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ディナモ・ザグレブのシーズン後半戦を前にして

クロアチアの名門 ディナモ・ザグレブで奮闘を続ける、金子拓郎選手に話を聞かせて貰った。

インタビュー記事は是非、1月11日にローンチした新サッカーメディア、1mmで確認して欲しい。
全3部構成となっている。

金子拓郎を始めて、見た時の衝撃は忘れられない。独特のテンポと間合いで相手をきりきり舞に引き裂くドリブル、大学レベルを超越した左足を見ると胸が躍ったものだ。

当時は大学3部リーグ相当に所属する選手だったが、この選手は必ずや上のステージにいく選手。追って、北海道コンサドーレ札幌への入団が発表されたが、その後の大学でのプレーとその人柄に触れる度に、その感情は強まるばかりだった。

札幌入団後の彼の歩みを振り返ると、多くの人に愛される選手になるべくしてなったと感じる。

「気持ちを見せて戦う姿は自分のストロングだと思っている」と語る通り、感情を向き出しにピッチで戦う姿は見るものの心を打つ。

時にそのコントロールの矢印が誤った方向に行くこともあったかもしれないが、自分はこういった熱い選手が好きだ。金子は札幌でのキャリアをこう懐古する。

「悔しい思いばかりを沢山味わいました。リーグ戦でも毎試合、本当に悔しい思いをして来ましたし、もっともっと札幌サポーターに勝利を届けたかったです。」

大学在学中に特別指定選手として、プロデビューも果たした2019年。チームが決勝進出を果たしたルヴァンカップでは、プロ初ゴールの湘南ベルマーレ戦を皮切りにプレーオフ、準々決勝、準決勝と出場を重ねるなど、現役大学生としては充分過ぎる活躍を見せた。だが、金子はここまでのプロキャリアにおいて、最も悔しさを感じた瞬間の一つとして、メンバー外になったルヴァンカップの決勝を挙げる。

「(2021年のルヴァンカップでの敗戦の他に)悔しい試合を挙げるとしたら、2019年のルヴァンカップの決勝です。俺は特別指定でしたけど、準決勝までコンスタントに出させてもらってたんですけど、決勝はメンバー外になっちゃって。。。貢献とまではいないですけど、準決勝まで一応試合に出させてもらってたんで。ベンチでもいいから入りてえと思っていたら外れちゃいました。あれはマジで悔しかったです。」

スタンドで味わった喪失感。次はタイトルが懸かった大舞台で自分が活躍し掴み取る。

そんな強い決意の下、戦い続けた3年半だった。

とにかくレギュラー奪取を目指した1年目。
コロナ禍において、イレギュラーな出来事が多発したが、ペトロヴィッチ監督の信頼を勝ち取り、シーズンの途中からスタメンに定着した。そうなると、チームを勝たせる事への責任感が強くなって来た。

プロ生活2年目の2021年は本人が「自分で言うのもあれですけど止められなかった」と語る通り、ドリブル成功数はリーグでダントツの1位、Jリーグ優秀選手賞も受賞した。

リーグを代表するドリブラーに成長した金子に対する、相手の警戒は高まり、2人のDFが金子をマークすることが日常に。怪我も相まって苦しむ時間も多かったが、プレーの幅が広がった。

注目は当然、他クラブからも高まった。移籍ウィンドーが開く度に彼の元にはビッグオファーが届いたが、「札幌で活躍して直接、海外に行くっていう気持ちしかなかった」と国内移籍には目をくれなかった。

そんな男に、2023年夏、念願の欧州移籍のチャンスが巡ってきた。それは同時に〝あの時の想い〟を札幌で叶えることができないことも意味した。

だが、彼の最大の夢でもある 日本代表入りに向けて、足踏みする時間はなかった。

様々な思いを背負って渡欧したクロアチアでは、サポーターのトラブルによる試合の延期、監督交代、メンバー外の日々‥未知なる体験の連続。

一時期は、焦りと苛立ちで自信を失い掛けそうにもなった。大学時代、都リーグに所属していた時でも、俺は上でやれるという謎にあった自信が揺らぎかけた。

だが、諦めずにもがき続けた男は、巡ってきた、一度のチャンスを物にし、立場を激変させた。

やっぱり俺はできる。這い上がった2023年の下半期だ。紅白戦のメンバーにも入れない状態から、スタメンの座を勝ち取り、年末の中断期間に突入した。

だが、本当の勝負はここからだ。直近18年のうち、17度のリーグ優勝を記録する、ディナモ・ザグレブにおいてタイトル獲得は至上命題と言えるが、ここまで消化試合が2試合少ないながら、ライバルの首位・ハイドゥクとの勝点差は7。ディナモは後半戦、勝ち続ける必要がある。

「今試合に出れるようになって、札幌の1年目から2年目みたいな感じですけど。試合に出れるようになったからには、 チームを勝たせなきゃいけないっていう責任がすごく大きくなってきてるので。自分がディナモを優勝に導けるような選手になっていかなきゃいけないと思っています。」

今まで感じたことのない、対峙する相手から殺気を感じるピッチが楽しいと語る金子。

そんなフィールドでなんとか、札幌で味わうことの出来なかった、タイトルを味わって欲しいし、その原動力となって貰いたい。

また、リーグ戦と共に、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグでも戦うディナモ・ザグレブ。(直近の対戦相手はスペインのベティス)
今を戦い続けた先に、目標に至るチャンスはきっと巡ってくる。

インタビュー中、金子はこう問うてきた。
「俺は札幌の生え抜きってことでいいんですよね?笑」

私は思わず即答した。

「金子拓郎は札幌の生え抜き選手です」

コンサドーレは北海道とともに世界へ というスローガンを掲げる。

彼は「コンサドーレを背負う」というのはっていうのもおこがましいですけど、ヨーロッパでも“札幌の力”を見せつけたいという気持ちは強いです。」

そう語っているが、彼が背負う必要など全く無い。ただただ、己の目標を、高みを目指して欲しい。

その後ろには、彼の活躍に対し、 ともに世界 へと馳せる多くの思いが自然と寄り添っている。

皆様の日本からの声は彼にしっかりと届いている。そして、喜んでくれている。

観戦のハードルは高いが、是非是非今後もこれまで以上に注目して貰いたい。

日本時間で1月24日の午前1時にクロアチアリーグは再開する。

余談だが、移籍後も札幌の試合をフルでチェックしているという、金子に新シーズンの札幌で、期待する選手(新加入選手を除く)を問うと、3人の名前が挙がってきたので最後に紹介させて貰う。

①西野奨太
「西野はもっと頑張んなきゃっすね。やっぱりいいものはめちゃくちゃ持ってると思うんで。それをいかに練習から出していくか?18でしたっけ、今?18であれだけできてるってのはかなり、すごいと思うんです。自分が18の時なんて高校サッカーですらもうガリガリで何もできなかったですからね。

ポテンシャルっていうのが絶対あるんだと思うんで。筋トレは駒井先生に教わって貰いつつ、海外の選手って10代でももっとガンガンにやってるんで。やっぱ海外って年齢関係ないじゃないですか。敬語とかもないし。だから、そういう、年の差関係なくガンガンやってほしいですね。西野には。」

②田中宏武
「宏武は飯とか行ったりで仲良かったですし、同じポジションのウィングバックとして頑張って欲しい。俺もルーカスもいなくなったんで、やっぱり2024年が彼にとって勝負だと思うんで。ヒロムもポテンシャルってのはすごいあると思いますし、あとはそれをいかに試合と練習から出せるかっていうとこだと思うんで。期待してます。」

③馬場晴也
「晴也はオリンピックもあるし。ぜひ札幌から代表として出てもらわないと。俺らの代は東京オリンピックに出場できず、全滅したんで。だから晴也にはコンサドーレ所属として、オリンピックに出てもらいたいですね。この前のアジア大会もよかったみたいですし、チャンスは絶対にあると思うので掴んで欲しい。」

各々にとって、素晴らしい2024年になりますように。

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