思いわずらうことなく愉しく生きるためのMacBook Air

「定期的におしりを触ってもらえないと愛情を確認できない」と恋人が言うので、寝転んでいるときとかにふいに手を伸ばしてみているのだけど今だに正解なのかわからない。

物言いが面白い人なのでジョークかもしれないけれど、ぼくは馬鹿正直に信じて行動するほかない。

というより、過去の恋愛のアレコレで、すっかり猜疑心が強い性格に育ってきているがゆえに、「信じようが信じまいがダメな時はダメだから、だったら信じていたほうが心地よい」という理由で、恋人の言うことは概ね信じるようにしている。

先週の土日はとても楽しかったし、興奮した。……おしりの話の後だと誤解を招きそうだ。いや、まぁ、誤解ではないんだけど、えーと、それはさておき、土曜日に恋人とちょっと真面目な話をした。平たく言うと「自分を変えるために新しいことを始めたい」という思いを聞いた。

そのひとつに、物を書く、というやる気も含まれていた。物言いが面白い人だから、常々もっと考えていることとか、思い至ったことを読みたいと思っていただけに、とても嬉しくなる。

話を聞くほどに、もしかしたら今日が未来を動かす点になるかもしれないと感じて、ぼくは恋人を連れて秋葉原へ赴く。

「パソコン買いに行こう」

夜19時過ぎの秋葉原。恋人はPCを必要としていない仕事のせいもあり、今ほとんどのことをスマートフォンでこなしている。でも、今後のことを考えるとPCを使えているほうが選択肢の幅は広がるはずだ。

この先を信じてやまない僕に引きずられるように、恋人は戸惑いながら付いてきてくれる。

「WindowsとMacだったら、どっちが使いたい?」
「Mac」

即答なのが気持ちよかった。へへ、と照れ笑いする仕草が可愛い。恋人は意見や価値観をはっきり持つタイプだと思っているけれど、ここでもちゃんと発揮されていた。

店舗で触ってみたり、持ってみたりして、MacBook Airを買う。それを手にした恋人は、きれいに着飾ったときと同じくらい、ぼくにはすごく新鮮に映って、なおかつ胸がわわーっと熱くなる。すてきだ。

「いつもより歩く速度、速いっ」

と、恋人に言われて、ぼくは浮き足立つってこんな感じかとおもう。自分のこと以上にわくわくしてる。

恋人はお金のことをしきりに言って(無理もない)、来月から分割で返していくというが、ぼくは断る。

「返すにしても、いつでもいいから、それを使って稼いだお金から返してもらったらいちばん嬉しい」

本心だし、もしも成し遂げられなくたっていいと、ぼくはどこかで思っている。でも、恋人の才能をぼくは信じているし、そんな未来があり得ることも信じている。

「自信」は自分の価値や能力を信じることを指すだけど、ある意味では「他信」も「自信」のひとつなんじゃないかとおもう。

ぼくは江國香織の小説で『思いわずらうことなく愉しく生きよ』というタイトルが大好きで、その言葉がほとんど信条みたいになっている。ぼくが今、恋人にできることの判断は正しさは問えないけれど、不慣れなMacに向かいながら、できることがひとつずつ増えていく姿を見るのは、ぼくにとってはやっぱり嬉しい。

未来のことなんてわからないのだから、現在のことに注力し、変化への適応力を高めるべきである。

翌日のインタビュー中に聞いた金言だった。

#日記 #コラム #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?