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#134 数字でみる博士課程:時間に関する2トピック

博士課程を振り返るシリーズ 1/1

今回のテーマは時間
本記事は、時間に関する2つのトピックに焦点を当てています。
・遠隔地との行き来にかけた時間
・最終年の時間配分


博士課程を振り返るシリーズを投稿する理由と目的は二つあります。

  1. 博士課程4年間の体験を振り返り、文章に残すこと

  2. 博士号取得を目指す方々の参考となること
    進学前に何の情報もなく同期も少ない博士課程。なかなか自分以外の事情を知る機会はないと思うので、わたしのような事例も参考になるのではないかという気持ちで書いてみることにしました。

はじめに、わたしの基本情報
2024年3月、博士号(工学)を取得しました。
大学院の専攻は土木・建築系の融合コースで、景観工学や都市計画・土木史が専門の研究室に所属していました。

博論では、農村風景について、都市と農村の関係、なかでも「環境負荷の小さい青果物を扱う流通システム」に焦点を当てて研究していました。
調査対象が関西圏にあったため、4年のうち2年間は大学のある東京と頻繁に行き来しながらの生活をしていました。



ほぼ二拠点生活にかけた時間

博士課程2、3年目、インターンシップ兼フィールドワークで片道3時間の距離を行ったり来たりしていました。振り返ってみたら約半年滞在していたようです。

東京↔︎関西のほぼ二拠点生活
期間:2022年4月〜2023年10月
滞在日数:175 days
連続滞在日数:1~47 days
往復回数:13

2022年はコロナ禍でホテルが長期滞在プランを提供しており、シェアキッチンのあるホテルに4ヶ月滞在していました。
2023年は、マンスリーを1か月借りたり、短期滞在の時はホテルに泊まったりしていました。

シェアキッチンのあるホテルでは、食費を抑えられた上に、同じように博士課程の学生で、調査滞在している人と仲良くなったりと、大学以外の色んな人たちと出会えて、本当に良い時間でした。

▼当時の様子は、こちらの記事にも書いています。

最終年の時間配分「集中して作業できる時間は意外と少ない」

博士論文の提出が終わった、2/28までの1年間の時間の使い方を振り返ります。

時間の測り方

勉強・仕事がはかどるアプリ「集中」を使っていました。
25、45分のタイマーを設定し、終わったら止めて休憩していました。
---測定分類---
① PhD:博論のための思考・作業
② Seminer:研究室の週1全体ゼミ2-2.5h、月1博士ゼミ3h程度
③ Internship & fieldwork:PhDと分類に迷う時間も結構含まれます
④ 事務作業:メールやタスク管理等

使っていたアプリ:https://bondavi.jp/shuchu/

計測の前提として、
ごはんの時間、トイレやおやつなどのちょっとした休憩時間は含まれません。
学会発表による出張、学内発表など計測が困難な時間も含まれません。
なので一般的な労働時間よりは少ない結果が出るはずです。
拘束時間ではなく、集中していた時間と捉えてもらうといいかもしれません。

計測結果は【表1】の通りです。

【表1】博士課程最終年の時間の使い方(h)

合計1548.7hについて

参考までに、年間所定労働時間(8h/day)= 2,080時間で、この時間にはトイレ休憩も含まれています。
8時間労働の人と比較すると少なく見えます。
(あれ、あんなに負荷大きかったのになぁ……)

ですが、集中していた時間と捉えるなら、まあOKではないでしょうか。
ちなみに、本当に集中して思考・執筆できたのは、体感的には4時間くらい、稀に〆切に追われて6時間くらい、が限度だったと思います。

博士課程の最終年で感じた負担と割いた時間の合わなさは、単純作業の割合が少なく、脳への負荷が大きいことが理由なのかもしれません。

イメージしやすいように、自宅で平日を過ごした場合の1日の流れを書いてみました。ポイントは重心を午前中にすること。お昼の時点で最低3.5時間分の作業が終わっていると、午後の気持ちが軽くなります(秋冬はそんな余裕なかったけど)。

▼ 平日の過ごし方(例)
9:00-9:30 始業
 (午前の稼働時間 3.5-4h)
13:00-14:30/15:00 お昼休憩
料理する→食べる→コーヒー淹れるがルーティーンで、お昼を1日のメインごはんとしていました。
 (午後の稼働時間 3-3.5h)
18:00/19:00  終業

20:00-23:00頃 (余裕がない時は作業時間)

1548.7hの内訳

① PhDと② Seminer:(1000.4+58)÷1548.7=68.3%
③ Internship & fieldwork:453÷1548.7=29.2%
④ 事務作業:36.7÷1548.7=2.4%

数字だけ見ると7割弱しか①②に割いていないことになります。
けれど、③には博論と切り離せないような時間が体感的には4割くらいあったと思います。
またインターン≒フィールドワークだったからこそ得られた情報、生まれた思考があり、③がなかったら論文は完成していません。

④(①〜③の切り替え時間)は月の変動が大きかったカテゴリです。
関西と頻繁に行き来していた3-7月は約5%、自宅で博論執筆にいそしんでいた秋以降は2%を下回っていました。

【図1】博士課程最終年の時間の使い方(%)
縦軸:合計時間h、横軸:月

グラフから見える切替え時期

インターンのお休み期間に入った10月前後のグラフ【図1】を見ると、マルチタスクからシングルタスクへ移行したことがよくわかります(緑の割合が減少)。

ピークの10月は、査読修正、学会発表に学内の発表とトリプルパンチで訳がわからなくなっていた時期でした。
12月は、審査員への論文提出のために、とにかく出来上がらないとと焦っていた記憶があります。

そんな時、ある審査員の先生に「最後は自分の研究を楽しんでくださいね」と声をかけてもらって、正気を取り戻したことが印象に残っています。確か、12/28だったかな。

1-2月は、稼働時間数がぐっと減っていました。
思い当たる理由は二つ。
・年始の公聴会が終わって、やる気エネルギーが尽きた
・測定時間外にの時間の割合が増えた(新生活の準備など)

ただ、年末の方が投入時間は長かったけれど、精神的にキツかったのは年明けてからだったかもしれません。
結論章を最後まで粘って考え尽くしたけど、まだ納得いく図が描けない、でも手が止まってしまう……という時間が多かったゆえに、もどかしさを感じていたんだと思います。

2月が終わった後も、3月半ばまで査読論文の修正やら、奨学金の報告書やらで落ち着かない年度末でした。
4月から就職するにあたって、研究だけしていれば良いというわけではないので、対応できるようなNotionページを構築中です。
うまく回るようになったタイミングで、記事を書こうかな。

おわりに「博論は中距離走くらいだと思う」

博論は、卒論、修論とは全く別物です。少なくとも3年はかかります。
人生が長距離走だとしたら、修論は短距離走、博論は中距離走だと思います。
中距離走でわたしが一番恐れていたことは、焦った結果立ち止まることや、立ち直れなくなることでした。

フットワークの軽さや、好奇心を持つことも大切です。
けれど、意識せずとも色々手を出しがちな自分が中距離走を走り切るには、「選択と集中」が必要でした。
だからと言って、20代の今しかできないことを制限するのはおすすめしません。要するにバランスを取ろう、ということだけど、難しいですよね。

わたしの場合は、研究と関係あるインターンシップ以外の活動は、2年目の終わりに全て辞めました。
人間関係にも、本当に大切な関係以外は自分から関わることを辞めました。けれど新しい出会いは、ほどほどに自分から掴みに行きました。

▼この時と考え方は変わっていない

「選択と集中」は、今のキャパシティに合わせて優先順位をつけようということでしたが、もう一つ意識していたのがキャパシティを広げることです。

具体的には、
・少し背伸びした仕事にチャレンジすること(博論自体がそうとも言える)
・身体を鍛えること
をやっていました。
実際にマラソンをしている友人は、トレーニングで体力がついたことで、仕事をしても全く疲れなくなり、疲れたとしても一晩寝れば回復するし、精神的にも強くなったそうです。

博論執筆のさなかにいると、常に「足りない」という気持ちがありました。終わってからもいまいち成長が実感できすにモヤモヤしていました。でも、こうして中距離走を走り終えて、後ろを振り返ってみたら、確かに前に進んでいることがわかりました。
これから博論を書くみなさんも、きっとそう思えるはずなので、今からでも振り返られるような、何らかの記録をとっておくことをおすすめします!

気づいたら3,000字超えに。
振り返り始めたらいろんなテーマが思い浮かんできたので、また別の記事で紹介したいと思います。それではまた!




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