忘我、白黒、ぶれない日々

仕事で石川県小松市の酒蔵へ。朝から乗った羽田空港発のJALはぎゅうぎゅうで、いったい小松で何が行われているの。編集者さんと離れて座る3列シートの真ん中で、うとうとしてたら小松空港は1時間足らず。

東京を出るときは天気が悪く傘をさしてきたのに、小松は快晴。持て余した傘をぶらぶらさせながら、出迎えてくれた車に乗り込むと「東京の天気が悪い時は小松が晴れて、小松が悪いと東京は晴れる」と教わる。

次に来るときは折り畳み傘を買わなくちゃ。

取材はつつがなく済んでいき、杜氏へのインタビューでは金言……というか、含蓄と重みの塊みたいな言葉をいただいて、ただひたすらに恐縮する。ざっくり言うと「ものづくりもチームの仕事も忘我で取り組み、常に関わる人やものから見た自分を考えよ」「まずは白黒も飲み込み、黒は手を動かしながらも胸の内で取り除き、白は血肉に変えていけ」という話であった。

自分主眼ではなく、自分から相手に合わせにいくことの繰り返しで、求められるものが生まれ、そしてそれが自分の仕事にもなっていくのだ。それだけ相手のことを知り、調べ、想像して、突き詰めていく。

白黒の話は、とくにある一定の修行期間には大切だろうとも思う。自分でも常に言葉や行動の意味を考えながら、それでも手を動かすという鍛錬の難しさよ。もちろん、自分のスタイルを貫いていくこともひとつなんだけれど、杜氏を頂点とする酒蔵の仕事では、自らが杜氏となったときにその「白黒」の答え合わせや変革をするという意味でも、大事なことなんだろう。

そして何より、同じことを、日々同じように続けていくことの大切さ。これは職人たちの姿を見て、ある種の感銘を受ける光景でもあった。いかにぶれず、ぶらさないか。どうにも「ぶれぶれ」なぼくは、身につまされるところがあった。原稿、がんばろう。

朝からの飛行機移動と、おいしい日本酒を嗜んだせいか、ホテルに着くなりお風呂にも入らず、すぐにむにゃむにゃと寝てしまった。気が張っていたし、なんだかんだ、疲れていたんだろう。

#日記 #コラム #エッセイ

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