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改訂版 「好きな言葉」

カーテンコール。

終演とともに、薄衣1枚だけ役をまとって出演者が板の上に再び出てくる。演者とわたしたち観客の心が触れ合う、わずかなひととき。わたしにとって至福のとき。

「生きてゆかれてください」

あるミュージカル俳優が好んでカーテンコールで使う、この言葉が好きだ。

彼女がこんな風に言い始めたのは、コロナ禍になってから。公演中止に「不要不急」のレッテル。舞台に生きる俳優にとって、思うところはたくさんあったはず。自分のことで精一杯だったはず。なのに、まなざしは真っ先に観客に向けられた。

「生きてゆかれてください」

謝意と祈りがそっと、わたしのもとに届く。
舞台との出会い、役者と観客の出会いは一期一会。
どうか、今日この場で自分からエネルギーを受け取った皆さんがこの先も健康でありますように。
願わくば、またどこかでお会いできますように。

最高の時間をありがとう。感謝したいのはこちらの方だ。すぐ近くにいるのに、マスクがお返しの笑顔を遠ざける。

仕方ない。全力で、ありったけの拍手を返すことにしよう。


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