酒を飲んで、心の平衡を取る。

吉行淳之介のエッセイで、昨晩は痛飲したので午前中は使い物にならず、夕方あたりからようやく体が整っていった、という一節があったはずだけれど、まさにそんな一日。

酒にまつわる書き物はあれこれあるものだけど、これも吉行淳之介の小説で、たしか『薔薇販売人』か『娼婦の部屋』に、酒を飲むことで不安定だった心の平衡が取れた、と表現される一文がある。これがぼくは結構好きで、そりゃ思い過ごしっていうか酒飲んでハイになってるだけだろうとも感じつつ、平衡が取れる、という感覚は絶妙だ。

ほそぼそと仕事をしながら、夜を待つ。いろいろと遅れているものがあって申し訳ない。恋人が恵方巻きを片手に遊びに来てくれる。iPhoneのコンパスで調べて、今年の恵方に向けて黙々と食べる。恋人と仲良くできることと、仕事の幸運を祈る。

恵方巻きだけでは寂しいと、潮汁もつくる。昆布を切らしていたのを忘れていて、水に粉末のあご出汁を浸しておき、そこへ冷凍の牡蠣をくわえて、ゆっくり火を入れる。それだけでも十分だけど、塩をすこし。塩は島根県海士町の「海士乃塩」が旨くて好き。

あと、Twitterで見かけた、電子レンジでつくれる「鳥もも肉の塩レモンだれ」も。お正月用に買ったゆずが残っていたので、レモンの代わりにする。かんたんなのに美味しくて、これも定番になりそう。

ささやかに節分豆もまき、一通りのことして笑っていると、たしかに体が戻ってきて、日本酒をすこしだけ飲む。心の平衡も取れる。うん、お酒でハイになるというよりは、やっぱり吉行淳之介の表現が、いちばんしっくりとくる。

気づいたら、すやすや眠っていた。

#日記 #エッセイ #コラム #酒

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