ルミネは迷うためにあるのよ

恋人と昼間の新宿を歩いていたら、「あなたは盗み見るのがうまいよね」と言われる。てっきり怒られるのかと思えば、おそらくそういうわけでもなく、街中ですれ違う可愛い女の子を「サッと見るのがうまい」のだそうだ。

男性のなかには、それが下手な人がいて、女性が隣を歩いていても「目を惹かれた」のが明らかにわかってしまうことがあるらしい。当然、それは恋人からすれば(ひとりの女性としても)おもしろくない出来事なのだけど、ことさら指摘するものでもなく、粛々とそれは経験として蓄積されてきたわけである。

とはいえ、恋人も可愛い女の子につい目は惹かれるので、それをしばし瞳に留めて、「あぁ、あの子は素敵だった」と、たとえば洋服が似合ってたとか造りが整ってるとかの感想を持ったとする。

それをふいにぼくへ伝えると「さっきビラ配りしてた女の子でしょ?ミスiDとか出ててもいい雰囲気の可愛さだったよねー」なんて言うらしい。(ちなみに恋人の返答は「ミスiDはビラ配りなんてしないよ!」だった。それが本当かどうかはわからない。)

なので、恋人としては、「可愛い女の子」に関する短いトークはできて楽しいが、ぼくが目を惹かれていたという焼きもきする感じを覚えずに済むため、それが良かったのだということ……だとおもう。

その能力がどこで身についたものやら、自分ではとんと見当つかぬことではあるのだけど、若年の頃より日々インターネットの海をダイブしては女性の画像や動画を漁る筋トレに励んでいたのが良かったのでしょうか。

新宿を抜けて、ルミネエストでお昼ごはんを食べる。恋人は学生時代から友達とよく来ていたらしく、「ルミネは迷うために来るの。洋服見ながら恋の話でもして、たっぷり迷って、最後にレストラン街でごはんを食べるのが楽しいものなんだよ」と教えてくれる。

ははぁ、なるほど。つまり、ルミネの買い物で「いつまで迷ってるんだよ」なんてツッコミを入れる男性は野暮だということか。

ぼくはルミネや駅ビルのカルチャーにぜんぜん馴染んでこなかったけど、今なら洋服もごはんも「選択肢」がたくさんある、このビルの存在価値が輝いてみえる。これからは大手を振って、ルミネで迷おう。

#日記 #エッセイ #コラム

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