#80 バイバイ

ある日、何の前触れもなく、ピンクペリカンがハシビロコウバンドの面々に一遍の歌詞を手渡した。


「引き受けてくれちゃうよネェ?」


そう言って去っていったピンクペリカンの背中に、何やら意味深なものを感じたハニワと落花盛。


特に、旧知の仲であるハニワにとってその歌詞は、ピンクペリカンの持つ哀愁の源流を感じさせるものだった。

ハニワの勘違いでなければ。



古いアドレス帳に残る、手書きの名前と電話番号。
今はどこでどうしてるのかわからない。
けど、まるで昨日の事のように思い起こされる、遠い日を共に過ごした仲間たち。
忘れられない人や出来事はそれでも、少しずつ少しずつ少なくなっていく。

きっと最後まで残るであろういくつかのメモリーについて、ピンクペリカンは言葉にしてみたのだろう。

いささか感傷的ではあったけど、それでも伝わってくるものがあって、落花盛はメロディーをつけてみることにした。

ハニワがそれを手伝って、スイスイとカタチにした。


カタチにした後でハニワは思った。
「作っちゃったけど、これってハシビロコウバンドの曲でいいのかな?」

落花盛は言う。
「いいんじゃない?ピンペリさんが書いたのは歌詞であって、楽曲にしたのはバンドなんだから。」

腑に落ちるようなそうでもないような。。。
大抵こういうところにこだわるのはハシビロコウなのだが、今回の曲は落花盛がギターのリフまでキメてきてくれたのでやりやすく、明るい曲調にハシビロコウもギターとコーラスで活躍出来てご満悦だった。

まあ、丸く収まってるのならいいか、と、ハニワも気にしないことにした。


ハシビロコウバンド物語
「第80話 バイバイ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?