見出し画像

あの頃に思いを馳せて、鶏卵

 2023年6月現在、卵が高い。私が一人暮らしを始めたころには考えられなかった高騰である。私は今、歴史的な瞬間に立ち会っているのだろう。
 ここで、過去に私が書き留めていた卵に関する文章(2020年作成)を読んでいただきたい。ちょっとした“歴史”を感じるかもしれない。

ーーー

『タマゴ(10個入り)の多感な青春』

 これは某市某区のごく一部で繰り広げられているティーンズロードである。
 一人暮らしを始めてすぐは近所のA商店によく行っていた。タマゴ(1パック10個入り)が特売日には100円(税抜)。

 安い。これは良い。

 特売日に安くなることから、A商店でタマゴを買うというのが習慣化していった。
 それがいつのことであろうか、何気なくB百均ストアに入ったときに気づいたのだ。

 タマゴ(1パック10個入り)が売ってる…?? しかも定価で100円(税抜)!!! これは安い。いつも100円だったら、特売日に閉店間際のA商店へ駆け込んで、間に合ったと思ったら結局タマゴ売り切れ!なんて茶番をする必要がなくなる。そういうわけでB百均ストアでタマゴを買うことにしたのである。
 しかし、B百均ストアのタマゴには、A商店のタマゴよりサイズがふたまわりほど小さいという難点があった。たまに「これは本当は別の鳥のタマゴなのではないか…」と思うほどであった。
 なので、普段はB百均ストアでタマゴを買い、余裕のあるときはA商店の特売タマゴを買うというルーティーンになったのである。

 その頃の僕は、1パック10個入りタマゴ100円ライフを謳歌していたのである。ビバ価格の優等生。この世の春であった。

 そんな春が冬になったのは、去年の夏から秋の変わり目くらいであろうか。特売日にA商店へ出かけたのである。もちろん狙うはタマゴ。そんな僕の目に衝撃の値札が飛び込んでくる。

 「特売! タマゴ(10個入り)135円!」

 え……っっ…! 値上がりしてる…?? これは全校集会だ!!!!!

 学園の優等生だと思っていた人がパチンコ店から出てくるところを見ちゃったくらいの衝撃。価格の優等生がグレはじめたのだ。

 い…いいもん…! 僕にはB百均ストアのタマゴがあるから…!

 それ以来A商店のタマゴとは目を合わせることができなくなってしまったのである。
 しかしこれだけでは終わらなかった。僕の安寧のタマゴライフに改造バイクの鳴り響く音。パラリラパラリラ。

 B百均ストアが閉店したのである。
 これは全校集会だ!!!!!

 あっけなく100円タマゴライフは終了した。増税とか不況とかレジ袋有料化の前では価格の優等生もなすすべなかったのである。

 現在、僕はCスーパーの1パック10個入り116円(税抜)の特売タマゴを買っている。Cスーパーでは特売時にはタマゴの特設ワゴンが登場する。
 しかし、油断してはならない。そのワゴンには、10回に3回は1パック200円という私立お嬢様学校の生徒(高級タマゴ)が鎮座しているからだ。紛らわしい…。

 もちろん、A商店には今でも通っている。今ではドラッグストアになった元B百均ストアの前を通って。 
 A商店のタマゴ(1パック10個入り)は現在定価178円(税抜)。特売価格はもはや知らない。

ーーー

 写真はいつか訪れたあべのハルカスである。文章の内容とは関係ないので悪しからず。
 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?