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おしゃれは我慢、というけれど

「おしゃれは我慢」という言葉をよく聞く。
私自身10代~20代前半くらいまでは、そんな感じだった。
アパレル販売員という職業柄、おしゃれに関する我慢は仕事のうち。
自分が商品を身に着ければ、お客さんにリアルな着用感を伝えやすいのだ。

それと、もうひとつ。
「私は販売員だから、いつもおしゃれでいなくっちゃ」というプライドもあったのかもしれない。
 
「理想のショップ店員」を演じるため、毎月ファッション誌でトレンドをチェックした。
ショーウィンドウのマネキンや、ほかのスタッフと似たような着こなしをすることで、「私もトレンドを意識できている」と安心感が得られたのだ。

おしゃれのためなら仕事で8時間以上立ちっぱなしでも、ヒールの高いパンプスを履いた。
足がむくんでパンパンになったときは、「おしゃれのために頑張っている」という誇りすらあった。

自分がその服を着たいかどうかなんて考えない。
周りから「こう見られたい」が最優先だった。
そんな「おしゃれは我慢」精神は、プライベートにも影響した。

「おしゃれな人」というレッテルが欲しい。
好きな人に少しでもかわいいと思われたい……。

他人の評価が最優先の私にとって、おしゃれは「なりたい自分を演じるための衣装」みたいなものだった。
着飾っていないと、地味で内気な本当の自分が周りにばれてしまう。
「つまらない人間だ」って思われてしまう……。
当時の私がおしゃれにこだわる本当の理由は、とても「どんより」したものだった。
 
何となく自分らしさが分かってきた30代。
「おしゃれは我慢」の時代にピリオドを打った。
今は誰かのためではなく、自分のご機嫌をとるために「着たい」を優先しておしゃれを楽しんでいる。

昔みたいに無理してまで着ようと思わないし、身に着けていて少しでもストレスに感じるなら手放すようになった。
 
▼ちなみに服を選ぶときのポイントは、こんな感じ。

・体型に合うか
私は肩幅が広く、ピタッとしたデザインが苦手。窮屈だと一日中落ち着かないので、ワンサイズ上げたりメンズものを買ったりしている。

・年齢より上に見えないか
暗い色を着ると、顔色が悪く老けた印象に。鏡を見るたびに自分のテンションが下がるので、なるべく明るい色を顔まわりに持ってくるよう意識している。

・着心地にストレスを感じないか
着ていてチクチクするのは絶対に避けたいところ。肌触りや素材を重視し、服によってはタグも切る。

・お手入れに手間が掛からないか
たとえばニット。見た目は好きだけれど、手入れが面倒だから着るのをやめた。すぐに毛玉ができるし、着脱するときのパチパチもストレス。抜けた髪の毛が、静電気でニットにつくのも苦手。

今の本業であるWebライターは、パジャマでも仕事しようと思えばできる。
だけどそれではやる気スイッチが入らないし、クライアントや読者に失礼な気がする。
人に会う予定がなくても、程よい緊張感と清潔感は大切だ。

ナチュラルメイクをして、ピアスをつける。
コーディネートのどこかにキレイな色を使う。
トレンドは追いかけすぎず、適度に楽しんで。

ちょっとしたおしゃれは、仕事のモチベーションアップだけでなく、一日をポジティブに過ごすための材料にもなる。

「衣食住」という言葉があるくらいだ。
「着ること」は暮らしの一部であり、毎日を豊かにするために欠かせない要素である。
それは年齢を重ねておしゃれの目的が変化しても、変わらないだろう。

「おしゃれは我慢」の時代を卒業して思うのは、「おしゃれは我慢するものではなく、自分のために楽しむもの」ということだ。

#創作大賞2023
#エッセイ部門

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