キミが化粧品売り場をのぞく前に伝えておきたいことがある
すっかり1週間前のことになるけれど、ホワイトデーのお返しとして、恋人にはちょっと良いリップクリームを贈った。
猫をあしらったケースが可愛いやつで、恋人と話しているときに「あのブランドのリップがすてき」と言ったのをメモしておいたのだった。ずるいプレゼントではあるけれど、ぼくは優柔不断で何を決めるのにもおっかなびっくりのところがあるので甘えることにした。
店員のお姉さん(と書いたけれど、きっとぼくより歳下なはずで、だけれどぼくにとってはお姉さんがしっくりくる)が、手のひらに口紅やらグロス入りのものやらを塗って見せてくれて、次々に案内してくれるのを「発色いいですねぇ」なんて知ったふうなことを口走りながら買った。不慣れなのは絶対バレている。
ぼくは取材の合間で時間がなかったのと、慣れない化粧品売り場に緊張して妙な汗もかいていたから、たぶんお姉さんには「こんな男から片一方の想いを伝えられる女の子も大変だなぁ」と思われていたんだろう。すみません。化粧品売り場に男性がいくときは、それなりに身綺麗にして景色になじみつつ、時間に余裕をもって訪れるに限ると学びました。
リップを唇に引いてくれた恋人と、日曜日を過ごした。恋人の誕生日祝いをする日で、そっとスマホで仕事を進めたりもしつつ、出かけたり食事をしたり。
恋人のリクエストもあってデートの行き先としては定番の土地に向かうことになって、ぼくも何度か来たことはあったもものの、お祝いのときに行くことはないから「さて、どうしよう」となったのが前日の夜。
あわてて、その近辺に住む古くからの友人にLINEをすると、事細かにお店やレジャーを教えてくれて、ホッとする。美味しいものを知っている彼だから、美味しい時間は約束されただろう。とにかく、ごはんが美味しければ場は持つし、それが好きな人と囲むテーブルなら、なおさら楽しい。
リップの情報は恋人から直接聞いたし、デートコースは友人からだし、ぼくはぜんぜん努力していなくて悪いな、と思いつつ、どうにもやることがたくさんある今は頼らせてもらうことにした。
すべてをオリジナルに考案できれば良いのだけれど、そうもいかない。こんなときにネットで検索したくなるのもひしひしとわかるし、そこで出会う情報として良質なものを、なるべく早く届けてあげたいという気持ちにもなる。
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