張り切る大木さん

「竹の、箸だけ」を作る零細企業の3代目が、役場が開催を諦めた町おこしイベントを「自腹でもやります!」と言ったワケ。


こんにちは。
熊本の山奥で、「竹の、箸だけ」を作っているヤマチクの3代目、山崎彰悟です。

ヤマチクの拠点である南関町は、山と田畑に囲まれた、人口1万人にも満たない小さな町です。

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私は今年の4月から仕事の傍ら、ささやかながら南関町の活性化のためのお手伝いをしています。

南関町では年に一度、「いす-1GP」というちょっと変わったイベントが行われています。

いす-1GPとは、1チーム3人で、事務イスを使った2時間耐久レースを行うイベントです。

一見おバカなイベントですが、その過酷さは想像を絶するほどで、毎回感動のドラマが生まれます。

南関町では、4年前から商店街の活性化を目的として開催されています。

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九州唯一のいす-1GPこともあり、「いす-1GP熊本南関町」はメディアでも注目を集め、昨年度は小さな商店街に2000人を超える人が訪れました。


「いす-1GP熊本南関町」がなくなる!?


「いす-1GP」が無くなる。
そんな話が私の耳に入ったのは今年の春の事でした。

理由は、「これまで出ていた補助金がなくなるから」
いす-1GPは、「地域づくり夢チャレンジ推進事業補助金」を財源としていました。
この補助金は適用期間が3年と定められており、昨年度で期限切れになってしまったのです。

「財源が確保できないうえに人手不足で運営が難しいため、開催を見送る。」

これが役場の見解のようでした。

この事情は痛いほどわかりました。
地方都市は課題が山積しているにも関わらず、その課題解決にあたるリソースが著しく足りません。**
金もない。人でもいない。ノウハウもない。**
ないない尽くしで闘わなければなりません。
行政も零細企業も、似たようなものです。

でも、「できないからやめる」では、今後の取り組みは縮退の一途をたどるほかありません。

今年で4回目を迎え、ようやく定着してきたイベント。
「九州初」として注目されていたイベント。

ここで辞めてしまうのはもったいない。
何より、毎年楽しみにしている出場者の方や、来場者の方に申し訳がない。

何とか開催できる手立てはないだろうかと悩んだ挙句、商店街の人たちに「自分たちでやってみませんか?」と打診してみました。
でも、役場が手を引き、財源もないイベントを、「やろう!」という人はいませんでした。

「役場ができないならできるわけがない。」
「役場がやらないんだったら、別に仕方がないんじゃないの?」
「そんなことやるお金はない。」

自分たちの商店街なのに。自分たちの町なのに。
この反応は予想していたものの、私は歯がゆくて仕方ありませんでした。
そして気づけばこう言い放っていました。

「わかりました。だったら今年のいす-1は僕が自腹でやります。」

やってしまった・・・。
妙な冷や汗と共に、私の「いす-1GP」への挑戦は始まりました。

「まずはうちの大蔵大臣を説得せねば・・・。いきなり難題だな。」


「100万円を使わせてほしい・・・。」


「100万円使わせてほしいんだけど・・・。」

私は妻に事情を説明しました。
話を聞いた妻は静かにこういいました。
**
「本当にあんたがしなきゃいけないことなの?ただでさえ本業が忙しいのに。」**

これには僕も少し答えに窮しました。
少し考え、僕はこう答えました。

町が魅力的にならないと、優秀な人財は集まらないし、育たない。
だからこれは会社のためでもある。

今南関町に必要なのは、挑戦ができる雰囲気だと思う。

「あいつが出来るなら俺もできるんじゃないのか?」
そう思ってもらえるためにも、俺みたいなバカがチャレンジしなきゃだめな気がする。

答えになっているかすら怪しい言葉を聞き少し黙り込む妻。
そしてこう言いました。

わかった。
でも、来年はどうするの?またお金出すの?
それって補助金と何も変わんないんじゃない?

お金は使っていいけど、ちゃんと協賛金も集めるべきだと思う。
じゃないとイベント続けられないよ。

さすが元銀行員・・・。
たしかにそうだ。来年も自分でお金が出せる確証はない。

ずっと続けられるイベント。長く愛されるイベント。
妻の言葉のお陰で、強くこのことを意識するようになりました。


補助事業あるある


早速、昨年度の企画書と決算書を徹底的に見直しました。
昨年度の支出額は、同時開催された食のイベントを含めて200万円以上。
でもよく見てみると、不要な支出が散見されました。

「やっぱりね・・・。」**

補助金の予算執行率を上げるために、不必要なものにお金を使ってしまう。**

「補助事業あるある」がここにもはびこっていました。

本当に必要な事にだけにリソースを集中させよう。
僕は必死でそろばんをはじきました。

結果、50万円程度で「いす-1GP」は十分開催できそうです。

これなら何とかなりそうだ。
内心ホッとしました。笑


「一緒にいす-1GPやりませんか?」


「今年のいす-1GPは、補助金や行政に頼らず自分たちでお金を集めて開催したいんです!力を貸してくれませんか?」

協力者を求めて、色んな人達に声をかけました。

「また箸屋のバカ息子がわけのわからないことを言い出した・・・。」

そういう冷ややかな反応が大半でした。
事実、弊社の社長ですら呆れてたぐらいですから。笑

そんな中、9名の方が実行委員会のメンバーになってくれました。
中には、役場の若い職員さんの姿も。

「役場の立場は抜きにして、町のためになる楽しいイベントがやりたい!」

この言葉には、胸が熱くなりました。


そのイベントに、大儀はあるか?


それから毎週のように、夜ヤマチクの会議室に集まって会議をしました。
一度は「やらなくていいじゃないか」と言われたイベント。
やるからには、だれもが頷くようなコンセプトと企画意図が必要だと感じていました。

まずは商店街や南関町の実情について意見を出し合うことにしました。

「寂しくなった商店街の状況を、どこか諦めているような気がする。」
「誰かが何とかしてくれるのを待っている。」
「これまで役場の人たちに頼りきりだったのもよくない。」

そして、これからの商店街や南関町に必要なことも語らいました。

「いろんなことを、自分事で考えて行動できるようになるといいよね。」
「自信と誇りを取り戻してほしい。」
「ちっちゃい事でもいいから、成功体験が必要だと思う。」
「まず企画側が楽しめるような取り組みやイベントが必要だよ!」

いずれもお金があれば解決できるものではありません。
でも逆に言えば、お金がなくても工夫をすれば解決できることです。
もちろん、簡単ではないけれど。

そしてこれらの実情や課題は、南関町に限ったことではありません。
どの町も、どの中小企業も、直面していることです。

「いす-1GPを通して、いろんな課題の解決の糸口を示せるかもしれない。」

議論の中で、私はそんなことを思っていました。

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「いす-1って本当に必要だと思いますか?」

あえて意地悪な質問も投げかけました。
この答えが用意できなければ、人を巻き込むことなどできません。

しばらく黙り込む面々。そしてあるメンバーがこう語りだしました。

いす-1GPをやり始めた当初は、「事務イスで耐久レースをやるなんて馬鹿な企画やって意味あんのか?」と正直思った。

でもいざ始まってみると、出場者は必死で走ってるし、来場者もみんな一生懸命応援してるんだよね。

理屈抜きに熱くなれたり、応援したくなるって、町おこしの本質に通じるんじゃないかな?

いす-1GPのようなバカな企画こそ、今の南関町には必要だと思う。

この答えに、みんな力強くうなずいていました。

この言葉が、この企画の意図を全て物語っている。
私はそう思えてなりませんでした。


ばか、やろう!


幾度となく議論を重ね、大会コンセプトが決まりました。

「ばか、やろう。~まだ本気出してないだけの君へ~」

コンセプトに込めた思いをちゃんと伝えたいから。
コピーもみんなで考えました。

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素人集団が考えたにしては、上出来でしょ?笑
本気になれば、なんだって出来るんです。

そして開催目的を次のように定めました。(以下、企画書抜粋。)

「ほんとうの意味での南関町の活性化」

①自分たちで考え、行動する力も取り戻す。

南関町は、わたしたちの町です。
「誰かが何とかしてくれる」のを待っていても、救世主は現れません。
自分たちで出来る事を考え、やり抜く力を取り戻せば、町はきっとよくなります。
②何かに依存しない、持続可能なイベントのノウハウを獲得する。

「補助金がでなくなった」「あの人がいなくなった」
そんな理由でイベントが無くなってしまうのは、もったいないことです。
補助金や特定の個人に依存せずに行える、等身大の事業規模を実現すれば、長く愛されるイベントを創れます。
③南関町に、自信と誇りと仲間を。

南関町の商店街は、かつての賑わいと比較すれば確かに閑散としてしまったかもしれません。
しかし、今も商店街として残っていること自体も十分に尊い事です。
自分たちでは気づいていない魅力もまだたくさんあります。その魅力をまずは自分たちが発掘することが、新たなファン獲得の第一歩です。
「私たちはまだやれる!」
いす-1GPは、そんな成功体験が得られるイベントを目指します。


あなたも一緒に「ばか、やろう?」


この大会コンセプトと、企画意図に沿って、今も毎週のように夜集まって、イベントの詳細を会議で議論しています。
民間だからこそ出来る自由なアイディアも満載で、これまでとは全く違った「いす-1GP」になること間違いなしです!

多分、どの地域の「いす-1GP」より面白いんじゃないかな?笑

今回は、確定している情報を公開します!!

〇いす-1GP 熊本南関大会
 開催日時:2020年2月23日(日) 10時~17時 ※ 受付8時半~
 開催場所:南関町関町商店街
 参加枠 :一般36組 (先着順)
 参加費 :一般5,000円
 募集期間:2019年12月1日㈰~2020年1月23日㈰

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今後のイベント詳細や動向はこちらのFBページで随時更新していきます!

まずは「いいね!」で応援よろしくお願いします!
めざせ!3,000「いいね!」

町外の人も参加できる応援企画も考えてますので、ぜひ一緒に南関町を盛り上げましょう!!

「いす-1に出場したい!」
「出場は出来ないけど、協賛したい!」
「お金での協賛は出来ないけど、モノで応援したい!」
「運営スタッフとして協力したい!」
「こんなイカれたイベント、ぜひとも取材したい!」

そんな「神」のような方がいれば、いつでも山崎までご連絡ください!

補助金と行政に依存しない、持続可能なまちおこし。

これは南関町にとどまらず、これからのまちおこしのパイロットケースになるかもしれません。

どうか皆さん、応援よろしくお願いします!


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