ねこ

聞き手は聞き手のプロであれ。

「何か質問ある方いますか」

東京のセミナー会場にて
司会進行の方の声が響いた。

パラパラと手が挙がる。

私は、ちょっぴり後悔した。
休憩時間のうちに、
質問を考えておけばよかった...と。


会場には250名近くの参加者がいた。
壇上には講師が3人立っていた。

こういう対多数のセミナーに来ると
質問する人は全体の2割にも満たない。

そういう場面を見ると、
パレート(2:8)の法則を考えさせられる。

知っている人も多いが、
全体の2割がその集団を支えて、
後の8割は遊んでいる、という法則。


まあ遊んでいるとは言わないまでも、
今日でいえばセミナーという「場」において、

質疑応答の時間があることを
事前に知らされていたにもかかわらず

何も聞きたいことがない、というのは
「場」に貢献していない、
とも言える。


少なくとも講師側からしたら、
質問はあったほうが
セミナー受講者の満足度も高まるはずだから
有難いだろう。


もちろん質問の「質」も
場の空気を左右するだろうけれど、

まずは積極的に
場に参加する意識をもった
「態度をとる」ことが
学び手としての礼儀だと思う。

し、そういう人が最も深い学びを得ると思う。



セミナーという場において、
全員に共通する目的は学ぶこと。
昨日よりも一歩成長した自分になること。

最も学びが深いのは
まず間違いなく講師だ。
能動性が全く違うからだ。


講師の役割は
セミナーの趣旨に沿って
これまでの自分の経験を
かいつまんで噛み砕いて
人に”伝わるように伝えなければ”ならない。

淡々と話しすぎると眠くなるから
ちょっと笑いを挟んだり
ストーリーに抑揚をつけたり。

ただ原稿をしゃべるだけでなく
伝わるように、出来る限り、
ありとあらゆる工夫をするのが
人気のある講師だと思う。


そうやっていろんなことを考えているから、
結果、巻き取れる情報量が増えて
誰よりも学びが深いのだ。


対して、
今回わたしがいた受講者側ーーー聞き手は
簡単に言えば「座って聞くだけ」、
という立場なので
下手すると舟を漕いでしまうこともある。

一見受動的な立場だからこそ、
わかりやすく二極化する立場だ。



ひとつは、
場に貢献しようとする意識のある聞き手。

対極は、
自分が受け取ることだけにフォーカスしている聞き手。

セミナーとか
イベントとか
人が集まって何かをするという時
運営側だけでは成り立たない。
お客がいて初めて成立する。


つまり、先に聞き手のことを
「一見受動的な立場」
と表現したけれど
本当は場の作り手として
重要な位置を占めているのだ。


例え受け手でも、
場を創ることができる、
ということだ。


この点においてどれだけの人が
魅力を感じるのかはわからないが

いまの立場で
いまの自分に
何ができるのか。


これを考えて実行できる人は、
学びのスピードが桁違いに速い。

ほんとに全然違うのだ。
ニッサンとオッサンくらい、ちがうのだ。


そう。
聞き手だから、
お客だから、
受け取るだけでいい。

という定義は多くの場合、
自分の中から生み出されたものではない。

それは生きる中で、
刷り込まれてきたものだと自覚したほうがいい。


義務教育の多くの過程では
座って先生の話を聞く機会が大半を占める。

その環境によって
受動的な態度が染み付いているのだと。


まあそれはそれで、
悪いというわけではないのだけれど。
ちょっと勿体無いかな?
と個人的には思うのだ。


どうせ時間を使うなら
最大限吸収して帰りたい。

貧乏根性のせいもあるかもしれない。(笑)


話を戻すと
やっぱり同じ聞き手であっても
場に貢献する意識を持っている人と
そうでない人の学びの差は確実にある。


そんなわけで
偉そうなことを書きながら
今日のセミナーで質問を考えていなかった自分を
大いに反省したわけで…。苦笑

(結果的にはその時間内に考えて
質問できたのだけれども。)


誰かが言った。

”人を喜ばせることこそ、
人生の喜びである。”


今この瞬間に
自分は何ができるのか。


場に集まっている人々が
少しでも多くの価値を得るために
何ができるのか。

そのわかりやすい例が
質問して場に貢献することだ、

ということを今回書いてみた。


小さなことでいい。
どうしたって質問が思いつかない時も
あるかもしれないから。

洗面所に行ったとき、
シンクが汚れていたら軽くふき取るとか、
会場にゴミが落ちていたら拾うとか、
何でもいいのだ。


自分なりの「役割意識」を持っている人は
その場において誰よりも学んでいる。
そして誰よりも急成長している。


講師、聞き手。
立場は違えど
それぞれの立場で
できることを考える。

聞き手なら、
その時間は
「最高の聞き手」
を目指すこと。


それが誰かの「ありがとう」に繋がったなら

たとえその言葉が
自分には向けられていなかったとしても
嬉しいなと思う。

…そう思える、器のある自分でいたいなと思う。

次はちゃんと
休憩時間に質問を考えておこう。

聞き手は聞き手のプロであれ。