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【モノローグエッセイ】世阿弥ゆえんの地を巡る。



ひょんな事から興味を持ち、
あまりにも感動した世阿弥の「風姿花伝
歴史は好きだけど、好きな、或いは尊敬する歴史上の人物はあまりいなかったんですが、「風姿花伝」を読んで即、世阿弥になりました。

その速さは今年度、最高風速だったと思います。


今回はそんな世阿弥由縁の地を中心に巡りました。


まず訪れたのは!


◆天河大辨財天社


日本五大辨財天の1つ。天河大辨財天社(天河神社)

辨財天は「水に関わる神様」だったことからか
水辺にまつられていることが多いらしい。
(厳島神社とか江島神社とか)

その中でもこの天河神社は山奥にある珍しい辨天さま。
「 水は山から湧き流れる」という考えがあるんだとか。(by宮司さん)

こちらの神社では、世阿弥が使ったといわれる「阿古父尉(あこぶじょう)」の面や豊臣秀吉が奉納したといわれる豪華な唐織などの名品を所蔵しています。

境内には、世阿弥の嫡男・観世十郎元雅が、能を奉納し、能楽の再起を願って舞った舞台が。

荘厳で美しい舞台でした。

能舞台の正面には本殿があり、
天河神社の神器の五十鈴が。

実はこの天河神社にあがるのは今回2回目。
この日はご祈祷もお願いしました。人生初ご祈祷。
芸能上達を願って参拝しました。

昇殿したら、風がビュンビュン吹いて、参拝し終わったら雨がザーッと降ってすぐ止むという体験をしてびっくりした(笑)
そして、その後ひいたおみくじは大吉!

日本一解読が難しいおみくじ



歓迎されている…と信じます(笑)

参拝した分、精進します!


天河神社から京都の方に戻り、
次に向かったのはこちら。

◆新熊野神社



熊野信仰の盛んな平安時代末期
後白河法皇によって創建された神社である新熊野(いまくまの)神社。
(なんかめっちゃ神々しい写真撮れた。)

「新熊野」と書いて「いまくまの」と読むのは、
紀州の古い熊野に対する京の新しい熊野、
紀州の昔の熊野に対する京の今の熊野という
当時の都人の認識が由来となっているんだとか。

この神社は、「能楽発祥の地」とされています。

申楽談義」(観世元能著)には、

観阿(観阿弥)、今熊野の能の時、申楽(猿楽)ということをは、将軍家(足利義満)、 御覧じはじめらるるなり。世子(世阿弥)、十二の年なり。

と、観世父子が足利義満と出逢い、
世の中に出るきっかけとなったのが、
ここ、新熊野での猿楽演能だったことを記しているらしい。

境内には能の碑など能楽にまつわるものも。

能の碑

参拝した後、御朱印と芸能守を受けに
社務所のおじさんとお話。

おじさん「(お守り)赤と青どっちにします?」

私「うーん…赤で!」

おじさん「はい、…何かやってはるんですか?」

私「あ、はい!役者をやっていて、今年世阿弥の『風姿花伝』を読んで感動して、能楽と世阿弥ゆえんの地をまわっていて…」


とお話したところ、


おじさん「それならこっちの(お守り)じゃないですわ

私「え???

と、私の選んだ赤いお守りではなく、
青いお守りと、もう1つ新しいお守りをほいっと取り出すおじさん。

そして、社務所のおじさん、否、世阿弥おじさんによる深イイ話が始まったのであった。
(境内に私しかいなくて、本当におじさんと社務所の机挟んで1対1の会話となったのである。)

おじさん「この赤と青ってね、女の子用男の子用って訳じゃないのよ」

私「なるほど」

おじさん「この赤いのが「現在能」青いのが「夢幻能」を表しているんです。能楽はね、前場(まえば)、中入り、後場(のちば)っていう三部構成になっていて、この様式を確立したのが世阿弥なんです。んで、この前場が人と人との対話で進行する、現在起こっている出来事を演じるから「現在能」、後場が神様や霊との対話で進行する神がかった夢の中での出来事だから「夢幻能」なんです。」

私「おおっ」

おじさん「人間同士の世界から神々同士の神がかった世界に向かっていくというのが世阿弥の確立した複式夢幻能というものなんですわ、つまり後場が神がかった世界、幽玄ってことです」

私「おおおお」

幽玄。
優美、超越的な美しさ。能で目指すべき物のことである。

おじさん「観阿弥は今の歌舞伎のスタイルを作ったのがすごい、世阿弥は幽玄というものを生み出したのがすごいんですよね、神がかっていたわけです。でも観阿弥世阿弥だけでは神がかることはできなかったんです。彼らがなぜ能楽を大成でき、神がかることができたか、それはこの地で足利義満との出会いがあったからなんです。」

ここで、おじさんは新たに取り出していた若草色の縁結びのお守りを私に見せた。


おじさん「この出会いがなかったら、観世親子は他の猿楽や田楽の座と変わらなかったわけです。つまり、神がかるためには神がかれる人との出会いが大事っちゅうわけです」

私「おおおお!!」

拍手する私。(自分でも思う。単純だと。)


おじさん「もちろん自分の芸を磨くのは大事。でも、それを知らないで頑張るのと、知ってて頑張るのとではまた違ってきますでしょ」

私「ですね!」

おじさん「なら、こっちの青いのと、この縁結び守、合わせてでどうですか?」

私「いただきます!」

世阿弥おじさんの完璧セールストークに感服した私であった。

この話を家族にしたら「ちょろいやつだな」と言われました、案の定(苦笑)

でも、この日初対面の若造にこんな深イイ話してくれたおじさんに「いや、買わないっす」って断るのも芸事やってるのに粋じゃないなと思った。


おじさんからお守りをいただき、新熊野神社を後にした。

私「素敵なお話、ありがとうございました、頑張ります」

おじさん「神がかれるように頑張ってくださいね」

私「はい!」

ひょんなことから興味を持った世阿弥だったが、
こんな面白い出会いをくれたのだった。

引き続き、頑張ろうと思う。
お礼参りに来年来れるように。

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