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『あのこたちは、どこに』🔟

 「前進しないものは 後退していく」ドイツの詩人ゲーテの言葉だ。
 藤田風海は、SNSで手先が器用な人、営業のできる人、デザイナー、企画事業関係の人に呼びかけた。が、一向にメールもダイレクトメールもなかった。
 相変わらず手作りアクセサリーの教室は続けている。教室だけでは、生活していくにはかなり厳しい。そんな時、風海のもとにあるメールが届いた。ある団体が、単純な仕事であれば手伝わせてほしいということだった。 
 風海は、是非ともお願いしたいとメールで伝えた。
 とりあえず個人事業として税務署に開業届を提出した。帰りの青い春の空の方から雲雀のさえずりが聞こえた。
 水仙という団体名で、高校を中退した女子や早期退職した男性がいる。アクセサリーという細かいものを扱い、作業も細かい。彼女ら彼らはそういった作業の経験がないので、時給はそんなに高くなくていいと団体側から言ってくれた。
 風海の職場に水仙から二人来てもらった。代表の目の大きい小柄の男性の土井さんが、長身の高校を卒業したばかりというの女性と大工をしていたという無口で影の薄い男性を連れて現れた。

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