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みどり演奏会のこと 10月15日

音楽の力って素晴らしいな。

これまで生きてきてそう思ったことは何度もある。
何度でもそう思える、思わせてくれるってすごいことだな。
だからやっぱりそれが音楽の力ってものなんだろうな。

先日9日にin-kyoで開催した『みどり  演奏会』
「みどり」とは、森ゆにさん 青木隼人さん、田辺玄さんによる音楽。
三春での演奏会は今回で2回目の開催となるが、そもそも今回は
2021年に開催予定だった演奏会がコロナ禍によって延期となり、
ようやくようやく満を持しての開催となったわけで。

演奏会の前日は三春大神宮の例大祭。
前日入りしたみどりのメンバーと、友人であり写真家、
そして料理人でもある萬田康文さんも東京から駆けつけてくれて
みんなでお祭りに酔いしれ、萬田くんの心づくしの料理で食卓を共に囲み、そして臨んだ翌日の演奏会は夢の続きを見ているようだった。

ゆにさんの歌声は、まるで自分が空洞の管にでもなったかのように
身体の内側まで響いて共鳴して、心を震わしていたのだと思う。
吸い込まれるように聴き入っているお客様の背中を見ていたら、
あやうく涙がこぼれそうになるのを、ゴクンと呑み込むようにこらえ、
溶け合うようにつま弾かれる青木さんと玄さんのギターの音はあたたかく、
すっかりと安心しきってみどりの音楽に包まれていくのだった。
外は前日とは打って変わって冷たい雨降りだったのに、
店内にはキラキラ、キラキラと、
まるで黄金色の光が輝いて空間全体を漂っているかのようだった。

in-kyoは雑貨店だ。
でもこの場所では作家の展示会を行ったり、こうしてライブや
ワークショップなども企画したり、コーヒーや紅茶が飲めたりもする。
それは私の中ではどれもごくごく自然な流れでやっていること。
東京でお店を始めた頃とは場所も変わっているし、目指す方向ややり方も
少しずつ変わってきてはいるけれど、根っこの部分は変わらない。
モノの売り買いだけではない場所。人が気軽に集える場所。
小さなモノやこと、人との出会いで、誰かの興味の扉が少しずつ
開いていくような。そんなきっかけがここであったなら、
こんなに嬉しいことはないのだけれど。

「表現」などと、言葉にしてしまうと大層なことになってしまう気がするが、恩師でもある美術作家の永井宏さんは
「誰でも表現はできるんだよ」
という言葉でたくさんの人々の背中を押していた。
私も背中を押されというか、その言葉に今もずっと支えられている。

自分の生活を見つめ、感じたことや考えたことを言葉にする。
言葉でなければかたちに、目に見えないことも含めて思い描くこと。

自分の手に負える範囲でできることや、
やりたいことの欠片を集めた場。
それも「表現」といえるのだろうか。
追い求めながら気づけばin-kyoは16年が経とうとしている。

10月15日(日)雨 最高気温14℃ 最低気温12℃
冷たい雨降りの日曜日。ついこの間まで30℃を越す日々が続いていたというのに。山の木々がいよいよ色づき始めて冬を感じさせる肌寒さ。