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トゥルーマン・ショー

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

1998年のアメリカ映画。小さな島で平凡ながら平和に暮らす保険のセールスマン、トゥルーマン。理想的な環境でしあわせな日々を送る彼だが、実は広大なセットの中、彼の人生は誕生時からずっと24時間生放送されており、世界中の人々が観ているTV番組だった――。喜劇でありながらフィクションとノンフィクションの在り方を問いかけてくる、深いヒューマン・コメディ作品です。原題 "The Truman Show"。

出演は、主人公「トゥルーマン・バーバンク」に『マスク』、『エターナル・サンシャイン』、『イエスマン “YES”は人生のパスワード』、『フィリップ、きみを愛してる!』のジム・キャリー

共演に、『ライトスタッフ』、『アビス』のエド・ハリス、『真実の行方』、『ラブ・アクチュアリー』のローラ・リニー、『ウォルト・ディズニーの約束』のポール・ジアマッティ、ノア・エメリッヒ、ナターシャ・マケルホーン、ホーランド・テイラー、ほか。

監督は、『いまを生きる』、『グリーン・カード』のピーター・ウィアー。脚本は、『ガタカ/GATTACA』のアンドリュー・ニコル

物語の設定が面白い!

アメリカの小さな離島「シーヘヴン」。本作の主人公トゥルーマン(ジム・キャリー)は、この街で生まれ、この街で育ちました。大人になり結婚した今も、一度も島の外へ出たことがありません。

いつも清潔で、整っていて、可愛らしい街。居心地が良さそうです。

・・・

美しい妻メリル(ローラ・リニー)とは、学生時代に知り合い、結婚。小綺麗な住宅街にあるマイホームで仲良く暮らしています。

現在は看護師として働く妻メリル。
ときどき会話中に、あらぬ方向に向かってCMのような口調で喋るけどね!笑

・・・

友達のマーロン(ノア・エメリッヒ)とは、子どもの頃からの幼なじみ。

いつも冷えた缶ビールを持って訪ねて来ては、トゥルーマンの胸の内をどんなことでも聴いてくれる、頼もしい親友です。

・・・

感じの良い気さくな隣人、親切な同僚、妻と実家の母との嫁姑関係も円満、あとは妻や母が待ち望んでいる子どもを儲ければ、しあわせな人生の新しいチャプターへ――と、順風満帆そうなトゥルーマンの人生。

ですが、実は生まれた瞬間から、彼のすべての行動がリアリティ番組トゥルーマン・ショー』として世界中に24時間ライブ放送されている虚構の世界なのです。

TV画面に釘づけでトゥルーマンの一挙手一投足を見守る、世界中のファン。

トゥルーマンが住む世界は、街も、海岸も、広大なセットの中に本物のように作られた大規模な “リアリティ”。いたる所に5000台もの隠しカメラが仕込まれており、24時間、彼の表情を逃しません。

自宅の洗面所の鏡や……
車のインパネにも……

彼が自分の家族・友人・同僚だと思っている人々は、すべて、その役を演じている役者であり、街ゆく人々も全員がエキストラ。真実を知らないのは当のトゥルーマン本人のみ――という、ちょっと皮肉な設定です。

本作の前半は、真実を知らないまま日々を送る素直なトゥルーマンと、彼に疑念を抱かせないよう四苦八苦する番組スタッフや出演者の様子を面白おかしく描いており、そこがコメディ作品としての見どころのひとつでもあります。

・・・

それにしても、“本人だけが知らないけれどその人の人生に起こることすべてを世界中の人がTV番組として楽しんでいる” という本作の設定が出色だと思います。面白い発想ですよね!

登場人物の胸に付いているバッジに
"HOW'S IT GOING TO END?"
の文字。和訳すると「この先の運命や、いかに!?」みたいな感じでしょうか。

脚本を書いたのは、ニュージーランド出身の映画監督、アンドリュー・ニコル。SF作品『ガタカ/GATTACA』でも監督・脚本を務めています。

『ガタカ』、わたし大好きなんですよね。(名作! おすすめです♩)

アンドリュー・ニコル氏って才能のある方なんだなぁ、と、あらためて。ちょっと作品群を追ってみたくなります。

アンドリュー・ニコル フィルモグラフィ
ガタカ(1997)
 監督/脚本
トゥルーマン・ショー(1998)
 製作/脚本
シモーヌ(2002)
 監督/製作/脚本
ターミナル(2004)
 原案/製作総指揮
ロード・オブ・ウォー(2005)
 監督/脚本/製作
TIME/タイム(2011)
 監督/製作/脚本
ザ・ホスト 美しき侵略者(2013)
 監督/脚本
ドローン・オブ・ウォー(2015)
 監督/製作/脚本
ANON アノン(2018)
 監督/製作/脚本

様々なことを問いかけてくる作品

本作の中盤、トゥルーマンの学生時代に起きた、ある人物との出逢いが描かれます。

ローレンという名の美しい女子学生(ナターシャ・マケルホーン)

彼女への恋心をきっかけに、トゥルーマンは自分の置かれた環境について
「何かが不自然だ……」
と感じ始め――ここからの展開がまた面白いのですが、

そもそも、赤ちゃんの頃から24時間成長を追うなんて可能なの?

その赤ちゃんはどこから連れてきたの? 本当の両親は?

島から一歩も出たことがないなんて、有り得るの?

周囲の役者たちは、ぶっつけ本番でどうやって演じているの?

こういった設定上の疑問は、作中でしっかり説明されています。なるほどなぁ、という感じ。

・・・

でも、本作を観ている中で観客が最も強く感じる疑問は

本人の同意もなしに、こんな見世物のような番組を放送するなんて倫理上どうなの

という点だと思うんですよね。

それこそが、脚本のアンドリュー・ニコル氏が表現したかった、最初の “引っ掛かり” ではないでしょうか。

番組プロデューサーのクリストフ(エド・ハリス)。

番組プロデューサーのクリストフは、作中でこんなことを言います。

ありきたりなセリフ、ありきたりな演出、ありきたりな芝居――そんなものには飽き飽きだ。リアリティこそが視聴者を惹きつけ、夢中にさせる。共感や喜怒哀楽を生む。

(※もりはるひによる要約)

何も知らされずにセットの世界で生きるトゥルーマンのリアクションこそ、作られた演技ではない彼自身の中から沸き起こった “リアル” であり、本物の “ノンフィクション” だ、と。

世界中の人々に愛される、視聴者の心を動かす番組を――というクリエイターとしての探求を突き詰めた結果、『トゥルーマン・ショー』という形の番組が生まれたことを物語っています。

「マッド・サイエンティスト」なんて言葉があるように、学問や芸術などの分野において、その極みへ到達したいあまりどんどん常軌を逸してしまう者の姿は、昔からしばしば映画・小説・漫画などで描かれてきました。

そういう見方をすれば、このクリストフという人物は、さしずめ「マッド・TVマン」と呼べるかもしれません。

でも、その一方で、モニターに映し出されたトゥルーマンの寝顔を、深夜のコントロールルームでそっと撫でるクリストフの様子も、紛れもない彼の一面だったりして――人物の深みを表した良い描写だなぁ、と感じます。

・・・

それから、トゥルーマンの住む世界では、住人たちの言動はもちろんのこと、雨や風などの天候、海の時化しけや凪、日の出や日の入りまでも、すべてがクリストフのキューひとつで制御可能。

局地的な大雨。笑

コントロールの権限を持ち、すべてを意のままに操ることが出来るクリストフは、いわばこの世界の的な存在とも言えます。

トゥルーマンの人生に高い場所から介入し、岐路や選択、すなわち「運命」を方向づけてしまうことが出来る。そういった意味でも、まさに「神」のメタファー的な存在であるようにわたしには見えました。

・・・

対して、トゥルーマンの姿を通して、人間としての尊厳、自分の「意思」で人生を選ぶこと――など、「あなたはどう思う?」と問いかけられているような気持ちになりました。

うーん深い

初見。ハートがあったまる系のコメディーかと思いきや、わりと考えさせられる映画でした。

(鑑賞時の感想ツイートより)

おまけ♩

最後に恒例(?笑)おまけの小ネタを。

プロデューサーの下で番組を取り仕切るディレクター役に、ポール・ジアマッティという俳優さんが出ています。

『ウォルト・ディズニーの約束』では、お抱え運転手「ラルフ」役が印象的でした。好き♩

・・・

それでは今回の記事は、こちらの挨拶でお別れを!

Good morning,
and in case I don't see ya,
good afternoon, good evening,
and good night!


おはよう!
あと、会えない時のために、
こんにちは! こんばんは!
そして、おやすみなさい!


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