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【インタビュー第1回】重要なのは、自分に出来るかではなく、成長できるかどうか。ー加藤翼さん


「未知の体験は人間誰だって怖いと思うけど、現状を変えたいと本気で思うなら一歩踏み出す勇気は必要だと思います」
「気分でやらないことを選択することはできるけど、一本芯を決めればなんとでもできます」

主に中高生向けの、進路を考えるためのウェブマガジン(詳しくは前回のnoteをご覧ください。
第1回目のインタビュー相手は加藤翼さんです。
高校時代は演劇に打ち込み、卒業後はアルバイトを経て専門学校へ。その間も「新聞奨学生」として働きながら学校に通い続けた加藤翼さんが、どのような人生を歩んできたのか、大切にしていることついて聞きました。


勉強→部活 普通とは反対の高校3年間


ー高校ではどのようなことをしていましたか
 
 なんとなく、普通の高校生とは反対方向に進んでいた気がする。というのも、1年目はとにかくずっと勉強をしていました。登校のバスの中、授業と授業の合間の10分休み、昼食中、昼食後……使える時間のほとんどを勉強に充てていた気がします。高校生ということで演劇部に入り、合同公演の練習で他校の友達なんかもたくさん出来ましたが、遊びに行くというよりは部活の時に目一杯はしゃぐといった感じで。なので、1年目はまじめに部活をやっていたという感じではなくどちらかといえば勉強がメインでした。何かを目標に、というよりは他の人に負けたくないといった心情の方が大きかった気がします。

2年目は、少しずつ進路のことを考え始める季節でした。進学校だったので少し早い段階から面談等もありましたが、中期くらいには家庭の金銭的な事情で大学に進学することは困難かなと思い始めていましたし、奨学金というのも将来的なことを考えた時に厳しいかなと思い、選択肢にはありませんでした。結果的に数年後に奨学金の制度の限界みたいな記事を職場の新聞で読んで知り、選択としては間違いではなかったなと(笑)そういった経緯もあり、2年目の半ば頃には勉強に対するモチベーションは下がり始め、一番好きな国語だけをやり続けるといったことが起きたので国語だけは成績をある程度維持していきました。

3年目、進学が出来ないので就職になるかなとぼんやり考え始めていた時期です。どうせならと部活の引退時期までも引き延ばし、割と最後まで部室に通っていました。本来であれば受験シーズンで勉強漬けになるはずでしたが、自分の場合は部活漬けという感じに。

結局3年間を振り返ると、勉強→部活と勉強の両立→部活といったように、他とは逆の高校生活を送ることになりました。


ー高校生活を通して印象に残っていることは何ですか
 
 一番はやはり部活でしょうか。接点がないと思っていた演劇部に入部し、部活といえば上下関係みたいなイメージが無くなりました。先輩も後輩も優しい方ばかりで、自分の新しい面を発見したりする機会に恵まれました。
学校という、言ってしまえば閉鎖的な空間から外側に触れるきっかけがたくさん増えたのでとても良い経験だったと思います。


「新聞奨学生」への挑戦


ー高校卒業後の進路について教えて下さい。
 
 最初は就職を考えていました。先生のかつての教え子の方のところに行ってカメラマンのアシスタントを体験してみたり、市役所に面接を受けに行こうとしていたり……。ただ、漠然とこのままでいいのかなとは思っていました。年齢的には殆どの人が大学に進学したりする歳。就職も選択肢としては悪くないけれど、何か自分のやりたいことをする方がいいんじゃないか、そう思ってしまった結果、勢いで上京。父親の家で一緒に住み、自分で学費を稼いで学校に行こうと1年間、寝食を削りに削りアルバイトに勤しみました。結果的に1年間で100万円程貯まりましたが大学に行くには同じことをあと3年続ける必要があると理解した時、厳しい現実が立ちはだかりました。

 そんな折、東京で専門学校に通っていた小学校時代からの友人から『それなら一緒に新聞奨学生やる?』と言われました。指定の期間、ほとんど正社員のような感じで働く代わりに学費を支払ってもらい、返済の必要もないということで新しい選択肢が出来ました。悩んだ結果、興味はあったけれど将来の夢にするという考えがなかった役者の道を目指してみようと思い、東京放送専門学校の系列の学校に他の人より1年遅く入学し、通うことになりました。早朝と夕方の配達、夕刊後の業務をしながら日中に学校に通うのは体力的には厳しかったですが、友達が一緒の店で働いているということもあって精神的にはとても助けられていました。結局2年間しっかりと通い、卒業を迎えて、現在も役者関係の仕事につきたいなと思って生活しています。


「新しいことへの挑戦はむしろ自分の可能性を広げる良い機会」

ー新しいことに挑戦するときや今までと違う環境で暮らすとき、不安やためらいを感じたことがありますか?その場合、どのように対処していますか?
 
 未知の体験は人間誰だって怖いと思うけど、現状を変えたいと本気で思うなら一歩踏み出す勇気は必要だと思います。自分は新しいことへの挑戦に対してあまり抵抗感はなく、むしろ自分の可能性を広げる良い機会だと思っているのでなるべく色んなことに興味を持ち、一度は経験してみるのが良いかなと思っています。はじめての一人暮らしも意外と好きな方で、ホームシックになることはありませんでした。むしろ部屋っていう自分のパーソナル空間をいかに快適にするかを考えて模様替えをしたり、新しい家具を買ってみたりなど、いつでも新鮮な気持ちで居られるようにするといい気分で過ごせました(笑)
 それでも不安になってしまった時には、自分にも出来る、出来なくとも手助けしてくれる人がいるって考えて、何でもかんでも自分一人でやらなくてはいけないって考えることをやめました。頼るのも大事なことだと思います。

大事なのは目標を定めること

ー選択をする際、何に重点を置きますか
 
 一番重要視するのは、自分に出来るかではなく、成長できるかどうか。
体力が持つか、精神的に耐えられるか….…色んなことを考えると思いますが今まで色々と手を出してみた結果思ったのは人間意外とやればできるという事。気分でやらないことを選択することはできるけど、一本芯を決めればなんとでもできます。大事なのは目標を定めること。始めた後は適宜修正を加えていけば良いと思います。なので、とにかく大事なのは行動をしてみること、それに尽きるかと。

憧れが多い人はそれだけ自分の成長に貪欲になれるような気がします

ー最後に、一番好きなコンテンツ、これに支えられたというものがあったら1つ教えてください。(映画、本、ゲームなどなんでもよいです)

 自分の場合は恋愛シミュレーションゲームです。学生の頃はまだメンタルもあまり強くなかったので人知れず落ち込んでることも多かったのですが、ゲーム内の主人公は基本的にみんなに優しく、精神的にも芯が通っている人が多かったです。これと決めたことをやり遂げた末に好きな人を幸せにする、そういう世界をたくさん疑似体験できたことも今の自分を形作る大きな要素になったかと。人に優しく、目標を定める、行動する……そういう大事なことを学びました。本や小説でもたくさん影響は受けましたが、青春時代の支えとなったのはこれですね。現実でも創作物でもなんでも良いですけど、憧れが多い人はそれだけ自分の成長に貪欲になれるような気がします。なので一概には言えないですが、若いうちはなるべく色んな人と関わって、創作物も楽しめるような人であることが素敵な人物になるための手助けになるかなって思います。

【加藤翼さんの年表】
2012年 高校入学
 演劇部に入部。はじめて先輩という存在が出来、同じ部に所属しているという仲間も増えた。この頃はまだ勉強が中心で、部活は息抜き程度の感覚。

2013年 高校2年目
 金銭面から大学進学するのが厳しいかなと思い始めると同時に、進学のための勉強が少なくなり、自分の好きな国語や現代文のみを勉強し始める。この頃は部活も楽しくなり、初めての後輩もできたことでより打ち込むことが多くなりました。初めて本気で人を好きになったのもこの時期。1年間片思いを続けて無事成就。

2014年 高校3年目
 この頃は親を頼りにしての進学は望めないと思っていたので、実際に言われた時は凹みましたがまぁ仕方ないかなと。2日凹んで、3日目からは気持ちを切り替えました。なんとなく自分の中には大学に行かないとちゃんとしたところでは働けないみたいな考えが染み付いていたので、不安は大きかったです。就職を視野に入れつつ部活に打ち込みました。
演劇部最後の合同公演では過去最高のものにしようと色々動き回り、色んな人の手助けがあった結果、最後には大号泣をしたというのも良い思い出です。最後の日に貰った寄せ書きはいまでも宝物で、たまに見返しています。

2015年 高校卒業。勢いで埼玉へ
 結局地元での就職はやめ、自分で大学費用を稼ごうと道外に出ることに。1年間は父親の家に住み、コンビニとカラオケのアルバイトを掛け持ちしていました。1日平均10時間くらい働き、多い時には14時間になることも。48連勤を経験したことで、意外と人間なんとかなるなぁと。
 あと、治安がそこそこ悪かったのでカラオケのバイト中に刺青を入れた人に絡まれたり、胸ぐらを掴まれたりして警察を呼んだりっていう経験もあったのでメンタル面は意外と強化されました(笑)
 結局1年間かなり切り詰めましたが100万円しかたまらず、四年生の大学は厳しいなと思ってた時に小学生以来の友人から新聞奨学生と、舞台系の専門学校の話を聞き、何か挑戦してみるのも素敵かもって事で進路変更。声優などを育成する専門学校『東京アナウンス学院』へ行くことを決断。

2016年 専門学校入学、新聞奨学生開始
 働きながら日中は学校に行くという初めての経験。体力的に厳しいなと思うことはありましたが、親に頼らずに学校に行けること、友達が隣に住んでる事などもあって精神的にはかなり楽だったなと。後半ちょっと体力が底をつき、日中の眠気に耐えられずに寝てしまうこともありました。

2017年 専門学校2年目
 履修するクラスごとに分かれてゼミという形で1年間を過ごしました。
この頃は気持ちの変化から、人との繋がりが大事だなって思い始めていたこともあって友達作りに重点を置きました。結果クラスの人ほとんどと仲良くなれたし、卒業後も一緒に遊ぶ人やよく会う人も出来たので良かったなと。
数年ぶりに片思いもして、結果的にフラれはしたものの半年以上本気で自分磨きをすることが出来たので素敵な恋ができたかと。最後の卒業制作も、やる気十分でめちゃくちゃ頑張りました。この1年間は自分の人生でもかなり大切な年になりました。

2018年 専門学校卒業、引っ越し
 専門学校卒業後も新聞屋の従業員が足りなかったこともあって6ヶ月間延長。結局8月に引越しをし、都内から埼玉の僻地へ。劇団養成所の入団試験を受けに行ったり、友達を集めてバーベキューを企画したり、初めて居酒屋で働いたりとまたまた新しいことに挑戦することが多い年でした。

2019年 仕事を増やす
 友達から誘われたこともあり一緒に仕事をすることが増えました。そのこともあり、生活費を稼ぐための仕事は渋谷の事務仕事に変えてそちらをメインに。

【インタビュー後記】
 行動力と判断力に圧倒されました。「大切なのは自分に出来るかどうかではなく、成長できるかどうか」。この言葉がずっと心に残っています。私はつい「自分にできるかどうか」で悩み、挑戦をためらってしまうことがあるので。行動第一だと思いました。
 コンテンツに関してはどんな答えが返ってくるのかな、とわくわくしていました。「決めたことをやり遂げ誰かを幸せにする疑似体験」っていいですね。

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