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怖い話(創作)

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以前あるサイトで公開したものです。新しいものも書けたら…
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注*虫が苦手な方は絶対に読まないでください。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「この時間って  イヤなんだよな~」 部活を終えたあとの帰り道。 昼と夜が入れ替わる、 明るくて暗いこの時間帯は なんだか知らない世界と 混ざり合ってしまいそうな不安に襲われ、 俺はいつも早足になる。 「あ…」 前方。電柱の陰。 白い野球帽をかぶった少年が立っている。 「ずいぶんレトロな格好だな…」 デニムのショートパンツ、 いや、 ホットパ

誰だ

「ごはん、もうすぐ出来るからね~」 トントントン、と リズムのいいまな板の音。 グツグツと煮える鍋からは いつもの嗅ぎ慣れた匂いが立ちのぼっている。 俺は、言葉も出なかった。 親父は滝のようにダラダラと流れ出る汗を拭おうともしない。 姉貴にいたっては、鼻水まで流して泣きじゃくっている。 「ほらぁ、見てないで手伝ってよ。  まったくみんな、いつも自分の事しかしないんだから」 まるで「母親のような」ふるまいをする女。 その後ろ姿を、 俺たちは、ただ黙って見

なんでなんでなんで

大学卒業間近、やっと就職の内定が取れた俺。 何社も何社も落ち続けて、マジで「死にたい」と思った事もあった。 それが… やっと今日…っ!! もー嬉しくて嬉しくて、 「生きてて良かったぜぇぇぇ!」 なんて、泣きそうなくらい嬉しくて。 「そうだ、  これまで支えてくれた両親に、ケーキでも買って帰るか!」 そう思い立って、入ろうとしたデパート。 その屋上から、それは飛び立った。 ……鳥だと思ったんだよ。 でも。 鳥は、 こんなに重くないだろ。 ドスン!

トイレの女神様

学校に、とても不細工な女の子がいた。 その子はまわりにこう言った。      『この学校のトイレには女神さまがいるのよ。       一生懸命掃除をしたら、       お礼に私をキレイにしてくれるんだって』 モチロン、誰も女神さまなんて見ていない。 不細工な上に嘘つきかよ、と、誰もが陰口を叩いた。 だが、日に日にその子はキレイになっていったのだ。 キレイになって、性格も明るくて優しいその子に、 たくさんの友達が出来た。 でも誰にも女神さまは見えないから、

やべぇ

「ありゃ、シャンプーがねえじゃん」 シャワーを止め、給湯器のリモコンスイッチを探る。 薄目を開けて、俺は「呼び出し」のボタンを押した。    プププー、プププー すぐに誰かが風呂場のドアの前まで来てくれた。 「悪りィ、シャンプーが・・・」 言いかけて、ハッと気付いた。 あれ・・・? 今って・・・ 家族みんな出かけてて、 家には俺ひとりじゃなかったっけ・・・・・・?                      完