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四星球が、良すぎた件。

ずっと気にはなっていた。

メンバーそれぞれのTwitterアカウントを以前からフォローしていて、何年か前に発売されたアルバム「SWEAT 17 BLUES」もリアタイで何度も聞いていた。


その時は何故ここまでハマらなかったのか。



2023年3月12日に彼らが水戸ライトハウスのイベント「ごじゃっぺナイト」に出演することも知っていた。幸いチケットはまだ買える。

初めて四星球のライブに参加するチャンスが来たのだ。


その少し前の話をする。


私はヤバイTシャツ屋さんが大好きで、コロナ前はもちろん、コロナ禍においても家族の受験期以外は積極的にライブに足を運んでいる。

他にも現在世界中のミュージックシーンを賑わせているボカロPのピノキオピー、DTM界の貴公子・岡崎体育、生活密着型ラウドロック・朝起きて夜寝るまでを共感の曲で楽しませてくれる打首獄門同好会なども大好きだ。更に異端児赤ちゃんで歌上手なアイドルグループSixTONESも大好きだから好きな音楽に統一性がないし、何より節操がないっちゃない。


共通するのはただ一つ。
彼らの根底に何となく感じる「反骨精神」がどうやら私は好きなのだ。

思えば中学の頃から真ん中を歩かない音楽が大好きだった。ナゴム系というやつだ。

流行りの音楽はダサいと決めつけるような捻くれ者の私だったが曲りなりにも大人になってそれは完全に間違いだったとギリ気付く事が出来たけど、ただ何となく個人的に反骨精神を感じる音楽が大好きなのは今でも変わらないままでいる。

だからかも知れない。
私が好きなミュージシャンは一般的にはどうしても真正面から受け入れられてはいない気がする。実力も才能もたんたんまりまりなのに世間に知られるまでどうしても時間がかかってしまうのだ。
真ん中を歩かない音楽だからだろうか。
だとしたら理にかない過ぎている。


先日、とある番組でヤバイTシャツ屋さんがテレビ初歌唱演奏をする事を知った。顧客(ヤバTファンの総称)はこの日をどんなに待ち望んでいた事か。

私も例外ではなく、全録出来るHDDではあるものの確実に予約出来ているか、残量は十分あるかを何度も確認し、その日その時間を迎えた。

しかし最初に番組に出てきたのは法被にブリーフ姿の四星球だった。

そんな彼らに完全に惹き込まれてしまったのだ。
知ってはいたのに、聞いてもいたのに正直ビックリした。

なんて面白くて不器用なバンドなんだ。


過去に出演された番組も観ていたのに(私が好きなミュージシャンと番組の共演が被る事が多かった)、何だか「初めまして」の気持ちでいっぱいだった。

次の日だったか。
私のサブスクのプレイリストは四星球の曲で溢れた。通勤の車で歌詞を一語一句漏らさないように聞き入っていると嘘みたいにポロポロポロポロ涙が零れてくる。

ふと前を走る車の「ドライブレコーダー全方向録画中」のステッカーを見て我に返り、誰も求めてなんかいないおばさんの泣き顔を見られるのが恥ずかしくなって慌ててマスクを取り出し付けたけど涙は隠しきれていなかったと思う。

次の曲でもその次の曲でも泣いていたから。

何かの音楽に異常にハマる時って、まるでジグソーパズルをハメるように、僅かな1ピース分の心の隙間に入り込まれて完成してしまうんだろうなと思う時がある。

四星球もそれだったのかも知れない。

テレビ出演から程なくして茨城県北にある水戸ライトハウスで行われるイベント「ごじゃっぺナイト」に四星球が出演する事をTwitterのTLで知り、「これもしかして行かないと絶対後悔するやつなんじゃないか?」としか考えられない数日間を過ごす事となった。

ライブ当日は15時までシフトを入れていた。
最初から無理っちゃ、無理な話だった。

調べると15時半からイベントが始まるらしく、茨城県南部に住む私はルーラの呪文でも使えなきゃ間に合う訳が無い。

しかも家族の誰にもライブの話をしていないのに夕飯の支度もせず勝手に出かけてしまったら、そんなのライトめな事件だ。

やっぱ今回は突然すぎたし諦めるしかないのか?

大人しく冷蔵庫の扉に手をかけ夕ご飯の支度を始めたものの、マグネットのタイマーを見て、ふと気になった。

そもそも四星球は何時に出演するの????
せっかく行くなら花団だって楽しみたいぞ。

…つか、このイベントは何時までやってくれるの(笑)?

タイムテーブルを知りたくて、右手に持っていたハナマルキのお味噌を一旦戻してスマホに持ち替え、ごじゃっぺナイトの主催者さんのTwitterにDMしてみる。


ハテ(´・д・`)?


ハテハテハテ(´・д・`)???

何度送信しても私のDMは一生届かないらしい。
頑なに私を拒む理由が少し気になったが、この時点でもう17時近い。
今から全力で高速使って車を走らせても1時間はかかる。

忙しいのは知ってたけど、水戸ライトハウスに直接電話してみた。

知ってたけど、やはり出ない。
きっと出れないのだ。

何事にもタイミングはあるものだ。
これはもう仕方がない。
一生暇な私だって電話に出れないことくらいある。

「…私、このイベントに向いてないのか?」といよいよ卑屈になり、味なんて分からない味噌汁を作っていたら旦那が仕事から帰ってきた。

ダメ元で聞いてみる。時間は18時。

「蛇口を捻ったら水が出たんだよ」くらいのざっくりと大まかな話をしたが、した上で、

「もう一度ライトハウスに電話して、出なかったら今回は潔く諦める。出てくれて、かつ間に合いそうだったらライブに行きたい。夕飯は支度した。何も問題はない。」と伝え、私の切実な気持ちが通じたのか(若しくは呆れたのか)旦那に許可を貰い、ライトハウスに電話したら四星球は19時30分からの予定だと有難いことに教えて頂くことが出来た。

今から車を高速で走ればギリ間に合う。
花団も見たかったけど、とりあえず四星球のライブは楽しめる。

そこからの記憶は正直あまりない。
気が付いたら「声出しライブなんて3年半ぶりだなぁ。」なんてワクワクしながら、前から2列目にいた。

「知らぬ間に始まった人生が知らぬ間に終わって行く モチモチの木の下で一生臆病なまま」

私の3年半ぶりの発声ライブ一発目は、四星球の代表曲「クラーク博士と僕」のこんなに素敵なフレーズだった。

冷蔵庫の扉を開けて卵を取るような距離に四星球がいる。
さっまで私は家でそれをしていたのだ。
でも今目の前にあるのは冷蔵庫でも卵でもなくてライブハウスの四星球。
かなり強引ではあったが自分の行動力にお年玉をあげたい気分だ。

ステージを見ると、楽しそうに演奏しているギターのまさやんから流れ出る汗の美しきこと。
透明度をいつか計測してみたらどうだろう。
摩周湖より高いはずだ。

そんな綺麗な汗の先にドラムのモリスさんがいる。
距離にして3m先くらいか。
体の真ん中に力強いバスドラの音が直接届いているのが分かる。
これは体感なんかじゃなく、確実に届いて響いてるのだ。

四星球のリーダーでベースのU太さんもさすが過ぎた。
演奏力もさることながら抜群のトーク力の高さよ。
テレビで観ていても思うけど、まぁ滑らない。
安心と信頼しかない。実家かと思うほど。
分かったような事は言えないけど、ライブハウスで主に活動をされるバンドにとっては、おそらくトーク力も集客を左右する大切な武器なのではないだろうか。

そしてボーカルの北島康雄さん。
惹き付けられるものがありすぎて最もじっくりと見ていたけど、

「ライトハウスから許可を貰いました!今夜は好きな事をやって良いそうです!なので好きな事やらせてもらいます!」

と客席に降りて縦横無尽に走り回りながらもお客さんへの配慮をまず欠かさない。

歌いながら走り回っている時も赤ちゃんを抱っこしているママさんにぶつからないように気を遣っていたし、私の隣にいた女性に軽く掠っただけでもその女性と私にしか聞こえないような小さな声で「ごめんな。」とちゃんと謝っていた。

好きな事をやらせてもらう以上、誰にも迷惑を掛けたくないし、傷付けなくないんだろうなと。
きっと心から音楽とバンドとライブとライブハウスが大好きなんだと思う。

間違いなく優しくて素敵なバンドだった。

ここまで四星球に惹き付けられた理由は曲や歌詞だけでなくお客さん込みのライブハウスの真ん中にあったことを知った。

こんなのずるい。
ライブハウスに行かなきゃ分からない事じゃないか。

そんな笑いっぱなしの感動しっぱなしの歌いっぱなしの四星球のライブは時間にして2時間弱くらいだったろうか。

もっと短かったかな?
90分?60分?

時間の概念なんかもうどうでも良くなった。
帰りのドリンクも一番手前の一番端の一番取りやすいやつで満足だった。
心の底から楽しかったから。

四星球は流行りの音楽ではないかもしれない。
お世辞でもオシャレとは言えないかもしれない。
TikTokであまり流行らないかもしれないし、「歌ってみた」でもあまり「歌われない」かもしれない。

でも四星球は不器用なバンドなんかじゃなかった。
全てが彼らの高尚なテクニックなんだと思う。


彼らの曲に「トップ・オブ・ザ・ワースト」という個人的に大好きな曲がある。

トップ・オブ・ザ・ワースト
そこのそこのそこのあなたの
心の穴の奥そこまでも
響く歌が歌えるなら
当然さいつまでもそこに僕は居座るよ
トップ・オブ・ザ・ワースト
最低


何年か前に四星球のアルバムを聞いていたけど、その時は私の心に穴が空いていなかったのだと思う。

今回こんなに彼らにハマったのはライブが楽しすぎたからか、それともライブ前から空いていたのかは分からないけど、確実に心の穴の奥そこに居座られてしまった。  

今では仕事が終わって駐車場まで歩くほんの僅かな2分間でさえも四星球の曲を流していたくてタイムカードを切った直後にイヤホンを耳にセットしてしまう。1分半もあれば「四星球十五年史」という曲で心が動かされるから。

短い時間に泥臭い歌詞と美しいメロディがぎゅうぎゅうに詰まってるのにちゃんと四星球らしくチョけて締める、なんともまぁ贅沢な曲である。

しばらくはこんな日が続くような気がする。
結成20周年の四星球に今夢中になるには遅すぎたかもだけど、私にとっては今が最速とも言えるのだ。

ほんと私チョロいな。

いつか四星球のメンバーにどこかで出会う事が叶ったら、聞いてみたい事が1つある。


「今流行りの音楽って、なんだと思う??」


きっと同じ質問で返されるだろう。

「私は四星球が大好き。」

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