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僕は異星人です。そして自閉症です。



自閉症の動物学者、テンプルグランディンは、自分を火星の人類学者だと形容した。

遠くから人間を観察し、地球に適応しようとする自閉症者の思考を端的に表した言葉だ。

この人。高機能自閉症です。


この言葉を聞いた時、自分は心の底から歓喜して、共感したことを今でも覚えている。

自分はずっと正体不明の違和感と闘ってきた。
言葉や、思考、価値観や文化が目の前の人と一切交錯しないような恐怖。

自分だけが異世界に迷い込んでしまったかのような、そんな恐怖だ。

映画のきさらぎ駅や、千と千尋の神隠しの主人公の気持ちを想像してもらえれば、自閉症ではない人も想像しやすいのではないか。

怖かった。怖くてたまらなかったんだ。

皆が使っている言葉が、よく分からない。話し言葉では理解しにくい。日本語なのに、英語を聞いてるかのような違和感。

何で皆は笑っているの?
何で皆は泣いているの?
何で皆は怒っているの?

わからない。わからない。わからない。

僕の目に映るのは、表情が変化しているという事実だけ。その変化に伴った感情が、一切伝播してこないんだ。

上記のテンプルグランディンは、複雑な人間の思考は「お手上げ」だと言った。

何も知らない。皆が知っていることを、僕は何も知らない。皆が当たり前にやっている行動規範を、僕は知ることが出来ない。

流行、上下関係、性別や礼儀など。

皆はどこでそれを覚えてくるの?
どうやったら身につけられるの?

教えて欲しかった。何で僕は、そんな当たり前のことが出来ないのか。

真似しなきゃ、僕は人間になれない。
人間になりたい。ちゃんとした人間にならなきゃなんて思われるか分からない。

だから適応した。人間の真似をした。人間のふりをしたんだ。人間に擬態していれば、いつかきっと本当の人間になれるかもしれないと信じていた。

でもなれなかった。必死に擬態すればするほど
心身が衰弱し、僕の心は壊れていった。

テスト範囲が配られていない状態で、テストで良い点を取るのなんて不可能だろう。

心が壊れた時には、僕は16歳。

精神科に行くと、やっとその違和感に名前がついた。

自閉症

あぁ。僕はやっぱり普通ではなかった。
安心した。もうあんな辛い作業をする必要はないと。



異星人で良い。違和感があっても良い。
それを強みに変えて、生きていこうと決め、僕歩き出した。

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