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韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター 」で考察する「マイナス✖️マイナス=プラス」の出会い

 韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~」をNetflixでやっと見終わりました。韓国ドラマはCMなしで70分超、最終回は約90分あります。ダウンロードして移動中の車内で少しずつ見ていたのですが、8話くらいからどんどん引き込まれ、睡眠時間を削って完走してしまいました。

不遇で不幸な主人公たちの生き様を描いた傑作

 このドラマは胸キュンの恋愛ものでもなければ、政争や陰謀が渦巻く時代劇でもありません。主人公の2人は、地味で不遇で暗いです。ですが、人間の生き様が実によく描かれている作品なのです。各々の脚本が緻密で登場人物のキャラクターが全て魅力的なので、途中でやめることができません。ストーリーとしては、こんな感じです。

 映画『パラサイト』で大豪邸に住むIT企業の社長を演じていたイ・ソンギュン演じるパク・ドンフン は40代半ばの大手建設会社に勤務する部長です。ですが映画とは違い、設計部のエースだったのに、大学の後輩・ト・ジュニョンが社長になってから、安全を点検する部署へ左遷させられ、構造エンジニアなのに、自ら電柱に登るような仕事をさせられて、毎日死んだように会社へ通っています。

大企業の部長でも世界一不幸な男の悲哀

 ドンフン には仲の良い兄と弟がいます。二人とも一流大学出身ですが、兄は大手企業からリストラされて失業中、元映画監督の弟も失業中です。二男のドンフンは実家の大黒柱でもあり、母親に家を買ってあげたり、兄の娘の結婚式だと聞けば、一文無しの兄にスーツを新調するお金をだしたしています。しかも、小学校高学年の息子をアメリカに留学させているので、どんなに理不尽な目にあっても、会社を辞めることができないのです。兄にお金をあげるために、ドンフン がキャッシングしいいるシーンが彼の苦境を物語っており、秀逸でした。

 ドンフンの妻で弁護士のユニは夫の会社の社長で、大学の同期でもあるト・ジュニョンと浮気しています。彼女はいつまでたっても実家を優先し、自分を第一に考えてくれないドンフン に大きな不満を抱き、ジュニョンと再婚して、人生の仕切り直しを夢見ています。ジュニョンはドンフン が会社を自ら辞めるように画策し、部下を使って彼のもとに差出人不明の5000万ウォンの商品券を送りつけます。そこにヒロインのIU演じるイ・ジアンが絡むことで、物語が大きく展開します。

 イ・ジアンはドンフン の会社で働く派遣社員です。学歴社会の韓国で、彼女は中卒で、特技はかけっこ。本来なら選ばれるはずのない人材ですが、人生に絶望していたドンフン は、その嘘のない履歴書を気に入り、彼女を選んだのです。

借金を背負い、祖母を守るために殺人を犯した極貧の21歳

 ジアンは子供も頃に母親が複数うの闇金融から多額の借金をし、彼女と聴覚障害のあるお祖母さんを残して失踪しています。そのため、闇金中でも特に悪質な男に借金の返済を迫られ、暴力を振るわれ、祖母を守ためにその男を殺害してしまった過去があります。その男の死後は、同世代である息子に借金を返し続けているのですが、どんなに働いても利息分しか返せず、派遣の仕事が終わると飲食店で皿洗いをし、極貧生活を続けています。時には親父を殺したと暴力を振るわれることもあります。まさに生き地獄状態です。

 ジアンは借金返済のために、社長のト・ジュニョンに協力し、社長と敵対する派閥の常務を陥れたり、ドンフン のスマホにアプリを入れ、ずっと盗聴しつづけます。それとは知らないドンフンはジアンに優しく接し、彼女の境遇を知って、彼女をなんとか助けようと動きはじめます。21歳のジアンは「おじさん」であるドンフンの優しさに癒され、どんどん惹かれていきます。ですが、途中で妻の浮気を知っても、ジアンに想いを告げられても、ドンフン は決してジアンと恋愛関係になろうとはせず、励ましのハグすらきっぱり拒否します。

どんなに優しい人間でも誰かを傷つけながら生きている

 ドンフン はあくまで正しい道しか歩けない人間です。ドラマではキーパーソンの一人として、ドンフン の同級生でいつも一番の秀才だったのに、親も恋人も捨て、出家して僧侶になったギョムドクという人物が出てきます。ギョムドクは「俺が出家したのは、おまえ(ドンフン )を見ていて、自分も世間にいたらそうなると思ったからだ」というようなことを言うのですが、物語が進むにつれ、その意味がとてもよくわかります。

 ギョムドクは自分に期待していた親や、彼を熱愛していた恋人を捨てて、心の平安を得たわけですが、恋人はひどく傷つき、20年たっても彼に戻って欲しいと思い続けています。ドンフン は虫も殺せないほど優しい人間で、誰にでも優しく、誠意を尽くすのですが、妻は自分を一番に考えてくれない夫を恨み、ずっと寂しい思いを抱え、孤独を深めていきます。ドンフン はジアンに出会って「生き方を間違えた」ことに気づくのですが、その優しさがジアンを救ったわけで、結局、人はどんな生き方を選んでも、誰かを傷つけて生きるしかないのだと、ドラマは語っているように思えました。

一番大切なものを捨てることで、人生が拓けることもある

 ドンフンと兄のサンフン 、弟のギフンの三兄弟やその家族が住んでいるのは、後渓(フゲ) というソウルの架空の町です。三人は町のサッカークラブに入っており、町中が知り合いで、毎日のように幼馴染の経営する酒場に集い、助け合って生きています。その温かい町の雰囲気が暗いドラマの救いになっています。そのサッカークラブのメンバーの一人が、「この町で大企業に勤めているのはおまえだけだ。だから決して辞めるな」とドンフンに言ったセリフが印象的でした。 

 色々な経緯を経て、ジアンの協力もあって常務に昇進したドンフンですが、最終回では、ジアンが陽の当たる道を歩めるように、常務の地位を捨てて彼女を助ける道を選びます。最終回では彼を慕っていた部下たちを連れて会社を立ち上げ、社長として生き生きと仕事をするドンフン の姿が登場します。常務昇進時には町中にお祝いしてもらったドンフン ですが、役員と会社という大きなものを手放すことで、彼は本当の生きることができるようになったのです。

 このドラマは途中まで、この二人が幸せになる道があるとは思えないくらい、設定が重くて、つらいシーンの連続です。ドンフン が妻のユニを離婚すれば、アメリカに留学中の息子はひどく傷つくでしょう。かといって、自分を左遷し、いじめ抜いた社長のト・ジュニョンと浮気したユニを許すのも容易ではありません。いくら優しい人間でも、男としてのプライドがあります。

 ジアンにしても、21歳で中卒で、正当防衛が認められて無罪になったとはいえ殺人犯なのですから、それを知ったとたん、人は離れていってしまいます。彼女はそれを何度も経験しているから、心を閉ざして人に打ち解けなかったのです。

シャガイ でもマイナスとマイナスの掛け合わせは大吉になる

 ですが、「世界一不幸な中年男」と「世界一不幸な若い女性」が出会い、お互いにその苦しさが理解し合えるからこそ、助け合い、癒しあい、気付いたら深海から浜辺に打ち上げられていたような奇跡がラストで訪れます。最終回は本当に美しいシーンと名セリフの連続で、終わってもその余韻にずっと浸っていたいとすら思いました。

 マイナスの人間とマイナスの人間の出会いが大きくプラスに転じるというのは、私がやっているモンゴルのシャガイ と同じで、とても興味深いと思いました。

 シャガイ はモンゴル人が飼っている馬、駱駝、羊、山羊のくるぶしの骨を4個使って占います。モンゴル人は遊牧民ですから、一番大切なのは馬、次が羊で、普通は駱駝と山羊がでるとあまりよくありません。ところが、駱駝2、山羊2の場合は「難なし、良好」なのです。 数学でもマイナス✖️マイナスはプラスですよね。

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 昨年末にひとつの出会いが人生を変えることがあるという記事を書きました。「マイ・ディア・ミスター 」はまさにそういう物語です。

 私も占い師として、そんな一人になりたいと日々思いながら、今日も鑑定をしています。

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