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#81 ハイボルテージ・アンバランス
ハシビロコウバンドは久々に新曲を公開した。 原型となる曲は、アレンジがイマイチしっくりきてない、という理由で随分前にお蔵入りになっていた。 コロナ禍に一人でいる時間が増え、暇を持て余したハニワが遊び半分で繋いでいたループに合わせて落花盛が構成を練り直して完成に至ったのだった。 冒頭から最後まで要所要所に配置されたジェームスブラウンのシャウトのサンプリングがハイボルテージな雰囲気にピッタリでハニワは気に入っていた。 UKロックに傾倒しているハシビロコウにとって、ジェームスブラウンのサンプリングはあんまりピンとくる存在では無かったため、最初はこのアイデアを採用するのを躊躇っていたが、「立花ハジメもソロで使ってたよ。」とハニワに言われてそれならと受け入れた。 孤高の存在、立花ハジメには敬意を払っているのだ。 早々にお蔵入りになったこともあり、歌詞はほとんど書き直しになったが、気に入っている。 ハイテンション、ではなくてハイボルテージ、としたところがハシビロコウのこだわりだった。 「なるほど、アンバランスにつながるからね。電気信号にかけてるのか。さーすが。」 と、ハニワに褒められ、「う、うん。」とは言ったものの、言葉の響きだけで歌詞を書いていたハシビロコウ、ハニワが言っている事の意味がわからなかった。 自分の意図せぬところで褒められているのがなんとなく居心地悪く、かと言って「どういう意味?」なんて聞いたらせっかく褒められた事も帳消しになるような気がして結局何も言葉を繋げられずに中途半端な半笑いで頬を引きつらせたまま表情を固まらせてしまったハシビロコウなのであった。 …to be continued. ハシビロコウバンド物語 「第81話 ハイボルテージ・アンバランス」
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#80 バイバイ
ある日、何の前触れもなく、ピンクペリカンがハシビロコウバンドの面々に一遍の歌詞を手渡した。 「引き受けてくれちゃうよネェ?」 そう言って去っていったピンクペリカンの背中に、何やら意味深なものを感じたハニワと落花盛。 特に、旧知の仲であるハニワにとってその歌詞は、ピンクペリカンの持つ哀愁の源流を感じさせるものだった。 ハニワの勘違いでなければ。 古いアドレス帳に残る、手書きの名前と電話番号。 今はどこでどうしてるのかわからない。 けど、まるで昨日の事のように思い起こされる、遠い日を共に過ごした仲間たち。 忘れられない人や出来事はそれでも、少しずつ少しずつ少なくなっていく。 きっと最後まで残るであろういくつかのメモリーについて、ピンクペリカンは言葉にしてみたのだろう。 いささか感傷的ではあったけど、それでも伝わってくるものがあって、落花盛はメロディーをつけてみることにした。 ハニワがそれを手伝って、スイスイとカタチにした。 カタチにした後でハニワは思った。 「作っちゃったけど、これってハシビロコウバンドの曲でいいのかな?」 落花盛は言う。 「いいんじゃない?ピンペリさんが書いたのは歌詞であって、楽曲にしたのはバンドなんだから。」 腑に落ちるようなそうでもないような。。。 大抵こういうところにこだわるのはハシビロコウなのだが、今回の曲は落花盛がギターのリフまでキメてきてくれたのでやりやすく、明るい曲調にハシビロコウもギターとコーラスで活躍出来てご満悦だった。 まあ、丸く収まってるのならいいか、と、ハニワも気にしないことにした。 ハシビロコウバンド物語 「第80話 バイバイ」
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#78 てっぺんウルフ
孤独だ。 誇張ではなく。 言うなれば孤鳥だ。 「てっぺんウルフ」の歌詞を書きながら、思いのほか自分の厭世観が表現出来ているような気がしてハシビロコウは新鮮な気持ちになった。 相変わらず小難しく、わかりにくい表現のオンパレードだったが、ワンフレーズワンフレーズが気持ちよくハマっている感覚が気持ち良かった。 元々のメロディに歌詞がハマらない場合は歌詞に合わせてメロディを微調整して良い、と作曲者の落花盛に許可をもらっていたので遠慮なくアレンジさせてもらった。 サビのフレーズに乗せる歌詞が最後になった。 ハシビロコウは自分で絞り出しておきながら大いに驚いた。 いつでもてっぺんを目指すオオカミのように 僕らはてっぺんを目指すオオカミのように 孤鳥の自分にとって、「僕ら」という表現は似つかわしくない。なんとなく気恥ずかしい気持ちになった。 でも結局、このままいくことにした。孤鳥には似合わないが、この曲には似合っている。それに、バンドの曲として、とても似合っていると思ったのだ。 曲のタイトルは「ボーントゥービーワイルド」でおなじみ、「ステッペンウルフ」からもってきている。 メンバーであるハニワにはじめて見せたとき、「ワイルドでいこう、ってか。」と、触れてもらったっきり、誰にも気づいてもらえずハシビロコウは寂しい気持ちになった。 「車上アラシ」と「頼まれごとのアラシ」という韻が浮かんだときは、自分史上最高のフックだと思っていたが、今のところメンバーすら「韻を踏んでいる」ということには気づいていないようだ。 ちょっと恥ずかしい。 ハシビロコウバンド物語 「第78話 てっぺんウルフ」
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#76 近づかなくっちゃかなわない
ハシビロコウは顔に似合わず寂しがり屋だった。 孤独を好む寂しがり屋は、いつの時代も敬遠されガチ。 突然思い立って、相手の気持ちも考えず、人に甘えようとするからだ。 でも、他にどーすればいいのだ。 と、ハシビロコウはいつも悩んでいる。 ソーシャルディスタンスにかこつけて、いつも悩んでいることを歌詞にしたためた。 落花盛が手グセのようにギターで弾いていたコード進行。 あわせて口ずさんでいたメロディーに上手くハマって、「近づかなくっちゃかなわない」という曲が出来た。 ハニワも満足気だ。あんまし打ち込みのパートも多くなく、すんなり仕上がったからだ。 ハニワは音数が増えるのを嫌うし、気分次第で突拍子もないアイデアを出されるのも嫌った。 ただ、ハシビロコウのギターストロークへのこだわりには毎度辟易させられている。 「どっちがいいかな?」と聞かれるたび、面倒くさいので最初に聞かせてくる方を選ぶようにしている。 最初に聴かせてくる方に賛成して欲しいだけなのだ。 「ミックスしたらそんなニュアンスまでは残らないけどなあ」とも思うが、ハシビロコウの中ではこうでなきゃ、ってこだわりがあるんだろう。 なら悩むなよ、とも思うけど。 ただ、今回はテイクを重ね過ぎだ。 一度説教してやんなきゃ気がすまない。 練習してこいや、と思う。 でも、前回もそう思って結局言わなかった。 大抵の事は、言わない方が良いんだよな。 …to be continued. ハシビロコウバンド物語 「第七十六話 近づかなくっちゃかなわない」 初出 2022.3.3
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#70 からっぽのロシアンルーレット
穏やかな午後の日差しが、理性を狂わせる事がある。 震えながら、じっと夜を待っている。 いつ終わるとも知れない、不安と苦悩の日々が過ぎ去ってくれるのを、息を殺してただじっと待っている。 今も誰かがどこかで、爆発しそうな気持ちを抱えている。 皆、とっくに弾を撃ち尽くした、からっぽのロシアンルーレットの引き金を引き続けているのだ。 ハシビロコウはそんな気持ちを歌詞にした。 共感してくれる人が、たくさんいると思った。 落花盛が、ずいぶんかかってメロディーをつけてくれた。 でも、この歌詞が出来たきっかけは、気性が激しいママビロコウのいつものマシンガントークの最後を飾る、定番のシメのフレーズ。 「毎日ロシアンルーレットよ!」 子供の頃から何度となく耳にしたこのフレーズが、想像と創造の扉を開けたのだ。 単純に、いつキレるかわかんない自分、ってのを表現したフレーズなんだろう。 サンキュー、ママビロコウ。 BGMはスパイスガールズの「MAMA」でキマリだ。 …to be continued ハシビロコウバンド物語 「第七十話 からっぽのロシアンルーレット」 初出 2021.10.29