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憧れの舞台、見ていた景色。

将来の夢が「うさぎ」か「看護婦さん」だった幼稚園児の頃。

私にとって特別に見える場所があった。それは近所のアパートの敷地内にある、白いマンホール。

黒い鉄の大きなマンホールではなくて、白いコンクリートで出来た小さいマンホール。周りのアスファルトがそのマンホールに向かって盛り上がっていて、白いマンホールの位置は他の地面よりほんの少しだけ高くなっている。

何故かその頃の私にとって、そのマンホールは『せり上がったステージ』に見えていた。

白いマンホールの真ん中に立つや、周りの照明が落ちて(注・屋外です)スポットライトを浴びてしまう…!と本気で思っていた。
そこに立って、マイクを握ってお客さんに向けて歌を披露する自分を想像して、ドキドキしていた。

右足だけ乗せてみようかな、いやでも、その瞬間にジャジャーンと音楽が鳴ってショーが始まってしまうかも!どうしよう!!と、1人でマンホールの周囲でもじもじしていた。

私の記憶の中では、とうとうそのマンホールの上に立つことは無かった…だったのだけど、マンホールの上で、何も持たない右手をマイクを持っているかのように握りしめ歌っている写真がアルバムに収まっている。
我慢出来ずに、乗ったんだろうな。

あの頃は、将来は歌を歌う人になりたいと思ってなかった。
どうしてあれがステージに見えたのか、そしてそこで何故、歌手になりたいわけではないのに「歌った」のか。
いま、音楽と歌という表現方法を選んだ自分からすると、そこに何か理由を見つけて繋げたくなる。

いつの間にか、白いマンホールがステージに見えることは無くなったけど、今でもそのマンホールを見るとあの頃のドキドキが蘇る。

白いマンホールから見えていた景色は、私にとっていつまでも憧れの舞台。
あの頃イメージした、あの高揚するステージの上で自信を持って歌えるようにならなくちゃなと思う。

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