バターケーキの思い出

子どもの頃、とても貧乏で。
クリスマスパーティーなんてやった記憶もないんだけど。

いや、やったのかもしれないけど
記憶は一つも無くて。

ただ、
初めて食べたバターケーキが

とてつもなく美味しかったことだけ覚えてる。

クリスマスだったのか何だったのかも
あやふやなんだけど

とにかく
おやつとか、甘いものとか
そういうものに縁が無かったので

その時の
美味しくて嬉しくて、っていう気持ちだけが
記憶の片隅に残っている。

小学生の時
誕生日でさえケーキなんか買ってもらえなくて

ただ「自分の誕生日に友達を呼んでパーティーをする」
ということを

やってみたくて
母に無理を言って

1回だけ
ボロボロの家にクラスの子を何人か呼んだ。

でも「友達」なんていなかったので
「同じクラスの子」という程度の親しさだったけど。

その時でさえ
ケーキなんて無くって

メインは

ティーカップで形づけた「ケチャップライス」だった。

肉も入っていない。
ミックスベジタブルだけが混ざっていた。


その時
私はどんな気持ちだったのか

正直あまり覚えていないんだけど

「友達」が戸惑いながら
「おいしいね」と言ってくれたことだけは覚えてる。

ただそれは母(大人)がいたから。

数日後には
公園でそのことについて笑われた。


中学になったら
甘いものが欲しい時は

料理用の白砂糖をスプーンですくって食べた。


貧しいって悲しい。
思い出したくないことがいっぱいある。

でも今は
唯一「良い思い出」のバターケーキを
買えるくらいにはなれたので

昨日のクリスマスイブ用に
バターケーキを取り寄せてみた。

ワクワクしながら食べた。
でも


何かが違った。

変わったのはケーキなのか
それとも私自身なのか

ひどい胃もたれと
ホールの半分以上が残ったバターケーキが

新しい「バターケーキの思い出」として上書きされてしまった。



ありがとうございます。