見出し画像

【“傷つきたくない”と蹲ってばかりの私は、じゃあ一体何人の人を傷つけてきたんだろう】

ただの日記を書こうと思う。日記というか、これはもはや懺悔に近い。

先日、やらかした。何をやらかしたかは、ここには書かない。“ただの日記”なのに、あまりにも重くなってしまうから。
とにかく、私がプツンときてやらかしたせいで、パートナーはすごく大変な思いをした。パートナーだけじゃなくて、私を大切に思ってくれているたくさんの人たちが、大変な思いをした。

強くなりたいなぁと、毎日思う。何があっても、何を見てしまっても、ブレない心がほしい。でも、そのたびに、友人である“ちゃこさん”のエッセイのワンフレーズを思い出す。

その感受性を手放したら終わりだ。だって、手放したら、もう二度と書けなくなるよ。

以前、私が辛い渦中にいる最中、ちゃこさんがエッセイを書いてくれたことがある。それは紛れもなく私への手紙で、私はそれを読みながら、ぼろぼろと泣いた。そのエッセイのタイトルは、『表で10悲しむ人は、ほんとうは100悲しい』だった。

私の病名が「解離性同一性障害」だと判明して、でも私は、それを表に出すのが怖くて、どうしよう、どうしよう……と思いながら、ちゃこさんにLINEをした。そうしたら、ちゃこさんは私の事象には一切触れずに、このエッセイを書いてくれた。

辛さをわかってくれる人がいて、寄り添ってくれるパートナーがいて、親身に話を聴いてくれる友人がいて、それでも時折、どうしようもなくピリオドを打ちたくなるのは、一体どういうわけなんだろう。

辛さから逃げ出したい。思い出したくない。もう何も考えたくない。

その網に囚われ、一瞬にして頭が真っ白になるあの感覚を、人は激情と呼ぶのだろう。

もうこれ以上、傷つきたくない。でも、傷つく心を失ったら、その感受性を失ったら、書けなくなるだけじゃなくて、きっと多くの人を傷つけてしまう。

これをされたら傷つくかな。
これをされたら嫌だろうな。

そういう想像力のもとに、人は出来うる限り、「誰かを傷つけないように」生きているのだと思う。

昔、ちびが言った。

「ちび、ぎゅーするおかあさんはすき。でも、おこってるおかあさんはきらい。なんか、いたいきもちになるから」

その日、長男のバスケの練習時間が迫っていて、私は体育館の鍵当番で、気持ちが急いていた。だから、一番言ってはいけない台詞をちびに投げ返した。

「じゃあ、怒られるようなことしなきゃいいじゃん」

さっきふとそのことを思い出して、「傷つきたくない」と蹲ってばかりの私は、じゃあ一体何人の人を傷つけてきたんだろうと思って、今さら届かないとわかっているのに、心の中で何度も何度も「ごめんね」を呟いた。

ごめんね、ちび。ごめんね、怒られたら痛いよね。ごめんね。

昨日傷つけた人、1ヶ月前に傷つけた人、半年前に傷つけた人、10年前に傷つけた人。悔いても悔いても、時間は巻き戻せない。だから私たちは、今ここからはじめるしかなくて、少しでも同じ過ちを繰り返さぬよう生きていくしかなくて、そのためにも、未来を見据えるのと同じくらい、過去を振り返ることは必要なことなんじゃないかと思う。

過去を振り返ってばかりいても、先には進めない。それはたしかにそうだろう。でも、過去の過ちを繰り返さないためには、過去から目を逸らさず、己の罪を腹に据えて、歩んでいくしかない。それが生きるということで、償うということで、まっとうに”やり直す”ということなんじゃないだろうか。

今度ちびに会ったら、目一杯のぎゅーをしよう。「だいすきだよ」と伝えて、長男の頭もこっそり撫でよう。「うざい」って、嫌がられるだろうけど。

そういう未来を、投げ捨てるような真似だけはしない。
そう固く心に決めて、私は今夜、プリンを食べる。激情に飲まれそうになったら、プリンを食べてもいいって友達が言ってくれたから。ついでに、シュークリームの追加もOKらしい。私の友人たちは、大概私に甘い。

甘いも苦いも両方あって、それが人生なのだとしたら、私はそれを味わいつつ、ときに人に頼りつつ、たまには周りに頼られつつ、歩いていけたらいいなと思う。

いつかこの人生にピリオドを打つのは、私じゃない。いるのかいないのかわからない、性格の悪い神さまだ。その日がきたら、散々悪態をついてやる。そして、そのあとでちゃんとお礼も言うんだ。

会いたい人たちに会わせてくれた。
息子たちを産ませてくれた。
愛する人との生活を与えてくれた。
いざというとき、助けてくれた。

だから私は、神さまに「ふざけんなバカヤロー」と言ったあとで、ちゃんと「ありがとう」も言おうと決めている。「ありがとう」を言うときの顔は、ちょっとだけ、引き攣ってしまうかもしれないけど。


最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます。 頂いたサポートは、今後の作品作りの為に使わせて頂きます。 私の作品が少しでもあなたの心に痕を残してくれたなら、こんなにも嬉しいことはありません。