。

お金がなくて音楽をするのに支障をきたしては意味がないので、別に仕事を持たなければならない。だが仕事をする時間と体力に加えて、練習する時間と体力も必要だ。1日24時間じゃとても足りなくて、大学卒業したての頃は休みなく働き音楽をしていたという話をよく聞いた。そうしなければ厳しかったと。

それでも、自分が生きる上で一番大切にしたいと思うのは「自分にしか出来ない事を見つけ生かすこと」だった。

安定とは程遠い生活でも、自分の感性を磨き続け、生きがいを何より大事にしている先輩たちの人生は、側から見ても充実していてカッコ良かったし、こういう大人になりたいと思った。

コロナで変わった世の中、そして新たな転機。

自分に何ができるかを考えた末、最良と思えた選択だった。ところが、卒業と同時にコロナの感染拡大、世の中は混乱し全ての仕事がなくなってしまった。

先輩方を見てきたので、楽な道ではないと十分承知の上で、大変な苦労があることも覚悟していた。だけど、、正直こんなはずじゃなかった。

感染予防のために音楽活動はほぼ停止、それが卒業と同時だった為、突然に自分の居場所がなくなってしまったように感じて、音楽をする意味もだんだんと分らなくなってしまった。生きがいもなんだかぼんやりとしてきて、息をしているだけの毎日。これまでの人生で最も音楽から遠ざかっていた。

そんな日々を過ごしていた夏、学生の頃の素敵な出会いのひとつ、尊敬する人たちと再会したことで、以前に感銘を受けた感覚が蘇り、Instagramで次のような投稿をした。


画像1

主に、今学生である後輩たちを思っての投稿だった。

このような状況で、音楽という拠り所が一見なくなってしまったように思えたとしても、自分と同じように今、音楽と向き合っている人が実は大勢いるのだと知ってほしくて。コロナのせいで目的を見失わないでほしい、というメッセージを込めたつもりだったが、意外にも反応してくれる人がたくさんいた。

所山がその一人だ。

この投稿が所山の目にとまり、すぐにコメントがきた。音楽に関する仕事の話があると。仕事内容は全く想像ができなかったが、自分に出来ることが少しでもあるなら力になりたいと思い、話をしてみることにした。

--------------------

続きはvol.3で。最後まで読んでくださり、ありがとうございます。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?