『汽車で短歌を』

鳴門駅、ここから世界へ羽ばたいた若者たちのことを思うよ。JR鳴門線が今、存続の危機。廃線になるかもしれない、そんな声が聞こえてくるようになった。通学、通勤、買いもの、観光などになくてはならない鳴門線の汽車。高校、大学への通学、地元放送局で契約社員をしていた頃は通勤にJR鳴門線を利用していた。立道、池谷のれんこん畑の風景。美しい吉野川。汽車の車窓を眺めていつも歌の言葉を探していた。汽車で文庫本を読んだりMDウォークマンで好きな音楽を聴いたりしていた。友だちと話したり、汽車通学も汽車通勤も楽しかった。
ここで私の汽車の短歌を二首紹介したい。

藍色のダッフルコートの青年が汽車を待つ朝 池谷駅/楠井花乃
2017・3・22

珈琲と古本好きは変わらない汽車通勤の鞄と共に/楠井花乃
2013・2・1

汽車に乗れば歌が生まれる。歌の種を探すために汽車に乗るのも楽しいものだ。歌人小池光の歌にこんな歌がある。

厚紙の切符のころは耳に挟み眠れる人もゐたり夜汽車に/小池光
『続小池光歌集』砂子屋書房 2001・6

思川鉄橋わたる車中にて缶コーヒーのあたたかき飲む/小池光
『梨の花小池光歌集』現代短歌社 2019・9・14

心に染みてくる歌である。
今、鳴門線だけじゃなくて地方では電車の本数が減らされたり、存続の危機の線もあります。地方のローカル線、大切なものがこれからも続いていきますように・・・。汽車から見える風景を短歌に残していけたらと思います。通学通勤をする人にとっても歌人や詩人にとっても駅や鉄道は、なくてはならない大切なものです。

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