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滋賀酒蔵探訪①北島酒造さんで酛すり体験

すっかり遅くなってしまいましたが、先月の滋賀酒蔵探訪のレポートです!!

先月、主人の用事に同伴して京都へ行ったのですが、せっかく京都まで行くのだからと、私だけもう一泊して滋賀を巡ったのです。
(嫁が自由すぎる…という点はツッコまないでください。笑)

滋賀に行くのは3年ぶり。
前回は京都・鞍馬口の若水さんのご紹介でマキノにある吉田酒造さんを訪問し、味わい深い日本酒の美味しさと、琵琶湖のあまりの美しさ。そして、その特有の地域環境から生まれた食や酒、文化が興味深く、すっかり滋賀のファンになってしまいました。

また行きたいな〜と思っていたところ、昨年夏の京丹後の日本酒イベントで滋賀の日本酒のドンに出会い、今回はそのドン(と、そのお弟子さん?)にご案内いただけることになり、3年ぶりの訪問となったのです!!
全国に頼れる友がいるのは、私にとって大きな財産です。ありがたや…。

↓白杉酒造の敏腕営業マン岸田さん(ダーキシさん)と、滋賀の日本酒のドン前田さん。天橋立のイベントでパチリ。

とうことで、午前中は湖南市にある北島酒造さんへ。
念願の酛すり体験に伺いました!!
北島酒造さんは生酛造りに力を入れられており、仕込みの時期に一般の方でも酛すり体験ができるイベントをされているのです。
(とは言え蓋を開けてみたら、飲食業関係の方や酒米農家さんなど、8割型プロの方でした。笑)

酛すりとは、生酛タイプの酒母を仕込む際に行われる作業で、半切り桶という桶に蒸米、麹、水を入れ、それを櫂棒ですりつぶしていくことを指します。
酒母とは、まさに日本酒を造る際の発酵のスターターで、アルコール発酵に必要な酵母を大量に培養するために必要な存在です。

↓現在は木桶は少なく、プラスチック製が多いみたいですね。

日本酒は三段仕込みといって、3回に分けて蒸米・麹・水を加えて仕込みますが、その前段階で酒母を造り、そこに材料を加えていくことで、しっかりとアルコール発酵が始まるのです。

そして、生酛造りで肝心なのは、酒母を造る際に酵母が健全に増殖するために、酒母の状態を酸性にすることです。
空気中には沢山の菌がいますし、蒸米や米や水にも様々な菌が付着しています。もちろん、米や麹に触れる人間の手には無数の常在菌が棲み付いています。
そんな菌たちが増殖してしまうと、酵母は繁殖することができません。

しかし、酵母にはある大きな特徴があります。
それは酸性状態に強いこと

多くの雑菌は酸性状態で生きることができませんが、酵母は酸に強いため、酒母の状態を酸性にすれば、他の雑菌は死滅し、酵母だけが繁殖することができるのです。

そこで利用されるのが、乳酸菌
乳酸菌とは、糖を食べて乳酸を作る細菌の総称で、酒母の中においては、麹の酵素がデンプンを分解することによりできたブドウ糖を食べて、乳酸を出してくれます。その乳酸のおかげで、酒母の状態は酸性になるのです。

なお、現在は天然の乳酸菌を利用するのではなく、精製された純粋な「乳酸」を利用して酒母を仕込む「速醸」という製法が主流となっており、手間も時間もかかり、おまけに雑菌汚染のリスクの高い生酛仕込みを行う酒蔵は減少傾向にあります。
(ちなみに、生酛は酒母が出来上がるのに約4週間かかりますが、速醸だとたったの2週間で完成します。)
しかし、逆に手間も時間もかかる生酛造りを今でも行っているということは、生酛にしか出せない味があるということですね。

…と、もちろんここまでは勉強してきたことなのですが、やはり百聞は一見にしかず!!初めて酛すりを体験し、目から鱗なことばかりでした。

まず、酛すり前の酒母。

私、もっと水が多いと思ってたんです。
こんなに少ないものなのか…!
なるほど、これをすり潰していくのは大変だ。

北島社長曰く、生酛の方が山廃よりも水が少ないそうで、「生酛は米をすり潰すことによって糖化を促す。山廃は水の流動性によって糖化を促す。」のだそうです。

ちなみに山廃とは、生酛と同じく天然の乳酸菌で仕込む酒母の製法なのですが、決定的に違うのは、酛すりを行わないという点です。
私のこれまでの経験だと、山廃はまろ〜んとしていて味わい深く、生酛はキレのある印象があります。また、軟水は山廃向き、硬水は生酛向きというイメージです。(個人的な見解で、根拠があるわけではありません。)

生酛は力強い旨味がありつつ、スパッと切れる後味が持ち味であるということは、かの有名な上原浩先生(「酒は純米、燗ならなおよし」の名言の方)も仰っていました。

ということで、私も酛すりを体験してみました!

酛すりは基本2人体制。両方面から、満遍なく米を潰していきます。

最初の潰し始めが一番大変で、かなり力が必要です。
だんだんと米が潰れてくると、柔らかくなっていきます。
ポイントは、腰を入れること。腕に力を入れるのではなく、腰を入れて体重をかけるようにしないと、かなり疲れます。

日頃運動不足なくせに、こういう時に力自慢をしたくなる私。
積極的に参加した結果、案の定翌日筋肉痛になりました。笑

ちなみに、だいたい桶1個あたりの作業時間は7〜8分程度でしょうか。
北島さんはまだ優しい方で、とある近隣の体育系の酒蔵さんでは、この倍量ほど一気に仕込むそうで、体がバキバキになるそうです。
一個あたりの酛すりの量によって、企業としてのブラック・ホワイトが計れるとは…、新しい発見です。笑

今回はあくまで「体験」という形だったので、1時間もしないうちに終わりましたが、実際の蔵人さんは何時間もこの作業を行っているのかと考えると、頭が上がりません…。

さてさて、酛すり後は蔵見学です。
社長直々にご案内いただきました!!

浸漬後のお米を見て興奮する参加者たち。
…よく思うのですが、こんなにお米を愛でるのって、日本酒好き特有の行動なのではないでしょうか。。
ストレートにお米が好きの人も、もちろんある程度興奮すると思うのですが、日本酒好きは「このお米が!あのお酒になるのか!」という、想像力が膨らむ点から、並ならぬ"米愛"(米LOVE)が生まれるのではないかと。

こちら初めて見たのですが、お米の脱水機なのだそうです。

北島酒造さんではお米を限定給水させた後に脱水機にかけるらしく、「脱水機にかけると糠がうまく抜ける」のだそうです。
ただ、お米が割れてしまうリスクもあるため、やはり一長一短なのですね。
要は、「何を重視するか」に尽きます。

つまり、完璧なお酒って存在しないんですよね…。

ということで、最後に試飲をした後は、北島社長(イケメン)を囲んでパチリ。試飲の写真は撮りそびれてしまったのですが、どれも本当に美味しく…、食事に合わせて飲んでみたい味わいでした。

北島酒造さんは熟成にも力を入れられていて、特に滋賀渡船の熟成は絶品でした。
いつか料理教室でも…と思うのですが、東京にはあまり出回っておらず。
どこかでご紹介する機会を作りたいと思います!!
私が酛すりした酒母は、そろそろ醪になっている頃かしら。

限られた時間だったので北島社長とはあまりお話できなかったのですが、穏やかなお人柄で、とても素敵な方でした。
なんというか、とても安定感のある酒蔵さんであるように感じました。

北島さん、そして滋賀のドン!!貴重な機会をありがとうございました!!

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