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「2年」かかったけれど②

怒涛の1年目

大学2年次のチーム

 今でも最も尊敬する人の1人、りょうたさんがキャプテンになった。
 「この人を勝たせたい」。そう思わせるような人だった。4年間で一番良いチームだった。
 先輩は引退したし、去年の新人戦ではそこそこアピールをした。この年はチームのシステムが少し変わり、S、A1、A2、Bの4チームから構成された。Sは12人、A1、A2は3人ずつ、残りのメンバーはBチーム。A1、A2が日替わりでAの練習とBの練習に交互に参加していた。
 僕はSだった。

全関西・西日本・慶関

 大学バスケの大勝負はインカレとその切符をかけた秋のリーグ戦だ。公式戦は他にもあって5月に全関西のトーナメント、6月には西日本のトーナメントがある。
 全関西は完全に不出場、西日本はほんの少しだけ出た。先輩、同期とのポジション被り、後輩の台頭もあり仕方のないことだった。俺よりデカく強く上手い人がいたから。ただ、俺より声を出せる人はいなかった。俺より頑張ってる感の強いやつも。
 そして、一つターニングポイントとなった試合に「慶関戦」があった。慶應義塾大学との定期戦だ。2日間、1日1試合するこの催し、僕はなぜか10分くらい出た。そして今回は成果を残した。
 人生で初めて狙って3Pを決めた。
 シュートは苦手じゃない。ただ、プレーエリア的にミドルシュートが多く、3Pはブザービーターで決めたことがある程度だった。しかし、中学でも高校でもブザービーターの3Pを外したことはなかった。たぶん6/6。
 「大学でバスケをするなら絶対必要になる」と思い、入学してから少しずつ練習を重ね、特にオフシーズンの1月にはかなり練習した。いつか使える日を信じて。その日は思ったより早くきた。
 フリーでボールをもらった時に初めて時間に関係なく3Pを打った。プレー中は感情を出したいタイプなので、思いっきりガッツポーズをした。その直後に、トカチョフ・サワさんにえげつないシールをされた。
 でもその経験は後々、最高のタイミングで俺に力をくれた。

2年目の夏の遠征

 この年も遠征ではAチームとして参加した。今回は1週間ほどと長かった。最初の5日はあまり何もしていない。去年と同じ。でも、最後の2日は違った。
 遠征中はAの中での「ローテーションメンバー(出場時間の多いメンバー)」とそれ以外のメンバーで試合が組まれることが多い。
 6日目、俺はそれ以外のメンバー同士の試合に出場した。できることは走る、リバウンドに飛び込む。ディフェンスは苦手なのがバレないようにとにかく手を挙げて動いてるフリをして声を出して、圧だけかける。オフェンスはチャンスがあればシュートを打つ、それ以外は味方を活かす。
 「できることで戦う」それにこだわれるのがその時の武器だった。エゴを通さず、チームのためのことを考えていた。しかし、僕はこの日フリースローを2本もらって2本とも外した。珍しいことではないが、自分の中ですごく引っかかった。
 その日の帰り道、コーチは言った。
「お前はどんなときも腐らずに全力でやるのがほんまにええとこやな。」
「遅い遅い!ここまで1年半何があっても誰より一生懸命にやっとったやろ。猿でもわかりますよ!」
と言い返したかったが、「当たり前です」と言っておいた。もう20歳だったから。
 次の日、俺はローテーションメンバーとして試合に出た。

一生忘れないフリースロー

 その日もいつもと同じように試合が行われた。第4ピリオドが始まった頃には20点くらい離されており、敗戦濃厚だった。いつもと変わらず俺はベンチから声を出していた。
「ハルク」
 コーチが呼ぶ。出番だ。
「出番ンンンンン!!!!????この人らが20点負ける相手に何ができるんすか俺〜!」
と言いたい気持ちを抑え、コートに立つ。
 とにかく今できることを。走る、ルーズボール飛び込む、リバウンドもぎとる、ディフェンス声出す、カバー出まくる、とにかく足動かす、バカみたいに声出す。ほんでほんで…やれることは全部やった。そしたら良いこともあるもんで、20点差がいつの間にか7点くらいに縮まってた。その間に俺はフリースローを6本連続で決めた
 結局差は詰められず敗戦で終わったが、試合後のミーティングでりょうたさんが言った。
 「昨日ハルクはフリースローを2本外したけど、今日は6本打って全部決めたよね。そうやって昨日より今日って成長していこう。特に遠征なんてそうそうない機会なんだから」
俺はこの人に一生ついていこうと思った。前日宿で「せっかく試合出れたのにフリースロー2本外してう○こ野郎」と言われた気もしたが、全て水に流した。

この試合が本当の意味での始まりだった。

サポートしていただいたお金は、全てコートの利用費、プロテインやサプリメントの購入などプロバスケ選手になるための費用に使わせていただきます。よろしくお願いします。