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幸せを巻き戻す

今日一日を逆再生して、もう一回みんなでお出かけしたい

常夜灯のオレンジの光に照らされ、柔らかな笑顔を浮かべながら、娘がつぶやく。

二枚くっつけて敷いた布団で、私は静かに幸せの余韻に浸っていた。

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娘さんが外に出られるなら、うちの娘と4人でランチでもしませんか?

Webライターラボで知り合った「やちさん」に連絡をもらったのは、たしか4月の頭くらいだっただろうか。

やちさんには二人お子さんがいる。この春から大学生の上の娘さんは、中学~高校時代に不登校だったそうだ。

ラボのオフ会でやちさんに会ったとき「家で一人になれないのがしんどくて…」と、話を聞いてもらった。そのあとも、私のnoteも読んだりして、気にかけてくださっていて。

その気持ちが嬉しいし、何より心強い。

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ただ、人一倍警戒心の強い娘が、知らない人といきなりお出かけできるかなあ。「行く」と言う確率は10%くらいだろうか。でも、ダメもとで聞いてみよう。

私の話を聞いた娘は、もじもじしながらも「大学生のお姉さんとごはん……?行ってみたい」と嬉しそうに返事をした。

たびたび、お兄ちゃんかお姉ちゃんがほしいと、私に話していた娘。

年上のお姉さんとお出かけできるのが嬉しいらしく、一週間くらい前から「これ、お姉さんとごはん行くとき、持って行くー」と準備を楽しんでいた。

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創作飲茶のお店のテーブル席で顔合わせ。はじめましての人たちと向かい合って、娘はガチガチに緊張していた。

でも、パンダの餡まん付きのお子さまセットを完食する頃には、自分から話せるくらい慣れてきた。

ランチのあとは、みんなでクレーンゲームをしたり、キディランドのポケモンコーナーをぶらぶらしたり、デパートで書道家さんの個展を見たり……。

カフェでひと休み

歩き疲れたのでカフェに入り、お茶をすることに。

いい意味で、娘の緊張感はすっかり消えている。

その証拠に、注文したパフェがくるまで、やちさん親子に何種類もの変顔を披露していた。

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解散する間際、デパートのエスカレーターから出口へ向かうまでのあいだに、やちさんが話してくれた言葉が忘れられない。

見方を変えたら、学校に行かない選択をするって、なかなかできないことやん?

行きたくなくても「行かない」を選ぶ勇気がなくて、渋々登校している子どもはたくさんいる。

そのなかで、多くの人と違う道を選んで貫くわが子ってすごいと思う。

私自身「学校は行くものだ」と思い込んでいたから、しばらくは本当につらかった。

でも、学校を行かない選択をした娘をすごいと思えるようになってから、親子関係がいい方向に変わったと思う。

私もいつか、学校を行かない選択をした娘を、口先だけじゃなく、心の底から受け入れられるだろうか。

大丈夫。

かすかながらも、たしかに感じている。

丸ごと娘を受け止める準備が、着々と進んでいることを。

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ゆっくりと眠気の波が押し寄せる。

ぼんやりした意識のなか、やちさんの言葉と冒頭の娘の言葉を、交互に何度も、何度も再生した。


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▼娘の不登校について、親である私が思うことを素直に綴ったエッセイ集です。

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