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並行世界より 自閉症者の手紙

並行世界より 自閉症者の手紙

その少年は自閉症として生まれた。

でもその頃はまだ診断がついておらず、

その少年は自分は人と違っているという孤独の中で生きてきた。

人と同じ形でありながら、根底にある価値観が全く異なっているという恐怖。

まるで並行世界に迷い込んでしまったようだった。

彼は必死に地球に適応しようと努力していた。

でもそれは全て無意味だった。

言葉は理解できるのに、彼らの意図はよく分からない。

でも周りの地球人達は、心の底から会話を楽しんでいることがわかる

でも、なんなんだろう。

仲間外れにされているわけではないのに、皆会話してくれるのに、

少年は怖くてたまらない。

円の中にはいるのに、円の中にはいない感覚。

やっぱり僕は異星人なんだ。並行世界の人間なんだ。

そう思うことで、自分を守っていた。

でも、心の奥では、いつか皆と心の底から笑えることを期待していた。

それは訪れる事はなかった。

成長するにつれ、僕は普通じゃないんだと肌感覚が強くなっていった。

期待と現実が相反していく。

少年の心は崩れてしまう。いやずっと前から壊れていたのだ。

それが成長して気づいてしまっただけで。

どうやらこの地球には心を解読してくれる病院があるらしい。

自分とは正反対の性質を持つ病院に強く惹かれ、少年は向かった。

その結果、少年には名前がついた。

自閉症スペクトラム。

少年は、歓喜のあまり、涙を流した。

普通ではないと証明してくれたのが、嬉しかったからだ。

異星人でも良いのだ

辛くても、孤独でも。

少年は異星人である自分を受け入れられるようになった。

道は未だ真っ黒のまま。

でも、僕はここで生きるのだと。

そう心に誓い、

今も地球のどこかで生きている。

並行世界の自閉症者より


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